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元刑事、異世界で真実に辿り着く  作者: 月乃音


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第72話 市場満喫

俺は出会った少年と市場を見て回った。

少年は俺のスピードに合わせて歩いてくれた。


「好きに見ていいぞ」


「いいの? ありがとう!」


「おう。その前に小腹がすいたな、あれ食べないか?」


少年が指さした方を見てみると、屋台からいい匂いがしてくる。

美味しそうだ。


「いいよ。見に行こう」


「やったね」


少年は鼻歌を歌いながら俺の後を付いてきた。

俺達が屋台の前に来ると、元気のいいおばちゃんが声を掛けてきた。


「いらっしゃい」


背伸びして覗いてみる。

鉄板の上でソーセージが焼かれていた。


「お姉さん、これそのまま食べるの?」


「あはは、お姉さんなんて久しぶりに呼ばれたね。初めてかい?」


「うん」


「これはね、このパンに切り込みを入れて挟んで食べるんだ」


ホットドックだ!


「このソーセージだけでもいいし、ここにある葉野菜も一緒に挟むこともできるよ」


「美味そうだな」


少年の目が釘付けだ。


「野菜とソーセージのトッピングを2つ作ってください。味付けは?」


「味はこれをかけるんだよ」


「ケチャップ!」


「けちゃ? 違うよ。これはね、我が家の手作りトーマの煮込みソースだよ。美味しいって評判なんだよ」


違った。

トーマ……トマトかな?

思わず首を傾げる。


「あんた、可愛いね。そうだ、特別に今日の仕入先でもらった……、これも入れてあげるよ」


そう言って籠から出したのは黄色の固まり。


「ちょっと食べてもいい?」


上目遣いで見てみる。


「そんな顔されたら断れないね」


そう言って、少し削ってくれる。

食べてみる。


「チーズ!」


「おや? よく知っているね。美味しいらしいね」


とろけるチーズが食べたい。


「お姉さん、言う通りに作ってくれない?」


俺が言うと、お姉さんの目がキランと光った気がした。


「教えとくれ」


「まず、パンは中央ではなくて横からスライスみたいに切り込みを入れて」


俺は説明をして、今は目の前で具を挟んだパンの両面を焼いてもらっている。

もうすぐ出来上がる。


「お姉さん、そのぐらいでいいよ。出来上がり」


「はいよ。これで包んでと、これでいいかい?」


「うん! お姉さんも食べてみて」


「ああ、いただこうかね。ほら、あんたたちの分だよ」


受け取ったのは、パニーニもどきだ。

熱々で美味しそう。


「いい香りだね~」


お姉さんも興味津々だ。


「熱! でも、美味い!」


少年はもう食べていた。

好評のようだ。

俺も一口食べる。


「ん~。美味しい」


これこれ、美味い。


「これ、美味しいね。これはいいね。坊や、これ店で売ってもいいかい?」


「もちろん!」


「いいのかい? ありがとね。今日はお金いらないよ」


「いいの?」


「もちろんだよ」


話をしていると、お客さんがやってきた。


「それ、美味そうだな。2つくれ」


「あいよ、今から焼くから少し待ってもらうけど、大丈夫かい?」


「大丈夫だ」


「お姉さん、また来るね」


「待っているよ。ありがとうね」


お姉さんは、にこやかに俺たちを見送った。

その後、匂いにつられて人が増えていた。

人気店になりそうだ。


「これ美味いな」


「良かった」


落ち着いて食べられる道の隅に寄って食べた。

食べ終わると、パンを包んでいた紙を少年が回収してくれた。


「ごちそうさん」


「どういたしまして」


「後は何見るんだ?」


「さっき、本が置いてあったお店に行きたい」


「ああ、古本ね。じゃ行くか」


「うん!」


俺は意気揚々と本を見に行った。

少年が居て良かった……。


「お前、一人の時に市場で買い物するな。騙されすぎだ」


「はい……」


面目ない。

偽物出回りまくりだろう!?

異世界怖い。

当然、日本での知識はまったく役に立たない。

日本は平和だったんだな、と実感する。


「お、ここも本が置いてあるぞ」


「いらっしゃい」


人の良さそうな、おじいちゃんがやっていた。


「ここは大丈夫だぞ」


少年のお墨付きが出た。

俺はしゃがんで本を物色する。


「少しここにいろ、すぐ戻る」


「分かった。大丈夫、戻るまでここに居るから」


「じいさん、悪いが見ててくれ」


「構わんよ」


おじいさんが返事をすると、少年は人混みに消えた。

信用ないな。


「お前さんが心配なんだろうて」


おじいさんが微笑ましそうに笑った。

なんだ、誰もが俺に過保護だ。



2冊手に取った頃、少年が戻ってきた。


「買う本は決まったか?」


「うん。決まったよ」


振り向くと、少年の手にはコップが2つ。


「それは?」


「アップルジュースだ。そろそろ喉が乾いただろ?」


確かに。


「うん、ありがとう」


俺はおじいさんにお金を払う。


「確かに、気をつけるんじゃよ」


「はい」


少し離れたところに居る少年の所へ向かう。


「お待たせ」


「ああ。落ち着いて飲めるところに移動するぞ」


「うん」


「俺の横に来て、マントを握ってろ」


子供扱いだ。

まぁ、実際子供なんだけどな。

ん?


