魔法使い、王都を観光す
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無事に学園を出ることに成功して、今はゆっくりと川沿いの道を歩いている。魔術学園がまだ多い区画のため、景色は似たり寄ったりなものが続くがそれは物質における視点の話だ
『琥珀眼』の魔力を帯びているものが散見される。この中に人間がどれほどいるのか気になってくる所ではある
「中央地区までやっぱり歩くわね…」
「そうですね」
◆【ふと思い立ち】
「エリザさん、魔力視は使えますか?」
「え?何それ?」
王都の中心部に向けて歩きがてら『魔力を可視化』する方法について説明をする。魔術師が同等かそれ以上の相手と対峙する場合には役に立つ物のため暇つぶしがてらに教える
◆【使えるようになったら世界が変わる】
西地区はアースリア魔術学園の他にも、研究機関や学園が多くある地区というのは既知のことだろう。それ故に学生たちの姿もちらほらと目に入る
同じ学園の生徒もいれば、全く見たことない制服の学生もいる。中央地区が近づく度にその数が疎になっていき、青を含んだ石畳の道───地区を分ける目印を抜けた先が件の王都中央地区だ
◆【王都中央地区】
中央地区は時計塔を中心とした総合区画である。ここから商業、住宅、研究・教育、観光と枝分かれする設計となっている
「今日はアタシが貴方のことを
エスコートしてあげるわ」
「よろしくお願いします」
「…まずは、そうだ
せっかくだからこの時計台見て行かない?
中が展望フロアになっているのよ」
◆【ルーウェン記念時計台】
王都建国記念に真っ先に建てられた50年近くする建造物とのことだ。当時の最先端の技術を結集して作られた『狂わずの時計』とのことだ
この寸分違わぬ噛み合わせや、繋ぎ目が見当たらない部品、細かな塵すらも許さぬ密閉された機構保護方法など。その精巧さは狂気すら感じた
「ねえ。アベル。知ってた?この時計台
今日みたいな晴れた日には
王都全域が見えるんだって」
「それは楽しみですね」
声を弾ませるエリザさんは普段見せる『鬼気迫る様』を全く感じない。心穏やかという感じだ
◆【地面が遠く、空が近いそんな空間】
「見て!今日は海まで見える!」
先を歩いていたエリザさんがそう言った
天辺まで着き、エリザさんが指差す方向を見ると、鮮やかな海が出迎えた
天候に恵まれていない風景を見ていないがために比較はできないながら宝石とは比べ物にならない自然的な美しさを見せてくれた
◆【遠方に浮かぶ何か】
「あれは、蒸気船か」
「えっ。うん、そうね」
魔石を用いた濾過機構と発熱機構による蒸気機関を搭載した煙を吐きだしながら海を行く船。馬力はありそうだが隠密の"お"の字もないな
「素晴らしい」
「…」
生で見ると迫力が違う
この時代に新しく生まれた文化について、本で学んではきたものの実際に『動いている』姿を見ると響くものがある。未だに『新鮮さ』で溢れている
「いいな、凄く素敵だ」
塔を降りても尚この『響き』が続くのだから200年前のアレが無駄じゃなかったと思える
◆【飲食店に入って】
運ばれてきた料理は『クレープ』なるものだった
小麦粉に卵、牛乳、砂糖を混ぜ合わせたものを薄く広げて焼いた物に果物を刻んだ物や雲擬きなどの甘味を挟んだ料理だ
「んん~~!美味しい!やっぱり『白連堂』の
クレープは別格ね!」
「…」
人通りのまばらな木漏れ日差す席の中、エリザさんと2人でクレープなるものを食べる
「ね。それ一口、頂戴よ」
「どうぞ」
ビターチョコレートとアーモンドの入ったクレープを差し出す
「ん~!こっちも美味しいわね!
アベルも一口、どう?」
代わりにイチゴとクリームのクレープを差し出されたので食べる
「いただきます」
「どう? 美味しい?」
「美味いです」
「ふふふ。そうでしょ?
アタシの一押しなんだから。この店…は」
◆【食べ終えて、退店】
「エリザ、さん?」
エリザさんが何故か視線を露骨に避けている。何かあったのだろうか
「な、な、な、何かな?アベル君!?」
「いえ、次はどこへ行きましょうかと…」
「そっ、そそ、そうね。あっそこなんてどう?」
◆【挙動不審なエリザ】




