第67話 納得の理由
書類の多さに固まる公爵様とローウェン。
「これは、また……。多いな」
「さようですね。これほどとは」
公爵様とローウェンは唖然としている。
「不要な書類もあるかと思います。レオが全て収納しています」
「確認している時間がなかったのもあるけどな」
リックとエドガーも苦笑い気味に補足する。
「なるほどな。ローウェン、後は任せる」
「承知いたしました」
公爵様は執務室へ入っていった。
それを見送ったローウェンさんは、書類の一束を取り眺める。
「しかし、何故これほど書類が残っていたのでしょう」
訝かしむ様子で書類をめくるローウェンさん。
「罠の心配はないですよ」
ローウェンさんは不思議そうに俺を見る。
「伯爵は覚える頭がなく、捨てられない性格のようです。私物も色々と溜め込んでありました」
「……さようですか」
「小心者なんですよ」
「……」
ローウェンさんは、無言になりリックとエドガーを見た。
二人は肩をすぼめて苦笑いをした。
「どうかした?」
「いえ、何でもございません。そんなところも可愛らしゅうございます」
どこ?
首を傾げる。
「レオは分からなくていい」
そう言ってエドガーに頭を撫でられる。
本当のこと言っただけだが……。
あ、俺そう言えば子供だったわ……。
まぁ、いいか。
今更だな。
リックは顔を逸らして笑いを堪えていた。
そんなに面白いのか?
ま、笑ってもらっておこう。
「ローウェンさん、書類の説明がこちらです」
俺は数枚の紙を渡した。
受け取ったローウェンさんは、確認して驚きの様子を見せた。
「こちらをレオ様が?」
「そうだよ」
「レオ様がお子様である事を残念に思うことがあるとは……」
「そこまで? 分かりやすいように、少し分類して印を付けただけだよ」
「ですが、こちらは関連があるものも分かるようになっております」
「そうだね」
答えながら頷く。
「当たり前のようにおっしゃるのですね」
「え? そうだよね? 違うの?」
「いえ、そうなのですが……」
困惑顔のローウェンさん。
「ローウェン、考えるだけ無駄だぞ、レオだからな」
「ええ、レオなので」
エドガーとリックが失礼なことを言う。
「なるほど、レオ様だからですね」
納得するローウェンさん。
どこに納得できる要素があったかな?
「レオ、書類はこれで全部か?」
「うん、全部だよ」
「後は、あの石と他の物証だな」
「あれは、場所を考えないと無理だな」
「そうだな」
リックとエドガーが難しい顔で話し合っている。
呪いの石が問題だよね。
封印を解いたから、蓋を閉めても呪いが魔力に干渉するんだよね。
しかも、粉末や液体のも弱いけど呪いの力があることが分かった。
「もう1回封印してみる?」
「レオ、開けるたびに呼ばれるぞ?」
呆れ顔でエドガーが言う。
それは、面倒だね。
う~ん。
三人で頭を悩ませる。
「どうされました?」
書類を見ていたローウェンが、こちらの様子に気づき声を掛けてきた。
リックが口を開く。
「あと、物証があるのですが、出す場所と保管方法に問題がありまして」
「問題とは?」
「その物証が呪いの石なんだ。俺たち二人でも魔力が揺らぐ」
腕を組んでいたエドガーが伝える。
驚愕の表情を見せるローウェンさん。
「呪いの石ですか? いくつあるのです?」
俺たち三人は顔を見合わす。
「え~と、呪いの石は5箱、液体と粉末が1箱ずつ。合計7箱だね」
「は……!?」
あ、またローウェンさん固まっちゃった。
でも、今回は復活が早かった。
「早急な対応が必要です。旦那様に報告してまいります。少々お待ちください」
そう言って執務室へ消えた。
行動も早かった。
すぐ、扉が勢いよく開き公爵様が慌てて入ってきた。
「呪いの石が5箱もあるって、本当か!?」
「本当です」
リックが一歩前に出て答える。
「物が物ですので、後ほど報告する予定でした。申し訳ございません」
「いや、慎重になって当然だ。応接室でする話ではない。よい判断だ」
「恐れ入ります」
「レオ、君は収納に入れていて影響はないのか?」
俺はエドガーとリックを見る。
二人とも頷く。
「その前に、結界と遮音魔法を使用して、よろしいでしょうか」
「構わない」
公爵様は即答した。
「ありがとうございます」
俺は即座に魔法を発動させた。
書斎のソファーに座り話すことになった。
「公爵様、私が呪いにかかっている事はご存知ですよね」
チラッとローウェンさんの表情を伺う。
やはり知っていたようだ。
「ああ、二人から報告を受けている」
俺はゆっくり一度頷く。
