魔法使い、待機室にて座す
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それから無事に『実技試験』は終わったので帰ろうとしたのだが何やら次の試験があるとのことなので別会場に移動を始めていた
「(筆記と実技だけじゃないのか)」
「師匠ー!何で教えてくれなかったんスか
危うく恥をかくところだったっス」
「どうにもテッドさんはレガリアとの
相性が良くないようですね」
「悲しいっス」
「ですが魔術師としての適性は高いので
長所を活かしていきましょう」
「だったら良いっスけど」
◆
「お!あの扉の先が『A判定』を受けた
受験生の待機室みたいッスね」
「(即日入校という奴だろうか
制服はどうするのか)」
テッドさんと話しながら試験官の指示に従い廊下を歩いているとドアが現れた。頑丈な木材とシンプルな装飾群のドアノブを回して、扉の中へと入った
◆
中には20人程度の人がいた。ドアノブを回した直後には聞こえていた話し声がさっと静まり返った
ピタリと止んだ会話。気まずそうに俯いた様子から何処か『恐怖』や『嫉妬』の感情が読み取れた。皆が一様にテッドさんを『警戒』していた
「最悪っス…」
「問題が?」
「友達100人…」
「それは、難しそうですね」
「それにアレは師匠が…」
この居心地の悪さはテッドさんには堪えるだろう
◆
「視線が…」
座るテッドさんの隣に立ち、視線を遮りつつもこれは少し不味い状況だと言わざるを得ない
「(不味いな、社会との関係を築けないと
テッドさんの粗野が悪化しかねない)」
椅子に座り、小さく溜息を吐くテッドさん。先の『的遊び』により悪評のついた今の状況はあまり好ましくない、どうしたものか
「ねえ。貴方」
そんなことを考えていると茜色の髪を持った校門の前で見かけた女性がテッドさんと僕に話しかけてきた。その胸には『86番』が記されていた
「これはエリザさんどうされましたか?」
「何で名前を…」
「今朝方校門の前で宣言されていたではないですか
5年後にここを首席で卒業すると…噂は予々」
「辺境の魔術師って割には礼儀がなってるじゃない
いい心がけよ。覚えておいてあげるわ」
つくづくマリアを思い出すな。初対面の時も腕組みから上から目線、得意げでいて野心家───その後
「でも、今は良くて太鼓持ちね
アタシの名誉のために断っておくわ
アタシは弱いやつが嫌いよ」
胸を張ってエリザさんは続ける
「で!どっちなのよ
実技試験で暗黒物質の的を破壊したのは」
僕はテッドさんに振り返るが「いやいや、この場合師匠がやったことっス」と言いたげな身振りをするテッドさん───暗黒物質といえば空から飛来する無色透明の『指定特殊生成素材』だ。その特性は『過剰軽量』『魔力同調率・同化』と魔力兵装にもってこいの素材だ
無色透明なのに暗黒、それは空のその先の『暗闇』に由来するものなのだが
「(アレが暗黒物質とは品質に難ありだな…
そうだ後で回収すれば精製できるかも)」
「ちょっと、その態度は何なのよ!
このアタシが、わざわざ話しかけているんだから
返事をしなさいよ」
「何スか」
エリザさんは高圧的な姿勢を崩さないまま、テッドさんに向かっていた
「あいつの態度を見るにあんたがやったんでしょ
魔力で?追加構文は何?そもそも
本当に破壊できたの?辺境の魔術師って
割には基礎がしっかりしてるのね
誰か高名な魔術師の元で修行していたの?」
この感じエリザさんは、魔術が好きなのだろう
「返事しなさいよ」
「(テッドさんが引いてる、珍しい)」
「皆さま、着席願います。これより
次の最終試験の説明をいたします」
扉を開いて待合室にやってきたのは、灰色の眼の教師だった。白衣を着ていることからも治療系の魔術師であることが伺えた
「ふんっ。まぁ、良いわ。はぐらかしたって無駄よ
どうせ今回の試験の結果で
全てがハッキリと分かるんだから」
意味深な言葉を残してエリザさんはテッドさんの前から自分が座っていた席に戻っていった
「何スか、あの女。気品のかけらも無い
ねぇ師匠…」
「それはテッドさんも同じですよ」




