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元刑事、異世界で真実に辿り着く  作者: 月乃音


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第69話 始動

公爵様とローウェンさんに、猫を被っていたことが早々にバレてしまった。

俺も死ぬのは怖いらしい。

冷静でいたつもりだったが、猫が剥がれていたとは……。



もう少しだし、もう猫はいらないか。


「なら、お言葉に甘えますね。何からお話しましょう」


一瞬の沈黙。


「ハハハ。切り替えが早いな、レオ」


「無駄が嫌いなだけですよ」


「とても良いことです」


ローウェンはいい笑顔を見せた。

公爵様はなぜか顔が引き攣っていた。


公爵は咳払いをする。


「ローウェン、あれを」


「はい」


ローウェンさんは、机の上に木箱を置いた。

魔力を感じる。


「これは、魔道具ですか?」


「そうだ。よく分かるな」


「魔力を見られるので」


「……は?」


「レオ様は、……規格外ですね」


「みたいですね」


肩をすくめて見せる。


「これに呪いの石を入れるのですね」


「ああ。できれば各種類5個入れてほしいんだが」


俺は箱に触れて魔道具の強度を見てみる。

弱いな。


「難しいですね。呪いの石は各2個、液体と粉末は5個可能です」


「そこまでか」


「万が一のためです。関係無い人達が呪われないようにするためです」


難しい顔をする公爵様。


「数が必要なんですか?」


「調べるのに2個では、いささか心もとない」


俺は収納から呪い関係のリストを取り出す。


「公爵様、呪いのリストです。一度ではなく、調べたい優先順位を決めて、持ち出したほうがいいと思います」


「そうだな……」


公爵様はリストを受け取り、目を通す。

リストを持つ手に力が入るのが分かった。

同時に公爵様の顔が険しくなる。


黙ってリストをローウェンへ渡す。

公爵様は目頭を揉んだ。


ローウェンさんは、一瞬だが目を細めた。


「これは、本当か?」


「俺には呪いの石を見ても、どの材料で作られた物かは判断できません。ただ、箱には暗号が書かれていました」


「暗号?」


「はい。先程の資料の最後にあります」


ローウェンさんは、最終ページを開き公爵様にも見せる。


「……」


「……」


二人がなんとも言えない顔をする。

凄く分かるよその気持。


うんうん。

頷く俺を二人が見る。


「それを見たとき、俺もお二人と同じ気持ちでした。そんな物を残すなんて不自然ですからね」


公爵様とローウェンは目を合わせる。


「レオ、君は……。いや、よそう」


「ありがとうございます。エドガーやリックも同じでしたよ。これが俺なので慣れてください」


「ハハハ、そうしよう。しかし、レオといると飽きないな」


「さようですね」


楽しそうに笑う公爵様と、優しく笑うローウェンさん。

公爵様はローウェンさんから書類を受け取る。


「話を戻そう。レオはこれが正しいと思うのだな?」


「はい。確かに隠し部屋にありましたが。あまりにも無防備にその部屋に置いてありました。布さえ被せてない状態でした」


「ふむ……」


公爵様は顎に手をやり思案する。


「封印がされていましたが、そんな置き方をしていい代物ではないはずです」


「そうですな」


ローウェンさんは頷きながら答えた。


「ええ。伯爵は何が入っているか知らなかった。ここからは俺の推測ですが、伯爵は隠し部屋を提供しただけで、荷を運び入れた者は別にいるかと思います」


「わざわざ危険を冒して伯爵家で保管をさせたと?」


俺は静かに頷く。


「まさか……?」


ローウェンさんが意味ありげに俺を見た。


「ええ、そのまさかです。罪を伯爵へなすりつけるためです。それに重要なものだと伝え、保管を任せると言えば——」


「伯爵は自分が重用されていると思い、操りやすくなる。か」


「ええ、そのとおりです」


「すると、呪いの石はこれだけではないと?」


「ええ。これは伯爵に罪を被せるためだけに使われた物でしょう」


「まて、ならこの呪いの石は裏で糸を引く者にとって不要だということだ」


「すると、これ以外にも多くの呪いの石があることになりますな」


二人の表情が厳しいものに変わる。


「これは、私だけでは手が余るか……」


「俺もはじめはお二人と同じ答えに行き着きました」


「はじめは? どういうことだ?」


公爵様は身を乗り出す。


「原因は公爵様です」


「は? 私だと?」


怪訝そうな顔をする公爵様。


「なるほど、こちらが内密に調査していたことが漏れた可能性があると……」


ローウェンさんは声のトーンを低くして言った。

普通の子供だったら泣くだろうな。

俺は平気だからいいけどな。


俺はローウェンさんを見て頷く。


「そうです。その可能性が高いです」


「諜報捜査が漏れただと!? そんなことはありえんだろう」


「……」


ローウェンさんは公爵様に返答を返さず、俺を黙って見つめた。


「本来ならそうかも知れません」


「どういう事だ?」


公爵様は鋭い視線で俺を見据えた。


「旦那様、落ち着いてください。レオ様が……、怖がってはいないようですが」


ん?

