魔法使い、待機す
◆◇◆◇◆
帰るつもりだったのだが、リリスが近くの宿を取ってくれているとのことだったので一晩を過ごすことになった
◆【翌日へ】
アースリア魔術学園の合格発表というのは各家々の代表者が受付窓口に行って、合格通知の入った封筒を受け取りに行く形式を取っているとのことだった。それこそリリスの様な従者に取りに行って貰うべきものではないのだろうか
「(何のための従者なのだろうか)」
200の年月で役割が変わったのだろうか。形骸化しつつある役割の必要性を反芻する。なくなれば問題があるのに軽んじられている気がしてならないが
「(そこまで中身を潰されたとなると
社会自体がもう機能していない可能性もある)」
これが早計であると良いな
◆【近くの喫茶店にて】
珈琲なる物を飲みながらテッドさんの報告を待つ。200年前は『悪魔の飲み物』と嫌われていたのだが何故、世に浸透したんだ
「(初めて飲んだが苦くて酸っぱくて
複雑な味がするけれども
不思議と嫌いではないな)」
真っ黒ではない───茶色の層の重なった見た目の液体。最初にこれを口に入れた人はよくこんな物を口に入れようと思った物だ
「(香りが良いな、これが決めてだろうか)」
◆【休んでいると】
喫茶店へ向かってくる魔力が2つ。ひとつは感じ慣れた魔力。もうひとつは最近観測したばかりの魔力だ
「…すみません」
ミルクと砂糖、追加で3つの珈琲を頼んでおく───僕、テッドさん、後ひとり
「あ!見てくださいー!
オレ、合格していましたよ!
どうですかー!?オレ、頑張りましたよー!?」
「良かったですね」
「ふふふ。師匠も結果を確認したいッスよね!?」
「落ちてましたか?」
「え?いや、え?」
「何分、初めての試験と言う物なので
何か学園側の不都合が…」
「いやいやいや、合格っスよ。何言ってるんスか」
「…そうですか」
何でまた。ってそうか───ゴーグル、外していたらどうなってたかな
「(…いや、変わらなかっただろうな
あの試験官の様な人が居る
この時代なら大丈夫だろう)」
◆【もうひとりの訪問者】
「それでテッドさん、そちらのお客様は?」
先からこちら伺っている人が居る。喫茶店近くの大通りから枝分かれしている細道に茜色の跳ねた髪の毛の一部が見えている。長髪というのは隠密には不向きだな
「あのー。これはー。そのー」
テッドさんの反応を見るに彼女の存在は認知済みなのだろう。気付いていながらも、あえて気付かないフリをしてここまで案内したのか、それとも
「ああー。アンタはあの時のっ!」
「…」
いつもの演技力は何処へやら
「こ、こんなところで再会するなんて奇遇ねー
アタシ、この店のカップケーキが大好きなのよ」
「奇遇ですね。丁度、珈琲が来たので
ご一緒にいかがですか?」
「〜っ!!」
「だから言ったじゃないっスか」
テッドさんが早々に嘘を放棄してしまった。真っ赤なエリザさんがもっと真っ赤になってしまった
◆【勇者の末裔との茶会】
「よ、用っていうほどのものじゃないんだけど…」
「そうなんですね。テッドさん、砂糖だけでなく
ミルクを入れると柔らかくなって良いですよ」
「貴方のクラスが気になっていたのよ」
「確かに苦味が抑えられるっスね」
「気になっていたとは?」
「だ、だってほら!一応、アタシにとって貴方は
数少ない知り合いの一人になるわけじゃない?
入学までに少しでも
学園の情報を集めておこうと思って…」
「師匠―。どうせ遅かれ早かれ分かることですし
教えちゃってもいいッスかね?」
「別に構いませんよ」
「オレと師匠は同じAクラスです
エリザさんも同じクラスだと良いッスねー」
「そう!Aクラスなのね…!分かったわ!」
エリザさんはそれだけ聞くと弾む足取りで喫茶店を後にした。エリザさんは余程、学園生活が楽しみなのだろう
「これから忙しくなるっスねー!」
「自宅から通うのもいいですが」
「オレは流石に嫌っスよ?」




