魔法使い、先代の術式を目撃す
◆◇◆◇◆
「しまったッス!ここまでの攻撃とは…」
テッドさんの構築した炎熱裂帛によって会場に爆発が起こり、轟々と煙が立ち上っている。やがて爆炎の炎が弱まり、視界が開けるとエリザさんの防御魔術は溶け掛かっていた
白煙の中で身を屈めるエリザさんは先までの勢いは全くなく、肩で息をするのがやっとの様子だ
「キミ!大丈夫なのか!?」
エリザの身を案じてか試験官の男が駆け寄る
「防御魔術が壊れかけている
今すぐ棄権しなさい!」
「いいえ。まだです」
気丈に振る舞うエリザさんの気迫に試験官と周囲に駆け寄ろうとする防御術師が思わず肩をビクリと震わせ後退りをした。確かに『防御魔術の破壊』が決闘の決着故、棄権を促すことはエゴでしかない
当事者の安否をこちらが保障すれば済む話だ
「先の一撃、油断しました
撃ち合いには負けました
けれども、まだ決闘の途中ですので」
さて、【結界魔法】を構えておこう
勝負はどちらかが戦闘不能になるまで続くことになるだろう。テッドさんの助けに入るなんて野暮はしない。2人の行く末を見守ろう
「アタシは…。アタシが誰よりも
強いことを証明するのよ…!」
「いいっスね!燃えて来たっス!!」
ふらつきながらもエリザさんは立ち上がり、レガリアを構える。テッドさんもガントレットを鳴らしてそれに応えた
両者の戦いが───と思っていると、テッドさんがガントレットの構えを解いた。どうしたんだろうか
「1つ聞いていいッスか?
どうして、そこまで『強さ』に拘るっス?」
「この平和が、その言葉がまやかしだからよ」
ぽつりとエリザは燻っていた。火が再燃するように呟いた。それは次第に声を張るものになり、遂には誰にいうでもない怒号へとなった
「泰平の時代…?争いのない百年…?
本当に、そうかしら?
隣国は何時か起こるかもしれない大戦に備え
着々と軍備を強化しているわ
魔族だって、本当に滅んでいるのかしら?
それでも世間には平和という二文字を
馬鹿の様に喜ぶ声しか溢れていない!」
溢れ出した言葉はもう止まらず、レガリアの剣先に火が灯ると刃全体を包んでいく、テッドさんは鬼気迫る烈火に対し、タメを完了させていた───騙し討ちを狙っていたのだろう。しかし、仇になった
「国際条約があるから戦争は起こらない?
魔王の魂は消滅したから二度と復活はしない?
誰がそれを守り、決めるの!?
アタシは、まやかしの平和の上に
胡坐を掻くような真似だけは
絶対にしたくないのよ!!」
突如エリザさんはレガリアについていた魔石を握り潰した。しかし、空のレガリアはまだ燃え続けている
「(ッ!コレは予想外だ)」
思わず身を乗り出してしまう。彼女もこの時代では珍しい『魔術師』だ




