魔法使い、王都を来訪す
◆◇◆◇◆
「(学校か、通うのは初めてだな)」
魔術学園の試験会場へと向かう今日この頃
「アベル様
アースリア魔術学園は国内トップの
有望な学生が集う、エリート学校の様ですよ」
「それは楽しみだね」
「何でリリスも馬車に乗ってるんスカ」
「勿論お世話係としてですよテッド様」
◆
馬車で移動すること半日。王都ミッドガルドへと到着した。様々な学園や研究機関が軒を連ねる場所───西地区でも荘厳で要塞が如き佇まいの"それ"が目に入る
「(これがアースリア魔術学園か…)」
歴史深く、国内トップの教育機関ということもあり狭き門と呼ばれる場所だとリリスからの知識と自宅の歴史書から伝え聞いていたが
「(琥珀眼の魔力も感じられるな…)」
琥珀眼の魔力───国内トップの教育機関に居る魔族というのは果たして生徒なのか、はたまた教師か
「(もしかしたら学園長が魔族だったりして)」
となると歴史の裏話を聞くのは難しいだろう。実績作りが必要になる上に運が良くなければ会うことも難しいだろう
「(願わくば同じ生徒であれば嬉しいな)」
「アベル様、くれぐれも
油断なさらぬようにお願いします」
浮かれる僕を見かねてかリリスが耳打ちをしてきた
「そうだね、用心するに越したことはないね」
僕は改めてゴーグルのベルトを確認して校門へと向かった
「うひょ〜大きいっすね。師匠」
「うん、それにとても丁寧に使われてるね」
◆
「おいおい。メイドを連れてるなんて
あいつらが噂の辺境魔術師か?」
「最悪だ。天下のアースリア魔術学園も
地に落ちたもんだぜ」
校門を抜けた先で誰かが話しているのを耳にした。竜の刺繍のある腕章をつけている様子からここの学生だろうか
「噂では平民に魔術の才があるとかで
急遽枠が設けられたとか」
「何でも学園に多額の寄付金を送ってる家からの
推薦があったらしいですよ」
「へぇ。じゃあ、裏口か」
いつの時代も情報の流れが速いのは貴族階級の特殊な情報網の賜物だろう。いつの時代もあの通信路は優秀だ
「今年はチックアイが居るそうですよ」
「どうして劣等眼がウチの学園を受験するんだ?」
「どちらにしろ、試験で落ちますよ」
会話から察するに琥珀眼の生徒は居ないようだ。しかし、生徒や教師の中でもコンタクトをつけて生活しているものでもいるかも知れない。こればかりは直接見なければ判断に困るな
「もしかしたら試験官を
買収工作しているのかも知れないぜ」
しかし、こうも堂々と話すのは───
「リリス、自らの品位を貶めるかも知れないのに
買収工作に加担する者がいるのかな」
「その手の輩は将来的な利益より
目先の利益を取る愚か者だからですよアベル様」
「いつの時代も愚者はいるものだね」
「国内で最も知識を蓄えている筈の学園ですら
この体たらくですか」
「差別意識ですら
ひとつの分野に当たる時代というのは平和だね」
───公に、それも幼子ですら『そんな余裕』があるのが少し嬉しく思ってしまう。国に余裕があるからこそ生まれる問題もあるのは経験済みだ。ロイがそうだった様に
「好き勝手なこと言いやがって!」
「テッドさん、反応してはいけませんよ」
「テッド様、貴方は貴族の旗を背負って
アースリア魔術学園を訪れているのです
ここで問題を起こせばお父上の名に
ひいては家の名に泥を塗ることになります」
「でも、アイツら…!眼の色で…!」
テッドさんの良いところでもあり、悪いところが出ている。他人のために怒ることのできるテッドさんはとても立派だ───同時に幼く未熟でもある
「テッドさん、あの手の輩には
口で言っても意味がありませんよ」
「師匠…」
「だから───」
「ッ!?」
だからこそ、彼の持つ強みで勝負のできる場面を僕が整えることもまた、ひとつの役割と思うことにしよう。正しく真っ直ぐなことも突き詰めれば何ものをも刺し穿つ矛となる
「───実力で黙らせるに限りますよ」
「!…ッス」




