魔法使い、今代の成長を目にす
◆◇◆◇◆
『竜の爪』を遊戯し終え、パンケーキなる食べものの店で腹ごなしをする
甘味の魅力もさることながら提供に使われている食器の艶の良さ、店内の装い、外観にもこだわりが見られた。食事をしながら眺める上階からの景色は恋しさを感じる
「この通りの雰囲気、いいですね」
「ああ。やっぱり分かる?
この通りだけは王都の中でも特別なのよね」
◆【特別な街並み】
そうか、この景色は忙しく戦場を駆けていた時にふと目にした穏やかな時間に似ているんだ。夕焼けも相まって
「何処か懐かしい雰囲気ですね」
「レトロな感じが良いのよねー」
◆【レトロな雰囲気を眺めていると】
「…ねえ。聞いて良いかしら」
「どうぞ」
パンケーキを食べ終え、口元を拭う。食後の紅茶を待ちながらナイフとフォークを斜めに互い違いを向かわせる最中に質問を受けた
「アベルって一体何者なの?」
「何者…とは大雑把ですね」
「なんと言うか変に聞こえるかもしれないけど
お爺ちゃんと街を歩いてるみたいだった」
お爺ちゃん…お爺ちゃんか
◆【思わず吹き出す】
「あははは」
「…そんなに笑うことないじゃん」
「いえいえ、なんと言うか
的を射ている言葉だなと、しかしそれが
お爺ちゃんとは…くくく」
いやはや、マリアに似て勘の鋭い娘なのか、はたまた僕の行動が何か琴線に触れたのだろうか気になるな
「…はぁ。うん」
◆【レガリアの視線を感じる】
【反証】───先程本格的に監視を始めたな。しかし、タイミングは『竜の爪』からだ。恐らく『目』と『耳』を搭載している
学園で見かけたものと造りが似ていることから同一人物の作品だろう。脆弱性ここに極まれりだ
接触は願ったり叶ったりだが生憎と今日はタイミングが悪かった───今は彼女の質問に答えている真っ最中故『退場』願おう
◆【空をなぞる】
【魔弾】───宙に指を押し当て横に薙ぐ、なんてことはない魔力を用いて、『行動』を真似する物理現象を起こす【魔法】だ
情報を持ち帰ることを目的としたレガリアのなんと脆いことか───あちらを立てればこちらが立たずとはよく言ったもので『頑丈性』と『隠密性』を兼ね備えることはできず『目と耳』は木っ端微塵になってしまった
「え?」
「すみません。視線が煩わしかったので」
爆ぜた音に振り返ったエリザさんに弁明する。レガリアを向かわせてくるのは『用心深い』のか、はたまた『小心者』か
人間の執着心とは醜くも愉快だ
場所も割れたことだし、近々会いに行くとしよう
◆【さてと】
紅茶を受け取り、一息つく
「ねえ。アベル
もしかして今、本気で魔術を使ったんじゃ」
「本気…ですか?」
ソーサーにカップを戻す
「アベル?」
「なぜそう思ったんです」
彼女の視線が僕から外れた。あぁやはり成長を眺めるのは興味惹かれるものがある
「魔力視、使える様になったんですね」
「う、うん」
さすがの才覚だ。将来大きく化けること間違いなしだ
「アベルの魔力が見えなくて
使い過ぎて残ってないかと…思ったから」
◆【純粋】
「エリザさん、魔術師の本気とは
死を覚悟した時や余程余裕がある時しか
見せないものです。まして街中で
全力を出す魔術師はそうそう居ないでしょう」
「…じゃあなんでアベルの魔力は見えないのよ」
「教えて欲しいですか?」
「…いや、ううん」
テッドさんなら早々に答えを聞いてくるものの、やはりエリザさんは強くなることにおいては真っ直ぐだ
「ではひとつ助言を」
◆【空のティーカップを指さす】
「『魔力切れ』はそんなに
平然としていられるものでしたか?」
「…っ」
「食事も終わったことですし
お土産を買って帰りましょう」
「そ、そうね」
◆【中央区画を後にした】