「私に掛かっている呪いは、押収した呪いの石より遥かに強力です」
息を飲む公爵様とローウェンさん。
部屋の音が消える。
「そのため、私は影響を受けることはありません。ご安心ください」
詰めていた息を吐き出し、ソファーに身を沈める公爵様。
俺を見て、長い溜息をつく。
「——なぁ、レオ。何を落ち着いて話しているんだ?」
公爵様は前髪をぐしゃぐしゃと掻く。
「今さらですし、慌てても呪いは解けないので」
「それは、そうだが……」
公爵様は両膝に両肘を乗せて腕を組み、額をコツコツ叩く。
「旦那様、落ち着いてください」
ローウェンが静かに声を掛ける。
「……そうだな。すまない」
俺は静かに公爵様を見つめた。
そんな俺の視線に気づいた公爵様と視線を交わす。
「——受け入れているのだな」
「はい」
静かに答える。
公爵様は視線を下げ俯く。
膝におかれた公爵様の両手の拳が強く握られていた。
しばらくの静寂。
「ご心配いただき、ありがとうございます」
ぱっと顔を上げこちらを見る公爵様。
その表情を見れば、公爵様が俺にも心を砕いていることがよく分かった。
とても優しい人のようだ。
俺は自然と笑みになった。
息を飲む公爵様とローウェンさん。
「人たらしめ……」
エドガーが何か呟いたが小さく俺には聞こえなかった。
「公爵様、その優しさに付け入れさせてもらいますね」
きょとんとする公爵に、にっこり笑う。
今度は、公爵の顔が引きつった。
「私に力を貸してください。そして、私の願いをお聞き届けくださいませんか?」
公爵は真剣な表情に変わる。
そして、背筋を伸ばして真っ直ぐ俺を見た。
「話してみよ」
「ありがとうございます」
俺は、ロベルト、ハワード、モニカや子供達から聞いた話をまとめて、必要な部分を話した。
公爵様の顔が険しくなる。
「あの、外道が」
怒りで公爵様は吐き捨てた。
「まさか、そこまでとは……。あの小物がそこまでするとは、想像しておりませんでしたな」
「ああ、見誤ったようだ。そんな、だいそれた事をする度胸があったとは」
「いえ、ないですよ。大きな後ろ盾が出来て、気が大きくなっただけの小物です」
「……」
「……」
おや?
俺は両隣のエドガーとリックを見た。
「お二人を、黙らせるとはな……」
「そういうところだぞ?」
リックは感心と呆れ、エドガーは残念な子を見る目で呟いた。
どういうところだよ?
「分かってないだろう?」
エドガーに突っ込まれたが笑ってごまかした。
「公爵様、今話したことの詳細です」
収納から書類を取り出し渡す。
ローウェンが受け取り確認する。
「ああ、ロベルトが記載していますね」
「はい。ただ、子供達の分は含まれておりません。私が後日書きますので、その時に紙とペンを貸して頂けますでしょうか」
「構いませんが……もしよろしければ書き取りいたしますが」
「いえ、問題ありません」
ローウェンは公爵様と顔を見合わせる。
公爵様が頷く。
「承知いたしました。紙とペンを準備いたします」
「ありがとうございます」
「子供達からはレオが話を聞いたのか?」
「はい」
「そうか、感謝する」
ローウェンと少し小声で話す公爵様は、小さく頷いた。
「レオ。呪いの箱だが、もうしばらく預かってもらえるだろうか」
「はい。問題ありません」
「すまない。なるべく早めに用意するよう準備する」
「レオ様、準備のために、いくつか呪いの石などを、見本としていただきたいのです」
「分かりました。ただ、ここでは難しいですね」
「昼食後にお願いできますでしょうか。場所と箱を準備いたします」
「分かりました」
ん?
あ、遮音中だった。
「ローウェンさん、扉の外にメイドさんが来ているみたいです」
「よくお分かりになりましたね」
「探知していたので」
「……」
公爵様がジト目で見てきた。
「……さようですか。レオ様ですね」
エドガーとリックを見て、うんうんと頷くローウェン。
「魔法を解いていただいてもよろしいでしょうか」
「もちろんです」
俺は結界と遮音の魔法を解除した。
メイドさんはお昼の準備が出来たと呼びに来たようだ。
「旦那様、お昼の準備が整いました」
「分かった。皆、いったん休憩しよう。レオ、公爵家の食事は美味いぞ」
「それは楽しみです」
全員でダイニングルームへ移動して、食事を楽しんだ。
いつも、お読みいただきありがとうございます。
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次回 9/19 (土) 20時~22時に更新します。




