第9章 ちびドラゴン 014 〜 雪音ちゃん、ドラゴンと戦闘する!②〜
「では、参るぞ!!
グルゥワァアアアーーー!!!」
ドラゴンが炎を纏わせた前脚を振り上げながらこっちに飛んで来た!
「ト、トルネード・ウォーター一斉放射ぁあああ!!」
7つの水の大蛇の口から吐き出された水の竜巻が、ドラゴンの前脚が纏った炎を消した! けれど、飛びかかって来た重量のあるドラゴンを押し戻すほどの威力は水の竜巻にはなく、ドラゴンの振り下ろした前脚によって1つの水の大蛇が崩されてしまった!
「グルグルグルゥ、あと7つ!」
「にゃあーー!?」
どうしよ、どうしよぉおお!? まずいまずいまずい!!
考えがまとまらない内にドラゴンの猛攻で私の前にいる水の大蛇達が次々と粉砕され、元の水となって海に還っていく!
えっと、えっと、そうだ! 極太の氷の槍はドラゴンの身体を傷付けることができた! なら、氷の大蛇をいっぱい作っちゃえ!
私はドラゴンを取り囲むように7つの氷の大蛇を新たに作り出し、元々残ってた氷の大蛇と合わせて8つの大蛇の口から極太の氷の槍を吐き出させた!
「グゥワォオオオオオ!!!」
ドラゴンが今度は身体全体に炎を纏わせながら上昇して極太の氷の槍を躱していく! そして、すぐさま上空で宙返りして、氷の大蛇目掛けて滑降して来た! 氷の大蛇が口から極太の氷の槍をいくつも飛ばす! けれど、ドラゴンはそれをバレルロールで回避しながら接近し、氷の大蛇の頭を炎を纏った前脚で粉砕する! 残った氷の大蛇達がドラゴンに向かって次々と極太の氷の槍を飛ばすも、ドラゴンは上空へと飛んでそれらを回避し、同様の手段で別の氷の大蛇を壊していく!
うぅうう、当たった攻撃って最初の不意打ちだけじゃない!! 不意打ち、不意打ち……。
ドラゴンは嬉々として氷の大蛇の頭を粉砕していく! そして、氷の大蛇の数が少なくなって余裕が出て来たのか、ドラゴンは頭がなくなった氷の大蛇の残骸に器用に乗っかり、口から炎を左から右へと吐いて飛んで来る氷の槍を蒸発させてしまう! そして、またドラゴンは空へと舞い上がる!
あぅあぅ、氷の大蛇あと2つしか残ってないじゃん!! な、なら、最後の1つが壊される瞬間に不意打ちしてあげるわよぉおおお!
ドゴォオーーン! ピキピキピキ、パキーーン! パラパラパラ。
「あと1つ。グルグルグルゥ。さあ、もっと我を楽しませよ!」
ドラゴンは満面の笑みを浮かべながら今粉砕した氷の大蛇の残骸を足蹴にし、最後の氷の大蛇に向かって飛びかかった!
「グルゥワァアアア!!」
今だっ!
「ウ、ウォーター・レーザァアアア!!」
ドラゴンが残り1つとなった氷の大蛇の頭を前脚で叩き壊そうとする瞬間、私は全てを貫く超高圧縮した水を氷の大蛇の周りの海面から上空に向けて大量に撃ち出した!
チュンッ! チュンッ! チュンッ! チュンッ! チュンッ! チュンッ!
チュンッ! チュンッ! チュンッ! チュンッ! チュンッ! チュンッ!
超高圧縮で際限なく撃ち出された水が、ドラゴンの纏った炎にさえ穴を穿ち、ついにはドラゴンの左右の翼をも次々と撃ち抜いていった!
「グワァアアアアア!? お、お前ぇえーー!? 今、今何をしたぁああ!?」
「な、何って水の魔法を使っただけなんだけど?」
ドラゴンは頭を壊された氷の大蛇の上にちょこんと乗っかって翼にできた傷をぺろぺろと舐めている! 舌が傷口に届かない所もいっぱいあって、ドラゴンは苦痛にゆがんだような顔をしている!
「グルルルルゥ。い、今のが水の魔法、だと? 馬鹿な……」
「そ、そうよ! ここには水がいっぱいあるんだから、私が手加減しなかったら、あなた今頃身体中穴だらけなんだからね! い、今みたいな攻撃を、う、海中から撃ち出すことだってできちゃうんだから! ホ、ホントなんだからね!」
「キュウ! キュッキュウ! キュウキュウ!」ママー! もうやめてよー! ケンカやだー!
「ま、まあ良いだろう。我の身体にここまで傷を付けたのだからな。うむ、久々に暴れることができて満足だ。グルルルルルゥ」
「じゃ、じゃあ、もう終わりで良い?」
「ああ、終わりで良い。次は海でない所で戦おうか、魔族の子よ? グルルルルルゥ」
「それは謹んでお断りさせていただきます!」
「むぅ、つれないのう。グルルルゥ」
「と、ところで、あなたの怪我なんだけど、魔法で治してあげるから流れ出たあなたの血、もらっても良いかな?」
「グルルゥ。好きにするが良い」
「やったぁ! ありがと、ドラゴンさん♪ ギャザー・ブラッドぉお!」
ドラゴンさんの身体から流れ出た血が私の前に集まって球体を作っていく! おぉおお、すっごくいっぱいあるね♪ じゅるり。
私は魔法で氷のコップを作って、赤い球体から氷のコップへと血を注ぎ込み、銀仮面を外してゴクゴクと飲んでみた。
うっまぁああ! ドラゴンの血、めっちゃうまぁあああ!! なにこれ、なにこれ、すっごく美味しいんだけど!? しかも、なんか身体中に力がどんどん湧いて来るよぉおお!! 今なら目の前のドラゴンさんと互角に戦えるかも!!
