第8話 常識外れな力と、動き出す計画
昨日はお約束の時間に更新できておらず、申し訳ありませんでした。
第8話、お楽しみ頂けたら幸いです。
俺はロベルトの怒気に思わず息を飲み、部屋を満たした冷気に身震いした。
無表情で俺を見ていたロベルトの目に、心配の色が浮かぶ。
「レオ様、先にお体の具合を診ます。横になって楽にしてください」
「あ、あぁ。すまない」
申し訳なく思い、ロベルトに謝罪する。
「ありがとう」
俺の体を気遣いながら、ベッドへ俺を寝かせるハワードに礼を言う。
沈黙が降りる中、粛々と俺の体に異常がないか、診ていくロベルトが大きな溜め息を付く。
「体に問題ありません。……ですが、魔力による負担が重くなっています。レオ様、私は昼食までは魔力は使わないようお願いしたはずです」
「あっ、」
「まさか、お忘れに?」
冷たい視線が突き刺さる。
「ご、ごめん……」
部屋の温度が一気に下る。
俺の体が無意識に震える。
「おい、ロベルト魔力を抑えろ、冷気になっている。坊っちゃんの体に障るだろ。顔色が真っ青じゃないか」
「大丈夫だよ、ハワード。これも魔力の影響なのか?」
「申し訳ありません。それもありますが、私がレオ様の炎を相殺するために、氷魔法を使用しました。炎の魔力濃度が濃く手加減できず、まだ冷気が残っております」
「その残っている冷気が、お前の魔力に反応して部屋の温度を下げているだろうが。心配なのは分かるが、感情を抑えろ。お前らしくなくて俺は面白いがな」
ニヤリと笑うハワードに、嫌な顔をするロベルト。
仲いいんだな。
「誤解です。レオ様」
「遠慮する」
ほぼ同時に二人とも否定って、仲いいじゃん。
俺は天井を眺めて息を吐く、おぉ、息が白い。
「申し訳ありません。こちらの毛布をお使いください」
ロベルトが毛布を掛けてくれる。
「ありがとう。温かいな」
「では、レオ様。お伺いしても?なぜ魔法をお使いになったのですか?」
「そ、その、ロベルトが持ってきてくれた本を全部読んで、知識の記憶がすり合わされた。後は魔法が使えるようになるだけ、そう思って高揚したせいで、使うなと言われたことを忘れていました。ごめんなさい」
素直に非を認めて謝罪する。
「……は?今なんと」
「忘れていました」
「いえ、そうではなく。はじめに何と?」
「ん?ああ、持ってきてくれた本を全部読んで」
「全部読まれたのですか?あれを?」
頷いて答える。
「嘘だろ? 50冊くらいあるよな?」
「ハワード、少し黙っていてください」
「はいはい」
返事を返しつつ肩をすぼめるハワード。
「レオ様、本で知識の記憶が戻られたのですよね?ですが、ハワードのことは、覚えてないように見受けられますが」
「……あぁ、すまない。知識は戻ったが自分のことや人のことは、まだ何も思い出せていない。ごめん」
「いえ、謝罪するような事ではございません」
「そうだぞ。坊っちゃんに非はないからな」
グリグリと頭を撫でられる。
く、首がもげる!
「ハワード、力が強いです」
「すまん、すまん」
「それで、レオ様は知識が戻ったので、魔法を使えるように練習をされたと」
「……はい、そうです」
「かなり使えるように、なられたようですね」
「それなりに……でも、コントロールが上手くできない」
「魔法を習得するには学校へ通うか、専門の教師が必要です。レオ様は奥様が教えておいででした」
「サラサ様は魔法上手かったよな。坊っちゃんに、教えている時に見るだけだったが」
「……そうですな」
思い出して懐かしんでいる表情を、二人が見せた。
「そうか……」
どうも思い出せない。自分の母親と思えないし……。
「魔法のコントロールですか……、その割に複数の魔法を同時に、ご使用になられていますね」
「複数?俺が?」
「そうですよ、坊っちゃん」
「ハワード、坊っちゃんって呼ぶな、名前で呼んでくれ」
「俺も?分かりました、睨まないでください。レオ様のせいで部屋に入るのが、大変だったんですよ? 遮音に、あんな強固な結界まで……。結界切って入ったら、すごい熱で坊っちゃ、レオ様は窮地に陥っているし、慌てました」
「遮音に結界って? 結界で守ってくれたのは、ハワードだよな?」
「確かに、俺とレオ様を守るのに結界を張りましたけど、部屋全体に結界張ったのはレオ様でしょ?」
「ん~? あっ!確かに使った。音が漏れないように遮音と、部屋の状態を維持したくて結界張った。忘れていた……」
「「……」」
顔を見合わせる二人。
やっぱ仲が……。
二人に睨まれた。
やっぱ心読んでいるよね。
「魔力……、大丈夫なのか?」
「魔力枯渇の症状は皆無ですな」
「遮音や結界って、発動した後も魔力消費するのか?」
「もちろんです」
「消費している感覚がないのか?」
「……特に何も感じないけど」
なんか二人の言動からすると、俺の魔法、いや魔力なのか?
