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電波 第24話

「ああ……少し君たちの意見が聞きたくてな」


 拓哉はそう言いながら、克己と共に部屋の中央へ進んだ。


 室内には数人の男たちがいた。


 元新聞記者。


 元通信技術者。


 フリーライター。


 ネットワークエンジニア。


 肩書きは様々だったが、共通しているのは「警察が知らない情報」を持っていることだった。


 その頃。


 綾乃は拓哉を見失いながらも、ようやく最上階の一室へ辿り着いていた。


 扉は完全には閉まっていない。


 わずかな隙間から中の声が聞こえてくる。


『何やってるのよ……あの人』


 綾乃は呆れながらも、そっと耳を近づけた。


 一方、室内では拓哉が机の上へ事件資料を広げていた。


 駅ホームでの変死事件。


 被害者の写真。


 目撃証言。


 そして実夏の証言。


 男たちは真剣な表情で資料に目を通している。


 やがて一人が口を開いた。


「被害者は死亡直前、空を見上げていたんだろ?」


「ああ」


 拓哉が頷く。


「しかも“聞こえる”と呟いていた」


 別の男が腕を組む。


「集団催眠じゃないのか?」


「電波による精神干渉の可能性もある」


「だが首の切断は説明できない」


 さらに別の男が言う。


「軍のマイクロ波実験って話も聞いたことがある」


「昔、海外で似た研究があった」


「人間の脳へ直接信号を送る研究だ」


 拓哉は黙ったまま聞いていた。


 そして克己が資料を閉じる。


 室内が静まり返る。


「俺の意見を言うなら――」


 全員の視線が集まる。


 克己は被害者の写真を見つめながら言った。


「これは事故じゃない」


「殺人でもない」


 綾乃は扉の外で眉をひそめる。


『どういう意味?』


 克己は続けた。


「被害者は何かを受信したんだ」


「受信?」


 拓哉が初めて反応する。


「ああ」


 克己は頷いた。


「携帯電話が一斉に鳴った」


「複数の端末が同時に異常動作した」


「そして被害者は空を見上げた」


「偶然にしては出来すぎている」


 男たちは黙り込む。


 克己はさらに声を落とした。


「もしこれが意図的に送信された信号なら……」


「誰かが実験している可能性がある」


 拓哉の目が細くなる。


「軍事技術か?」


 克己は少し考えた後、静かに答えた。


「あるいは、その技術を盗んだ誰かだ」


 室内の空気が重くなる。


 拓哉はポケットから実夏の携帯電話を取り出した。


 机の上へ置く。


「実はこれが問題の端末だ」


 男たちが身を乗り出す。


 その瞬間だった。


 真っ暗だった画面が、誰も触れていないのに突然点灯した。


 全員が息を呑む。


 画面には一行だけ文字が表示されていた。


 《OBSERVATION ACTIVE》


 観測継続中。


 室内に沈黙が落ちる。


 そして扉の外で盗み聞きをしていた綾乃も、その文字を見てしまった。


『なに……それ……』


 その時だった。


「で?」


 突然、拓哉の声が響く。


 綾乃の心臓が跳ね上がる。


「いつまでそこで盗み聞きしてるんだ?」


 扉の向こうから聞こえる沈黙。


 室内の男たちが一斉に入口を見る。


 拓哉は振り返らないまま続けた。


「入れよ、神崎」


 綾乃は思わず顔を引きつらせた。


 完全にバレていた。

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