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電波 第17話

綾乃と拓哉は、実夏から詳しい事情を聞くため、駅員に案内されて駅長室へ移動した。


室内には重い空気が漂っていた。


実夏はソファに腰掛けていたが、未だに顔色は悪い。


両手で紙コップを握り締めているものの、その指先は小刻みに震えていた。


綾乃はそんな妹の隣に腰を下ろすと、優しく肩を抱いた。


「大丈夫だから・・・ゆっくりでいいわ」


実夏は小さく頷く。


綾乃は静かに問い掛けた。


「一体、ホームで何があったの?」


実夏は俯いたまま答える。


「何があったって言われても・・・」


「気付いた時には・・・」


そこで言葉が詰まる。


思い出したくない記憶なのだろう。


「ホームの端にいた男の人の首が・・・無かったの・・・」


室内が静まり返る。


綾乃は妹を安心させるように頷いた。


「その前よ」


「事故が起きる前に何か見なかった?」


「何か変わったこととか・・・」


実夏はしばらく考え込んだ。


やがて顔を上げる。


「あ・・・」


その一言に拓哉が反応した。


「何だ?」


実夏は少し首を傾げながら言った。


「そういえば・・・」


「電車が来る少し前・・・」


「ホームにいた人達の携帯電話が・・・」


実夏は不安そうな顔になる。


「全部、一斉に鳴ったの」


綾乃の表情が固まる。


「全部?」


「うん・・・」


「みんな驚いてた」


「私の携帯も鳴ったし・・・」


「近くにいた会社員の人も・・・高校生も・・・駅員さんも・・・」


「みんな同じタイミングだった」


その瞬間だった。


拓哉の表情が変わった。


それまでの気怠そうな顔が消える。


鋭い視線が実夏へ向けられる。


「着信音は?」


「え?」


「どんな音だった?」


実夏は戸惑った。


「普通の着信音じゃなかった・・・と思う」


「何ていうか・・・」


「携帯の音なのに・・・」


実夏は眉をひそめる。


「変な音だった」


「変な?」


綾乃が聞き返す。


実夏は目を閉じる。


思い出そうとしている。


そして小さく呟いた。


「ラジオの雑音みたいな・・・」


「ザーッて音・・・」


拓哉は無言になった。


綾乃が気付くほど、その顔色が変わっている。


「火宮さん?」


しかし拓哉は答えない。


代わりに窓の外を見た。


ホームの上に設置された電光掲示板。


監視カメラ。


無数の携帯電話。


そして誰にも聞こえないほど小さな声で呟く。


「・・・同じだ」


綾乃が眉をひそめる。


「同じ?」


拓哉は実夏から視線を外さないまま言った。


「十年前のMファイルと」


その言葉に駅長室の空気が変わった。


綾乃は思わず息を呑む。


「十年前・・・?」


拓哉は答えなかった。


ただ資料のページをゆっくり開く。


そこには古びた事件写真が挟まれていた。


写真の端には赤い文字でこう記されている。


『M-01 電波』


そして被害者の最後の証言。


――聞こえる。


拓哉の瞳が鋭く細められた。


「まさか・・・また始まったのか・・・」

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