常識外れっぽいな……。
「……すごいな」
ハワードが感嘆する。
「そうですな。レオ様は魔法を覚える前に、魔力のコントロールをしっかり出来るようにされたほうが良いですな。膨大な魔力をコントロール出来ないと、自分自身や周囲に危険が及びます」
「わかった。それで、遮音や結界の魔法を、解くにはどうしたらいいんだ?」
「ロベルト」
「私の範疇ではありませんな」
「……」
俺の扱いが、ひどくなっている気がする。
「解除という認識ではなく、発動を止める、が正しいかと。レオ様自身は認識できてないようですが、継続してレオ様が魔力を与えております。それを止めれば発動は止まります。結界魔法は私が破壊しておりますので、今は遮音のみです」
「なるほど……」
ん~? 魔力繋がってないけどな、魔力を与えすぎて維持できている感じなのか?
魔力を戻す? 消す? 何かもったいないな、何かに使えないか?
「ん~」
あ、あれがいい。……できそうだ。
「消えたか?」
「はい。問題ありません」
「でも、結界破壊されていたのか」
「申し訳ありません。レオ様の炎を消すために、私も加減が出来ませんでしたので」
「いや、いいよ。相手の魔法を破壊するには、それより強い魔力で破壊するのか」
「さようでございます」
「ハハ、レオ様すごいですな。では、二人とも、そろそろ本題の話をしよう。悪いがあまり時間がない」
ハワードが真面目な声で切り替えた。
「そうですな」
「なんか悪かったな、二人とも」
「気にするな、驚いたがいいものを見られた」
「問題ございません。レオ様は十分戦力になります」
「そのとおりだ、頼りにしているぞ」
「もちろん、ここを綺麗に掃除しないとな」
「ハハ、いいね~。そうこなくっちゃ」
「では、早速。作戦の決行は5日後です。伯爵とダリルが4日後の昼に出立します」
「なるほど、残った者は気が緩む。夕食の酒に睡眠薬でも入れるのか? 別館はどうする? できれば先に人質の安全を確保したい」
「……」
ハワードはロベルトに視線をやり、それに頷くロベルト。
「どうかしたか?」
「いえ。別館の見張りの交代は昼食後と夕食後に行われますので、伯爵達が出立後に制圧で問題ないかと」
「わかった。別館へは誰が行く?俺も参戦していいか?」
「レオ様が?」
「ああ、俺は前に別館に住んでいたと、ロベルトに聞いた。人質救出後に別館を見てみたい。記憶を思い出すきっかけになればと思って」
「記憶……、か」
「ああ、まったく思い出せそうにないから」
考え込むハワード。
「そうだな、なら俺も行こう。ロベルトはこっちの下準備を頼みたいからな」
「そうですな、私はこちらを抜けられませんので、レオ様を頼みますよ」
「まかせろ」
「なぁ、別館だが突然に助けに行って、混乱はしないか? 先に伝えて……いや、ダメか。人質の様子が変わったら、悟られる可能性があるな」
「レオ様、そこは大丈夫ですよ。あそこには、こいつの奥さんがいる」
「え? ロベルトの? 結婚していたの!?」
「ブッ、ハハハ」
ハワードが吹いた。
「レオ様……。息子もおります」
「そうだったのか、ごめん」
妻子持ちとは思わなかった。執事、仕事一筋かと思った。
意外だな、と思っていたら睨まれる。
「んん、ん? もしかして息子さんも人質に!?」
「さようです……」
一瞬で空気が緊迫し、部屋に冷気が満ちる。
「おい! ロベルト!! 殺気を抑えろ!」
ハッとした顔をするロベルト。
「申し訳ございません、レオ様」
「気にしなくていいよ」
そう言いながらも、声が震えていた。
殺気か、冷気のせいか……。
俺はハワードを見る。
「ハワードも誰か人質に?」
「いや、俺はいない」
そう答えるハワードの瞳に、複雑な感情が宿っていた。
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次回 2/25 (水) 20時に更新します。
『第9話 発覚した年齢を切り札に?』も、よろしくお願いします。




