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劣等眼の転生魔術  作者: 理屈屋・中折れ青二才
第三章:魔術学園・1年前期編
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魔法使い、憂鬱を溢す

◆◇◆◇◆


 アースリア魔術学園には、大小合わせて5つの図書塔がある。増築に次ぐ増築を行なった形跡があり、当然ながら蔵書の数は尋常ではない


 最も古い図書塔は学外の研究員も大図書館を使っている───学園の出入り口に最も近い場所にある通称・大図書塔は僕のお気に入りでもある。人の出入りが多いもののその利用者は専ら研究者、自らの世界に没頭する方々が使うため非常に静かなのである



 しかし、訳あってあまり行けないのが難点である。最近の悩みでもある。そのため場所を転々としている。現在は最も西側にある、監視塔を居抜き利用した見た目───チェス駒で言うところのルークの形をした図書塔で課題やら諸々を済ませている


 ここは利用者が少なく、物静かな司書の先生が管理しているだけであり、とても静かである───布擦れすらも反響する程に


◆【課題を終わらせ、問題点を書き出す】


 先生方には非常に申し訳ないがやはり魔術式に欠陥が多い。その為、提出物とは別途最適化を済ませた魔術式とそれの構築理論を忍ばせる


 一度真正面から指摘したら書き物が授業が終わるまで飛んできた始末だ。余程自分で解決したかったのだろうか。よく分からない


◆【研究中】


 ふと、魔力の接近を確認したので視線を上げる。直後に入口の扉が開く、これが特定の図書塔に居座れない理由だ


「偶然ね。アベルもここで勉強していたんだ」

「…」


 会釈をする


◆【正面に陣取られる】


「テッドさんの居場所なら僕も知りませんよ」

「…心外だわ。誰があんなドングリ」


「会うなり、テッドさんのことを根掘り葉掘り

 聞いてくるのは貴方くらいですよ」

「アタシをなんだと思っているのよ」


 エリザさんは僕の居る場所に繰り返しやってきてはテッドさんについてや授業の内容、課題について質問をしてくる。教えるのはやぶさかではないものの時と場所を考えて欲しいものではある


「アベルはやらないの?今日の課題」

「既に済ませてありますよ」


「早すぎない?ドングリが師匠と呼ぶだけはある」

「…ありがとうございます」


◆【なんやかんやで教えることになって】


「魔術式における、略式詠唱には

 特定の規則性を持たせて術式の省略を行うものと

 予め構文を付与することで省略する物

 他にもありますが基礎はこの2つです」

「ひとつはレガリアだけど…」


「そうです。レガリアの略式詠唱の欠点は

 その構文に魔力が充填されると術者の意思に

 関係なく魔力の放出が発生してしまいます」

「そっか」


「手数の多さが利点であり、欠点でもあります」

「なるほど。特定の規則性って?」


◆【利用可能時間までこうなってしまう】


 エリザさんにつきっきりになってしまう。この応用力と理解力、吸収力の高さに僕も放っておけないのもあるために距離をできるだけ取る


 教えることも学びではあるものの。それとこれとは内容が違う


「ありがとね

 その、アンタの教え方、分かりやすかった」


 エリザさんがそう言ってきた


「お褒めに預かり光栄です」


◆【リリスに似た放っておけなさがある】


 部螺旋階段を下りる途中でエリザさんから質問が来た


「せっかく都会に来たのに街に出たりしないの?」

「生活に必要なものは売店で足りますからね」


「でも、学校じゃ出会えないものだってあるわよ? 例えば美味しいご飯とか、不思議な味の果物

 何より珍しいお菓子とかね!」

「菓子類ですか」


「も、もちろん、食べ物以外にも

 沢山良い場所があるわ…

 そうだ、古本屋とか!

 安くて珍しい本が買えるかもしれないわよ!」

「確かに」


 たしかにこの時代の本屋には1度立ち寄ってみたいところではある。学園の図書塔に置かれている本は比較的近代に書かれたものが中心で、200年前に読まれていた本が全くと言って良いほど並べられていない


「ねえ。次の休みの日に、出かけてみない?

