魔法使い、観戦す
◆◇◆◇◆
「な、こんなこと。こんなことがあってたまるか」
「勝者!受験番号241番、アベル君!」
実力が近いとは何だったのか、魔術の余波で件の防御魔術は壊れてしまった。やはり、防御魔術の荒さが目立つ、相手の無防備な場所を狙ったとはいえ一撃で壊れるのはいただけない
この点は改善しなければ大惨事になりかねないな
「ま、まさか替え玉」
「…」
言うに事欠いて、出てきた言葉がそれか
「な、何だその顔は、俺は…」
「次が控えてますので退場を」
「黙れ!俺を誰と心得る!」
試験官に口答えする気はないので『27番』を置いて僕はテッドさんの元まで急いで向かうことにした
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「(少し面倒なことになった)」
エリザさんの実力がいまいち掴めていない。的の強度が如何程のものかを測りかねている現状、それを破壊するのにどれ程の威力を必要とするのか不明だ
もし、暗黒物質なのが本当なら的の大きさの暗黒物質に『変換』を付与した物を破壊するのに必要な威力は一国を焼け野原にできるものに匹敵する───人ひとりが請け負うにはあまりに重すぎる一撃
「(何の指標にもなってない…)」
放置されている暗黒物質擬きを回収する。案の定、精製度が不明な粗悪品であり、それが何の指標にもならないことが判明した。唯一の救いは『そんな威力は出ない』ということだけだ
「(しかし、これは)」
エリザさんの使った的は上部に向こう側の景色が見える切れ込みが刻まれていた
◆
「さぁ、武器を抜きなさい!
アタシの魔術で骨抜きにしてあげるわ!」
「掛かってこいっス!的の時は
本気が出せなかったスけど。今回は違うっス!」
何だか凄い誤解が生まれそうな発言だ
「な、的を破壊したのは全力じゃない!?」
「俺たち不味いんじゃないか?」
「避難誘導を…」
試験官達が騒めき始める。案の定凄い誤解が生まれていた
「それでは、開始!」
次の瞬間、エリザさんが目にも止まらぬ速さでテッドさんに真っ直ぐ突っ込んだ
「ック!」
エリザさんは言うだけあり、時代の水準と比べて遥かに練度の高い所にいるのが伺える。速さだけではなく威力も高いようで受け止めたテッドさんが苦悶の表情を浮かべている
「なっ!?」
テッドさんも負けずと受け止めた刃先を弾き、力任せの素早い足捌きでエリザさんの背後を取りガントレットによる一撃を放とうとする
「バー…」
「炎列刃!」
しかし、届くより先にエリザさんが瞬時にレガリアの解放からの回転によりテッドさんに距離を取らせた
「(27番が余波で全損していたのに
2人のは何故破れないんだ?)」
「おぉ、やってるやってる」
僕の後ろには人集りができ始めていた。どうやら、テッドさんとエリザさんの対戦は学園側でも注目の一戦の様だ
「俺これを見たいがために防御魔術
手を抜いたんだ」
「…」
それはダメなことだろう。後で学園側に報告しよう
◆
気を取り直して観戦に戻る。テッドさんはタメの隙を窺っている
「フレイムエッジ」
がしかし、流石はレガリアだ。エリザさんの矢継ぎ早の構築により魔術の弱点であるタメが潰されている。タメに入れず猛攻を防ぐのでテッドさんは精一杯だ
テッドさんの愛用するガントレットの弱点が諸に出ていると言える
「防戦一方か」
「86番は速さ威力申し分ないかったからな」
「240番は威力はあるが速さが…」
皆がエリザさんの圧倒的な盤面に勝負を予想する中
「『脚力強化』」
「「えっ!?」」
観戦していた人、エリザさんが驚き声を漏らした。無理もないだろう。テッドさんは本来『射出系』ではなく『強化系』だ
魔術主体の彼ら、彼女らにとってこの戦闘方法は───『身体強化系』による接近からの魔術の発動は喰らってみなければ対処のしようがない
「フレイムバレッド」
「ック」
『パリン』という防御魔術が損傷した音が響いた
「もう一撃!」
「フレイムエッジ!!」
追撃を放つも反撃により距離を取られた。テッドさんの防御魔術が削れる。それでも、この瞬間テッドさんの勝ちが確かなものになったと言っても過言ではなかった
「はぁあ!」
先の攻撃に警戒をするあまり距離を詰められないエリザさん、その隙に『本命』の詠唱に入ったテッドさんが『それ』の構築を完了させた
「バーニングレイヴン!」
「「えぇ!?」」
テッドさんの手のひらから放たれた火球は忽ち鳥の形をとり、鳥の羽ばたきに似た揺らめきを伴ってエリザさんに到達した




