魔法使い、刻印す
◆◇◆◇◆
1年生棟2階の238号室。角部屋が僕の部屋だ
「なんか師匠の部屋
オレのよりも広くないッスか?」
荷物を置いてテッドさんの部屋を確認すると確かに部屋の面積はやや狭かった
「設計者は何を考えているんだ?」
「広いからいいじゃないっスか?」
テッドさんがそう言っているが、広いからいいと言うものではない、角だからいいものの構造に差異を持たせると言うことはその点に脆弱性が生まれかねない───設計者も熟練者ならこの構造にも何かしらの意図があってのことだろう。そう思いたい
◆【刻印解析中】
透明の袋の中から制服を取り出し、指先に魔力を集中させて術式の【反証】を始める
「師匠ーって何やってるんスか?」
「刻印です。学園側が
特別な術式を刻印してないのは確認済みなので
術式の詳細を把握しようと思いまして」
部屋に入ってきたテッドさんは既に制服に着替えていた
「あのー?刻印ってなんのことスか?」
「眼の特性は覚えていますよね?」
「そりゃもちろんッスよ!灼眼は炎!碧眼は水!
翠眼は風やら!灰眼は補助!黒眼が…作る?」
「正確には生産ですね。主に道具の効果を
向上させたり、装備への術式の付与を専門とし
刻印は、黒眼系統の魔術の中でも
最も応用が利きます」
「そうなんスか!」
黒眼系統は直接的な戦闘能力に適正を持たないものの、物体に刻印を施す技術は他の眼と比べて特殊な強さを持っている
『付与魔術』により『魔術』の原型とも呼べる『確立された結果の構築』はパーティーを支える『裏方』として欠かせない存在だった
優秀な付与魔術師は慢性的に供給不足の存在だった
「刻印には物体の性質を向上させる他
変化させたりする効果もあります
たとえば、剣に刻印するものには
切れ味が鋭くしたり、刺突を強化したり
盾には受け流しや耐久性が上げたり
するものがあります」
「…」
「大丈夫ですか?」
「え!?いや、真面目に聞いていますよ!
理解ができないだけッス!」
「…レガリアに身体強化を着ける認識です」
「…それ意味あるんっスか?」
「レガリアとは違い常に魔力を通した状態を
維持させる必要がありますね
ですがそこは職人側の腕の見せ所です」
「魔力を維持?」
「レガリアは放出を基盤にしていますが
刻印は循環、効果を常に発揮するのが特徴です」
「えぇえ!なんスかそれ最強じゃないスか!!」
「反証完了。テッドさん
制服を貸して頂けますか?」
「えぇえ!いいんスか!?」
「何かご注文は?」
「最強にして欲しいっス」
◆【悪ノリ全開】
『耐物理』『対魔力』『耐環境』『耐汚染』
「素材が良いと術式が吸い込まれて行きますね」
「これそんなに良い素材なんスか?」
「はい、とても素晴らしい素材ですよ」
200年前にはこの様な素晴らしい素材がなかったので腕がのってしまった。素材の加工や糸を紡ぐ技術、裁断の技術、染め物、裁縫どれを取っても一級品だ
◆【刻印の欠点】
「最後に充填すれば」
刻印というものは、精密なものほど取り消すのに時間がかかるという欠点がある。これは術式を施す際『パズル』の様な性質故に発生する問題だ
『術式付与』『魔力充填』『浸透肯定』
充填を素材に与え、それを機能させるための魔力を纏わせ、最後に術式に均等に魔力が循環する様にする
この過程で術式同士が反発することなく『一節』に変化する。これが厄介な点だ。何故ならこれを仮に一新する時には術式を【反証】し『独立した術式』に戻さないといけないからだ
そうなれば
『術式裁断』『術式独立化』『魔力固定化』
『魔力放出』『魔力吸収』『魔力探知』
『術式反証』『術式抽出』『術式破壊』
と基本作業だけでも3倍の手間を必要とする。職人の間では『刻印三倍算』なんて言われていた
◆【ですから】
「下手な刻印は忌み…あれ?テッドさん?」
「分かんないっス〜」