 勉強を教えてもらったお礼をしたいの」

「…分かりました。時間を作らせて貰います」


「じゃあ、決まりね!アタシ、王都には結構

 詳しいのよ?美味しい店知っているんだから」


◆【無限に話し続けるなエリザさん】


 暫く楽しそうに王都にあるオススメの外食店の話を聞き続けているとその脅威の食事に対する熱量の高さに驚いた


 この食事に対する熱意は才能だ。体を作るのに材料である食事は必要不可欠だ。しかし、生命維持に必要な食事量と身体を作るのに必要な食事量は別種だ


 エリザさんのは後者、身体強化を唱えたテッドさんと拮抗する実力の源はそこからだった───ふと、思ったのがこの時代の者達は"やはり"戦士に向いているのではなかろうか?


◆【敵意】


 エリザさんと共に螺旋階段を降っていると明確な敵意を感じた。今日は妙に人にせっつかれる日だ


「ヒュー!ヒュー!

 モテる男は辛いね~!アベル君!」

「外来種同士お似合いだぜ?」


 それだけを言うためだけに暗くなるまで待機していたというのか


「課題は終わらせたんですか?」

「ぐっ」


「それとも助け舟が必要ですか?」

「は、はぁ?」


◆【過ぎた暇は毒になるか】


「お前、ウザいんだよ!

 外部生の癖に調子に乗りやがって!」

「なんでウチの学園に入学できたんだ?

 何か汚い手を使ったんだろ!」


「それで、課題は終わらせたんですか?」

「「…」」


「それだから授業中に眠くなるんですよ」

「うるさい!うるさい!」


 この自意識の保護に掛ける心意気をもっと他に回せば或いは共感できる部分もあるが、今は鬱陶しいことこの上ない


「要件をお願いします」

「ケッ…!気に入らねえ」


「今日はお前が本当にこの学校に相応しいか

 もう一度入学試験やってやるよ!」

「ちょっと!校内でのレガリアの使用は

 固く禁じられてるでしょ!」


 レガリアを構える学生たちにエリザさんが食って掛かる。乱闘騒ぎは望んでいないが、どうしたものか


『隠』ではエリザさんが取り残される。では力でねじ伏せるか。それはあまり好ましくない───相手の思う壺になるというのは今後の生活に影響が出るだろう


 簡単であるが故に必要以上に事を荒立てるのは望ましくない


◆【先生が黙認を続ける姿勢を見せた】


「そこの先生!コイツらレガリアを構えてます」


 無関心か、学園というのは規則を守る意思がないのだろうか


「え?」

「なっ!?」


 しかし、その無関心さえも、エリザさんのおかげで意識が逸れた。絡んできた生徒のレガリアの奪取を完了した


「機構は素晴らしいですね」


「オ、オレのレガリアが!?」

「こいつ! 何時の間に!?」


 戦闘が始まるかもしれないと言う間合いで目の前で『誰から攻撃するか?』と相談するのは最早『降伏』と同義ではないか


「調子が悪いですね。素材側の劣化か…

 メンテナンスはしていますか?」

「な、何故そのことを!?」


「お返ししますね。専門店に…

 言わなくても分かりますよね」


 レガリアを返す。あの調子なら自滅してくれるだろう。警告はした。その後は知らない


◆【随分と質が落ちた】


「道を、開けてくれますか?」


 動揺している2人に道を譲って貰いエリザさんを待って下階に向かって降りていく、人の動線を塞ぐのは品のないことながら、やはりバース同様『位の品』が先行している様だ。ここだけは200年前と変わらないな


「クソッ!アベルのやつ、調子に乗りやがって!」

「お前、明日の授業で覚えておけよ!

 絶対に大恥をかかせてやるからな!」


「明日っていうと競技ですか…

 僕は別に履修していませんよ?」

「そうなの?」


「はい、競技は騎士団希望者や競技専攻者が取る

 自由選択科目ですのでレガリア専攻の僕は

 取らなくても問題はないので」

「そっか…」


 空いた時間に僕は研究をすることにする


「なら、お前のペットがズタボロになるのを

 指を咥えて眺めるといい!」


 何故僕が競技を見る前提で話が進んでいるのか、少し疑問に思う。それにペットとは誰のことだろうか


◆【所詮化け物の戯言】


「アンタ達ね」

「いいですよエリザさん」


「でもドングリのことでしょ?あれ」

「テッドさんが?面白いですね」


 玩具遊びで魔術師に敵うと?それは面白いな


「口ならいくらでも言えますよ

 それに戯言。興味が向きこそすれ───」


「っ!」

「───本当の意味では届きませんので」


 それはそれは是非見なくてはいけないな

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