「おい?」


俺が止まったため、引っ張られた少年。


「あ、ごめん。ちょっと待って、これ買いたい」


「ん? ああ、問題ない」


少年から買う許可が出た。

早速お目当ての物を購入した。


「お待たせ、ありがとう」


「ああ」


そのまま少年に連れられていくと、噴水だった。

唖然としていると、少年に笑われた。


「そろそろ、頃合いだろ?」


確かにそうだけど。


「ほら、座って」


俺は噴水の前のベンチに座った。

するとジュースを渡された。


「ありがとう」


受け取りそのまま一口飲む。


「ぬるい」


冷えていたら美味しいよな。


「待て」


ひょいっと手からコップを奪われる。


「ほら」


戻ってきたコップは冷えていた。

ジュースの中には氷も入ってる。


「美味しい」


「そりゃ良かった。だがな、お前みたいなチビが、こんな人混みで魔法を使おうとするな」


ギクリとして、体が固まる。


「正直なのはいいが、不用心過ぎる」


「はい、ごめんなさい」


少年は目の前でコップを仰いだ。


「過保護になるわけだ」


「え?」


小声で聞き取れなかった。

少年は気にもせず、ジュースを一気に飲み干す。


「は~、美味いな」


にこやかに笑う少年。


「こんなもんかの」


「え?」


「お? 迎えが来たみたいだな」


「え?」


少年の視線を追うと、人混みを掻き分けて走って来るエドガーとリックが見えた。

俺は立ち上がり、二人に手を振る。


「エドガー、リック」


二人は俺に気づき、ホッとした顔を見せて近づいてきた。

あ、まずい。

かなり怒ってる?


「レオ~。お前な、はぐれるの早いわ!」


エドガーに頬を引っ張られる。


「ひょめんなさい……いひゃい」


エドガーの手をペチペチ叩く。


「無事で良かった。エドガー、その辺にしとけ、周りが見てる」


「まったく、変なもの買わされてないだろうな?」


「大丈夫! この人に、あれ?」


さっきまで隣りにいた少年がいない。

キョロキョロと探すが見当たらない。

ベンチには少年が飲んでいたジュースのコップだけ置いてあった。


「誰か一緒だったのか?」


エドガーが聞いてくる。


「うん、俺より少し年上の少年が、粗悪品を買わされそうになったところを助けてくれて、その後も一緒に市場を周って、ここへ連れてきてくれたんだ」


「いい少年に会ったんだな」


リックが言いつつ、周りを見渡す。


「それらしい姿はないな」


「粋なことをするな」


エドガーが感心する。


「ああ、礼がしたかったがな」


「一応、屋台の食事奢ったよ」


ただになったけどね。


「そうなのか?」


「うん。あ、でもジュース奢ってもらっちゃった」


「いい奴だったみたいで、良かった」


「ああ。本当に」


思わず俺は首を傾げる。


「あのな。はじめは、いい顔して面倒を見てくれるが、その後に薬入れた飲み物で、眠らされて拐われたりするんだからな」


思わずコップを見る。


「本来なら初対面の者から食べ物、飲み物をもらわない。食べない、飲まない、だ」


リックが言い聞かせるように言う。


「まぁ、何事もなくて良かった」


リックが俺の頭を撫でた。


「心配かけてごめんね」


「まったくだ」


ひょいっとエドガーに抱っこされる。


「このコップ返して、双月へ行くか。あの屋台だよな?」


エドガーがベンチに置いてあったコップを掴む。


「そうだな。レオは疲れてないか?」


「大丈夫。それに、双月行きたい」


エドガーとリックは顔を見合わせて笑った。




その後、コップを返して双月に行くと、お店は繁盛していた。

俺達が入ると黄色い声がした。


「きゃー、エドガー様よ。任務でどこかへ行かれていると聞いたけど戻られたのね」


「そうねぇ、いつ拝見しても素敵ね~」


「リック副団長はいつ見ても凛々しいわね」



色々と聞こえるが、当の二人は無反応だ。

慣れているようだ。



「いらっしゃいませ。当店は初めてですか?」


ステラさん!

二人に気づいてない。


「ステラさん、こんにちは」


俺は少しフードを上げて挨拶をする。


「レオ君、こんにちは」


「こんにちは」


挨拶しつつ、首を傾げるステラさん。


「あれ? え? ええ? え~~~~~!!」


大きな目を更に大きくして驚き、叫ぶステラさん。


「ステラ! お店で大きな声を出してはダメでしょ」


叫び声を聞いて、奥からルナさんが顔を出した。


「お客様、大変失礼いたしました。初めてのご来店でいらっしゃいますか?」


ステラさんが目線で訴えているが、気づかないルナさん。

これは、ワンモアかな。

俺は再度フードを少し上げて挨拶をする。


「ルナさん、こんにちは」


「レオ君、こんにちは」


ピタッと止まるルナさん。

ギギギと音が聞こえそうな動作でステラさんを見る。

その視線に答えるように、何度も頷くステラさん。



ルナさんは両手で口を押さえて、両目をおもいっきり開いた。


「クッ」


笑いを堪えるリック、肩が震えているよ。


「フッ」


釣られてエドガーも震えだす。

そして、店内からは先程よりも大きな黄色い声が聞こえた。




いつもお読みいただきありがとうございます。


次回 10/7(水) 20時更新です。

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