全く怖くないね。

こんなの犯罪者と渡り合ってきた俺からしたら可愛らしい。


「俺は大丈夫ですよ」


朗らかに笑う。


「そこは怖がったほうが良いと思いますが……」


ローウェンさんが微妙な顔をする。


「話を戻しますね。エドガーとリックから報告されていると思いますが、元傭兵の頭だった、ユイールが付けていたペンダントです」


俺は収納から取り出して机に置いた。

ペンダントには結界を貼ってある。


「ユイールは、それで大人の体になっていました」


二人は食い入るようにペンダントを見つめる。


「結界を施してあるので触っても問題ないですよ」


「そうか」


「では、私が」


ローウェンさんが手に取りペンダントを確認する。


「魔道具ですか……」


「そのようです。ユイールの魔力に合わせて作られているようです」


「そうなのか?」


「はい。俺には反応しなかったので」


「試したのか!」


「はい。気になって」


こっそりとだけどな。


「お二人は止めなかったんですか?」


「……。二人は知りません」


「なるほど。次からはお控えください」


ローウェンさん、目が座っています。


「はい。それで、この様なペンダントを子供に使っているんです。一人だと思いますか?」


黙り込む公爵とローウェン。


「これは、ペンダントですが、それ以外でも応用できたとしたら、——どこに誰が潜んでいるか分かりません」


「……」


「……」


部屋に緊張が走る。


「子供が大人になるだけなのか、青年が老人になる可能性もあります」


「本来、注意するべき人間が無害な容姿で紛れ込んでいる可能性ですね」


「そうです」


公爵様は頭を抱えた。


「レオ、どうやって魔道具だと気づいた?」


どうだったか、少し考える。


「……魔力の揺らぎですね」


「魔力が見えるレオ様だから気づかれたのですね」


「はい。それでユイールからペンダントへ魔力が流れていることも分かりました」


「それで、外したら子供に戻ったんだな」


「そうです。それで思ったのですが、その魔道具は魔力を吸うのではなく、保持者の魔力を使い何らかの術を継続してかけているのではと思いました。魔道具には詳しくないので推測ですが」


「一利ありますな」


「レオ、証拠品として貰い受けて良いな?」


「もちろんです」


公爵様は視線をローウェンへ移す。

ローウェンさんは頷き、懐から黒い布を取り出し机に広げ、そこへペンダントを乗せた。


「レオ様、結界を解いていただけますか」


俺は頷き、結界を解いた。

ローウェンさんはペンダントを布で包み、懐へ入れた。


「魔力を遮断する布ですか?」


「さようです」


「レオ」


公爵様は、書類を眺めていた視線を上げた。


「液体と粉は各5、呪いの石は、脳と心の臓でできた石を各5、この箱へ入れてくれ」


「分かりました。隣の部屋で入れてきます」


「ここで頼む」


「ですが」


俺は戸惑った。

エドガーとリックでさえ魔力に当てられていた。


「ご心配には及びません。公爵様と私は彼ら二人より魔力が多いのです。それに私が結界を張ります」


「え? 騎士より魔力が強いのですか?」


公爵とローウェンは目をぱちくりさせる。


「レオ様、ご存知ないのですか? 高貴族ほど魔力が高いのです。稀に、貴族以外からも魔力が高いものも生まれますが」


「そうなんですね」


「ああ、だから問題ない」


「分かりました」


机の上の箱の蓋を開ける。

小さいが魔道具と言っていたので問題ないだろう。


俺は収納からまず粉と液体の瓶を取り出し、箱に入れる。

入れた瞬間、物が消えた。


「これ、収納の魔道具なんですね」


「はい。中でそれぞれ別で格納されます」


俺は感心しながら、呪いの石も箱に入れ蓋を閉じた。

二人は石を見て嫌な顔をしたが、顔色に変化はなかった。


「他の石は、また後日分けてくれ」


「分かりました」


「レオ、伯爵のことは私に任せてもらおう。今も、部下たちが監視しているから、逃がしはしない」


ニヤッと笑う公爵様が頼もしい。


「ありがとうございます」


「3日後に一度状況を伝えよう。それと、レオの愛し子についての報告も上げるの。王城から呼び出しを受けるだろう、王城へ行くときの服装もセドリックに作ってもらってくれ、費用はこちらで負担する」


「え? これではダメですか?」


俺は一張羅をつまんだ。


「ダメですな。私からセドリック様へご連絡しておきます」

 

「ああ、そうしてくれ」


面倒だな。


「そう嫌そうな顔をするな。本来、貴族なら泣いて喜ぶことだぞ?」


「面倒でしかないです」


公爵様とローウェンは俺の顔をみて吹き出した。



いつもお読みいただきありがとうございます。


次回 9/26 (土) 20時更新です。

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