勇者の末裔、反証される
◆◇◆◇◆
少しでも気を抜けば途端に意識が飛びそう。それでも実力がこれ程拮抗している相手になら
「(いや、強い…!)」
まだ戦える!まだ手段はある!と思っていた。けど、撃ち合ってわかった。魔道具に頼らない魔術構築と魔道具以上の火力、こいつの機動力は
「(完全に生身の状態で戦っている!?)」
ガントレットを装着しているものの、アレには術式が付与されていない、魔術師!?私以外にもそんな、信じられない話が
『魔道具』の素早く魔術を構築できるというのを放棄───最大のメリットを放棄している。それだと言うのに全く隙がない。というより、あれでは何のために魔道具を使っているのか分からなくなってしまう
「(アレじゃあ、本物の武器を使っていないのが
手加減じゃない)」
魔術師というより武闘家。言うなら魔拳士───意味が分からない
「(強い、この男…いやコイツの師匠は何者よ)」
それだけなら、納得いく。が体術の練度が異常だ。どちらかが疎かになりうるのに、それを補っている!訳がわからない。追加構文でどうにかするでしょ普通!
◆【バーニングレイブンにより大打撃】
「しまったッス!ここまでの攻撃とは…」
駆け引きも高い練度で叩き込まれている。なんて羨ましいんだ。スケイル・フレアの展開が遅れていたらいや、展開してもこの削れ方、粗雑な防御術式では諸共だった
(どうやら出し惜しみしていられる余裕は
なさそうね)
今回の攻撃は完全に不意を突かれた。かと言って接近すれば近接による攻撃により残り僅かな体力と魔力を削られて押し負ける
◆【問答を経て】
「でも楽しくなさそうッスね。おたく」
「…あんたに何が分かるっての!
(辺境の魔術師には分からないでしょう)」
手立てがない。魔術の威力は大きくすればするほど処理しなければならない情報量が跳ね上がり、欠陥も起こりやすくなってくる。だがしかし、この男の場合それに時間を掛けることで質を保っている
もう一度受けたら
「来るッス」
「っ!?」
タメを自ら放棄した?何故そこまで真っ直ぐなのか。手加減のつもりに思えたその行動の一つひとつが純粋なものであることをやっと理解した
「『天に朱灯す』!」
我が家の伝統にして究極。来る日も来る日も続けて修行の末に体得した私の奥義。この男にどれほど通用するか。いや、ただ全力を持ってぶつかりたい
「覚悟しなさい!今のアタシは一味違うわよ!」
「…負けないっス!」
◆【空中戦へ】
いやいやいや、訳が分からない
飛行術式に似た尋常ならざる身体能力??
何か魔道具を隠し持っているのではないかとも考えた。でも現段階での飛行術式の魔道具化はなされていない。実験段階にすら至れていないのに
何で空中を走っているのか訳が分からない
「何よ、それ」
「いやぁ、ちょっと前に屋根から落ちる経験をして
どうすれば落ちても大丈夫かと相談したら…」
んな、馬鹿な解決方法があるもんですか
「落ちない様にしなさいよ」
「それ師匠にも言われたっス」
コイツが馬鹿だ!
◆【異変察知から】
「(体が熱い、骨が溶けてるみたい)」
御先祖様が言っていた代償はこれか『自らも炎へと還る』って…そう言う。まだ負けていない。アイツの攻撃を否して
「(まだ!)」
「【朱もまた蒼を灯す】」
あの男が接近して来たと同時に硝子が割れるような音が聞こえた。防御魔術の耐久限界、かと思えば、まさか熱と火が消えている?
「えっ
えええっ
あれえぇえ!?」
落ちる!また、発動を…ってもう魔力残ってない!死ぬ…?せめて尊厳は…
「師匠…」
「えっ!」
接近していた男に身体を引っ張られ抱き抱えられた
「【雛鳥を見守る旋風】」
◆【少しの浮遊を受けて】
『バリバリ』と防御魔術の完全に割れる音がした直後、衝撃と目が回りそうな回転の末に地面に倒れ込んだ
何が何だか分からないが地面を感じている…助かった?
「勝者!受験番号240番、テッド君!」
試合を見届けていた試験官が勝ち名乗りをした。負けた。完膚なきまでに───奥義を使ったのにこれって
「流石師匠っ!頼りになるッス」
「今度は自力で気付いてくださいね」
歓声が上がる中、あの男の声が聞こえてきた。シショウって、あの人が?礼儀正しい男が?私たちと同い年じゃない
しかも魔力の気配が全くしない。あのゴーグルが魔力を抑えている?と言うより、いつから居たの?
「(信じられない…気がつかなかった)」
「おい、エリリ?手」
「え?」
己の未熟さを痛感していたら、手を差し出されていた。咄嗟に握ったけどエリリって誰よ?もしかして私のこと?
「ちょっとあんた、私は!」
「師匠、この後どうするんスか?」
話を聞け!
「…今日のところは解散みたいですね
リリスを待って帰りましょう」
「やりぃ!あ、んじゃ」
「ちょっと、って足速!」
聞きたいことが山ほどあると言うのにあの2人もう見えない所まで走っていってしまっていた