私は今も集まり続ける血の球体からもう1杯分の血を空になった氷のコップへと注ぎ、今度は味わうようにチビチビと飲み始めた。
「グルルルゥ。おい、我の傷を癒すのではなかったのか?」
「あっ!? ご、ごめんなさい。あなたの血があまりにも美味しかったから、うっかり忘れちゃってたよ! えぃ♪」
私はドラゴンさんに回復の魔法をかけてあげた! オレンジ色の光がドラゴンさんの身体を包み込む! 戦闘が終了しているんだから、これで完全回復したはずだよね? ゴクゴク。あー、美味しい♪
「グルルゥ。ふむ、回復魔法とは便利で良いものだな」
ドラゴンさんは穴がいっぱいあいた翼が綺麗に修復されたのを見て満足そうだった。良かった。良かった。
私はほぼ飲み終わった氷のコップの処理を腕輪に擬態しているスライムのピーちゃんにお願いして、氷のコップを丸飲みしてもらった。ピーちゃんは氷のコップにドラゴンの血がまだ少し残ってたためか、とても嬉しそうだった。「ぴー♪ ぴー♪」と腕輪に戻った後も嬉しそうに鳴く声が聞こえて来る。
ドラゴンさんの傷口から流れ出る血も止まり赤い球体に集まる血が打ち止めとなったため、私は血の球体を氷漬けにして天上界の倉庫にしまいながらドラゴンさんに質問をした。
「ドラゴンさんは回復魔法使えないの? あんなに凄い火の魔法を使えるのに……」
「グルルゥ。残念ながら回復魔法は使えぬ。その代わり、夜横になって朝起きれば完全に治癒する身体を神から授かっているがな」
あぁ、人間と魔物が戦うのを見るのが好きなあの神様なら、そういうふうにドラゴンさんを作っちゃいそうだよネー。ドラゴンさんが戦闘中に回復魔法なんて使ったら、人間に勝ち目ないもんネー。でも、戦闘中に回復魔法が使えないのはちょっと可哀想かも。
「おい、魔族の娘よ。我のことをそのような目で見るでない! そもそも我があそこまで傷付くようなことは今までなかったから、回復魔法など必要としたことはなかったのだ! グルルルルルゥ!」
「でも、怪我したら痛いでしょ?」
「当たり前だ! 昨今傷付くようなことはなかったから余計に痛かったのだ! グルルルルルゥ!」
「キュッキュウ! キュッキュウ!」それはママのじごーじとくなのー!
「ス、スカーレット!? ママに向かってなんてこと言うの!」
「のだじゃなくなった……」
「えぇーい、うるさい魔族の娘よ! グルルルルルゥ!!」
「えっと、ドラゴンさんは回復魔法が使えたら嬉しいのかな?」
「当たり前だ! さっきのような痛みがなくなるのを朝まで待ちとうないわ! グルルルゥ!」
「ふーん。もし、ドラゴンさんが回復魔法を使えるようになる方法があるって言ったら?」
「キュ〜ウ?」お姉ちゃん、そんなことできるのー?
「ふん、もし、そのようなことができるのであれば、お前の下僕にでもなんでもなってやろうではないか! グルグルグルゥ!」
「ホントッ!? じゃあ、私の血を飲んで私の下僕になってよ! そうしたら、あなたが回復魔法を使えるようにしてあげるよ!」
「キュッキュウ! キュッキュウ!」わたしも回復まほーつかいたーい!
「ま、待て! さっきのは言葉の綾だ! 災厄の魔物と言われた我が誰かの下僕になるなど」
「キューー!! キュッキュウ! キュッキュウ!!」やだー! わたし、回復まほーつかいたーい! ママのうそつきー!
oh〜、このドラゴンさん、噂の災厄の魔物さんだったんだ……。私、よく死ななかったなぁ ( 遠い目 )。
スカーレットちゃんが私の方に飛んで来て私の頭の上に乗っかった! だから、どうしてそこに止まるのかなぁ?
「キュッキュウ!」やくそくやぶるママなんてきらーい!
「グルアッ!?」ガーーーン、ガーーン、ガーン……。
ドラゴンさんがガックリと頭を垂れて肩を落としちゃった。
「え、えっと、どうする? 私の血、飲まないなら、私、そろそろみんなも心配してるだろうし、町に帰ろうと思うんだけど……」
「……った。……む」
「はい?」
「飲むと言ったのだ! その代わり、お前の血を飲んでも回復魔法が使えなかったら、どうなるか分かってるだろうな!! ガルルルルルゥ!!」
えぇー、それって八つ当たりじゃん!! だ、大丈夫だよね? ちゃんと回復魔法使えるようになるよね? ドラゴンが回復魔法を覚えるの、神様禁止にしてたりしないよね? うぅ、ちょっと心配になって来ちゃったよ。ハァー。




