第9章 ちびドラゴン 013 〜 雪音ちゃん、ドラゴンと戦闘する!①〜
「キュー!? キュッキュウ! キュッキュウ!」えー!? ママ、お姉ちゃんころしちゃだめぇー!
「グルルゥ。スカーレット、別に殺すつもりはないから安心なさい。まあ、勢い余って殺ってしまう可能性もないではないのだけれど」
まったく安心できない話をどうもありがとうございます! って、どうしてこんなことにぃいいーーー!?
「あ、あのぉ〜、どうしても戦わないとダメなの?」
「グルルゥ。魔族の子よ、お前は我の獲物が欲しいのであろう? よもや、ただで譲ってもらおうなどと図々しいことは言わぬよな?」
「うぅ、分かったよぉ〜。戦いたくはないけど、戦ってあなたを満足させれば良いんだよね?」
「グルルゥ。満足させられたら、な」
そう言って、ドラゴンが大きな翼をはばたかせて、空へと飛翔した!
「うぅ〜、はばたくだけで、凄い風なんだけどぉーー!!」
私も蝙蝠の羽を使って上昇しドラゴンを追い掛けた。
「グルルゥ。海上なら、お前も思う存分魔法が使えるであろう? さあ、遠慮はいらぬ! 我を楽しませてみよ! グゥワォオオーーーー!!」
ドラゴンの咆哮が穏やかだった海を大きく波立たせた!
うぅ、なんだってこんなことに……。
私は魔法を使って身体を覆うように防御結界を張り、その上に氷で出来た防具を装備、身体の周りにブリザードを展開して、ドラゴンの炎のブレス対策をした!
「グルルゥ。来ないのか? なら、こちらから攻撃してしまうとしよう」
ボッ、ボッ、ボッ! ボボボッ! ボボボボボボッ!
「はぁ!? 何それぇえええーー!?」
ドラゴンの周りに炎の槍が12本浮かび上がった!
「グルルゥ。まずは小手調べ」
そして、無数の炎の槍が私に向かって高速で飛んで来た! 私は避けた! 避けて避けて避けまくった! 終わった!と思ったら炎の槍が追加された!
ボボボボボボッ! ボボボボボボッ! ボボボボボボッ!
ボボボボボボッ! ボボボボボボッ! ボボボボボボッ!
「っ!?」
やだ、さっきの3倍はあるじゃないですかぁあーーー!? あ、あんなの避けてらんないよ! 私の下には大量の水がある! 無限の水で迎撃だよ!!
「ト、トルネード・ウォータぁああーーー!!!」
私は両手から竜巻みたいな渦巻き状の水を大量に放出し、飛んで来る36本の炎の槍を次々と消失させた!
「はっはっは。なかなかやるではないか魔族の子よ! だが防いでるだけでは我を満足させることなどできはせぬぞ? 向かって来ざるをえないようにしてやろう! グルルルォオオーーン!!!」
ボボボボボボッ! ボボボボボボッ! ボボボボボボッ!
ボボボボボボッ! ボボボボボボッ! ボボボボボボッ!
ボボボボボボッ! ボボボボボボッ! ボボボボボボッ!
ボボボボボボッ! ボボボボボボッ! ボボボボボボッ!
ボボボボボボッ! ボボボボボボッ! ボボボボボボッ!
ボボボボボボッ! ボボボボボボッ! ボボボボボボッ!
「なぁっ!?」
無理無理無理ぃいいい!!! あ、あんなに沢山の炎の槍展開させておいて向かって来ざるをえないようにって頭おかしいでしょぉおおお!?
私は海に逃げた!
「グルルゥ。もう降参か? つまらんのう」
「キュウ!! キュウ!!」ママのばかばかー!
「こ、これ、スカーレット、止めないか!? 何をそんなに怒っておるのだ。ちょっとした余興ではないか!?」
「キュッキュウ! キュッキュウ!」お姉ちゃんは、にんげんにつかまってたわたしを助けてくれたのー! いじめちゃだめぇー!
「そんなことは言われずとも分かっておる! だからこうして逃げ場のある海上に来てやったではないか!?」
ザバザバァアーーーー!!
海の中から7つの青い色をした、ドラゴンの大きさに匹敵する大蛇が舞い上がった!
「グルルルルルゥ。あれは魔族の子の召喚魔法、か? 面白い、面白いではないか! グゥワォオオオーーーー!!」
ドラゴンが叫ぶと先程展開していた100本以上の炎の槍が7つの青い大蛇に向かって飛んでいく!
◇◆◇
今、私は飛び込んだ海の中で作戦を練っている!
あ、あんなの卑怯だよぉおお!! 私の手は2本しかないんだよ!? さっきの炎の槍だって消すのにいっぱいいっぱいだったのに!! ドラゴンに対抗、ドラゴンに対抗、ドラゴンにはドラゴン? 龍? ヤマタノオロチ? ヤマタノオロチって頭いっぱい生えてたよね? その口からトルネード・ウォーター放てば、さっきの100本近い炎の槍もイケるかな? イケるよね? よし、魔法で作っちゃおう! 水はいっぱいあるし! ヤマタノオロチって8つ頭がある大蛇だったっけ?
あっ、でも防いでるだけじゃダメって言われたし……。さっき炎の槍をトルネード・ウォーターで消失させた時、水が蒸気っぽくなって白んでたよね? たくさんの炎の槍に大量の水をぶつければ煙幕っぽくなってドラゴンの視界を誤魔化せるかも! 蒸気で視界を遮った時に極太の氷の槍を飛ばせば、びっくりさせることができるかな?
よし、女は度胸ぉ! 怖くない、怖くないぃいいい!!
ヤマタノオロチ召喚ぅうう!!
私は白い大蛇ワイトの身体を元に魔法で水の大蛇を7つ、氷の大蛇を1つ作って、水の大蛇と一緒に海上へと躍り出た!
「お待たせ! さっきの続きをって、どうしてもう炎の槍が飛んで来てるのよぉおおお!! ト、トルネード・ウォーター一斉放射ぁああああ!!!」
私の叫びと同時に7つの水の大蛇の口から荒れ狂う螺旋状の水が吐き出される!
ゴォオオオオオーー!! ババババババッ!! ジュワッジュワッ!
そして、大量の水と大量の炎の槍が激突し、辺り一帯が白い蒸気で包まれた!
もくもく、もくもく。ザバァーン!
私はすかさず海中で待機させていた氷の大蛇を海上へと呼び出し、魔法版エコーロケーションでドラゴンの翼の位置を把握&ロックオンして、ドラゴンの翼に向かって氷の大蛇に極太の氷の槍を何本も吐き出させた!
ヒュン! ヒュン! ヒュン!
極太の氷の槍が蒸気を貫いて飛んでいく!
グサグサグサッ!!
「グ、グワァアアアア!?」
「キューー!?」マ、ママーー!?
「やった、当たった!!」
極太の氷の槍を翼に受けてダメージを負ったドラゴンが海に向かって落下していく!
「うっ、や、やり過ぎちゃった?」
けれど、ドラゴンは海面スレスレでグルッと反転して上空へと舞い上がった!
「グルルルゥ。なかなか姑息な手を使うではないか?」
「え、えっとご満足いただけなかったかな?」
「ふむ、まあ、我を傷つけることができたのは認めてやろう」
「じゃ、じゃあ!」
「だから、もっと激しい戦いをしようじゃないか、魔族の子よ!」キラーン!
ドラゴンの金眼が怪しく光った! ドラゴンはとても嬉しそうな顔をしている!
「うっそぉおおおお!?」




