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元刑事、異世界で真実に辿り着く  作者: 月乃音


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第64話 対話の先

俺は切り込んだ笑顔のまま、公爵様を見つめた。

公爵様は一瞬目を見開いたが、その後、獲物を狙う猛禽類のような視線になった。


隣にいたエドガーが、俺を引き寄せた。


それを見た公爵様は、一瞬きょとんとした。

そして笑い出した。


イケオジって、きょとんとしても絵になるんだね。

そして笑い方もスマートです。


しかし、エドガーと居ると緊張が続かないな。

まぁ、いいけど。


笑い終えた公爵様は俺と視線が合う。


「エドガーに執着されるとは、レオ君も大変だね」


執着?

思わず首を傾げ、エドガーを見る。


そっぽを向くエドガー。

リックを見ると苦笑い。

……執着なのか?


「実害ないので、問題ありません」


「ぶはっ」


隣にいたリックが吹いた。

前を向くと公爵は口を押さえ肩を震わせている。

ローウェンは笑みが深まっていた。


ローウェンをじっと見ていると、苦笑いされた。


「レオ様には敵いませんな。旦那様、メイドが外でデザートを持って待っているようです」


「ちょうどいいな。ローウェン、外で受け取ってきてくれ」


「承知しました」


こちらを見て、一礼するローウェン。


「少々、失礼いたします」


そう言って部屋を出た。


「エドガー、話し中に引っ張ったらダメだよ」


エドガーは俺をチラッと見て膝を組み、その上に肘を乗せた。

そして頬杖をついてそっぽを向いた。

あっ、拗ねちゃった。


貴公子は拗ねても、絵になりますね。

まじまじ見ていると、こっちを向いた。


「なに考えている?」


「なに……、いひゃい」


途中で頬を引っ張られる。


「エドガー、部屋をでるか?」


冷ややかな声がした、公爵様だ。


「申し訳ありません」


エドガーは、スッと手を離して、姿勢を正して頭を下げた。


「次は即刻出てもらう。リック、お前が追い出せ」


「承知しました」


じっと公爵様を見るが、怒っている訳ではなさそうだ。

面白がっているのかな?


「本当に変わったな。前のお前なら、あのまま部屋を出ただろうに」


ニヤっと笑う公爵様。


「リック、お前はなぜ止めなかった? 前だったら即反応してエドガーを止めただろう?」


不思議そうにする公爵様。

きょとんとするリック。

あ、リックも絵になるのか、イケメン多いな。


「……確かに、そうですね」


そう呟いたリックは、俺とエドガーを見て頷く。


「二人のいつもの行動だったため、何も思いませんでした」


ふっと笑う公爵。

その時、ドアをノックする音が響いた。


「失礼いたします」


「ああ、入れ」


ローウェンさんが、カートを押して入ってきた。


「レオ様に双月のケーキをご用意いたしました」


「え? どうして私が双月のケーキを好きなことを、ご存知なんですか?」


「それは、イザベラ様が教えてくださいました」


昨日だけど?

俺は首を傾げる。


「あいつは飛書《ひしょ》魔法を送ってきたんだよ」


公爵様が溜め息をつきながら言った。

両隣がそれぞれ笑いを噛み締めていた。


「飛書《ひしょ》魔法?」


「ん? ああ、魔力を使って届ける手紙のことだ」


「え? 使いの者ではなく、飛書《ひしょ》魔法で連絡がきたんですか?」


リックが驚いた声を出す。


「ああ。しかも、嫌がらせのように早朝にな」


公爵様は溜め息をつく。


「レオ様をご心配されてのことでしょう」


「心配無用じゃないか、まったく緊張してないぞ」


「作用ですね」


俺を見てフフッと笑うローウェンさん。


「せっかくですので、お茶を入れ直します」





優雅なお茶の時間は俺だけだった。

公爵様は、まずリックとエドガーからの報告を先にと言って、三人で話しだした。

俺は横目でそれを見つつ、耳ではしっかり聞いてチョコレートケーキを堪能していた。


双月のケーキは、マジで美味い。


「ほほ、美味しそうに召し上がりますね」


「ローウェンさんは食べないの?」


「私は仕事中ですので」


「双月のケーキは甘さ控えめで、とても美味しいですよ。ローウェンさんもぜひ食べてみてくださいね」


「ありがとうございます。そう致しましょう」


ここだけ和やかだ、しかし俺の出番はいつだ。

過保護な保護者が二人居るからね。



でも、観察していると、意外と公爵様は表情に出る。

このメンバーだからかも知れないけどね。


それと、リックは当然だけど、エドガーの報告もまとまっていて無駄がない。

ちょっと意外で驚いたのは内緒だ。


こっそり見ていたら、三人が一斉にこっちを見た。

?

首を傾げる。


「レオ様、お話を聞いていたのではないのですか?」


「ごめんなさい。考え事をしていました。それで、私に何か?」


「レオ、今ここで見せるか?」


「見せるって?」


エドガーが、苦しそうな何とも言えない顔をした。

それで分かった。


「お見せします。私の身体の状態ですよね?」


「ああ、すまないが見せてくれるか」


「はい、もちろんです」


「ローウェン」


「はい、レオ様。あちらへ」


ここじゃ、ないんだ。

ローウェンさんに案内され、俺は隣の部屋に移動した。

なるほど、窓がないんだ。


「レオ様は、本当に不思議ですな」


「そうですか?」


「子供らしいところも見受けられますが、この部屋に入った瞬間に観察をして、窓がないことで納得されておいででした。普通の子供はしないでしょう」


「そうかも知れませんね」


俺は否定も肯定もしないで答えた。


「その返答もですよ」


「私は私です。記憶はないですが」


ピタッと止まるローウェンさん。

報告を聞いていたよな?


「レオ様、失礼しますね」


「はい、お願いします」


ローウェンさんは、それから何も言わず俺が服を脱ぐのを手伝った。


表情を崩さないローウェンさんも俺の傷を見て一瞬、顔を歪めた。



「レオ様、皆様をお呼びいたします。れまで、こちらをお使いください」


そう言って、毛布で俺の身体を覆った。


「ありがとう」


「お待ちください」


そう言って隣の部屋へ出て行くローウェンさん。

ローウェンさんから見ても、俺の傷は酷いようだ。



小さな書庫の様な部屋は窓がないが、魔法の光が灯されていて部屋の中は明るい。

自動で灯りが灯ったのには驚いた。

それに、伯爵家とは違い本棚に埃が一切ない。


本棚には政治、経済、法律関係が多い。

その中にアルヴェイン帝国の本があった。

無意識に手を伸ばしかけた時、部屋の扉がノックされた。


俺は手を引っ込め、元の場所に戻り返事をした。


入ってきたのは公爵のみだった。


「私だけなのを驚かないね」


「いえ、驚いていますよ。ただ、すぐ納得しただけです。見ていないのは公爵様だけなので」


「本当に冷静だね。これでも私は恐れられているんだよ?」


「私は伯爵家に閉じ込められており、世間には疎いので」


「そうだったね。では、見せてくれるかな」


「はい」


俺は毛布を取った。

公爵様も一瞬、顔を歪めた。


「ここまでとは……、これを伯爵の息子がしたのか」


「そうですね」


「何でもないように答えるね」


「記憶がないので」


「本当にないんだね」


「はい」


「私が信じないとは思わないのかい?」


「必要ないですよね? 調査済みではないですか?」


「……そうだね。暴力の記憶はまったくないのかね?」


「地下室を出る前に一度だけ経験しました」


「経験ね……」


公爵は前髪をかき上げ、ボソッと呟いた。


「その時に呪いを入れられたのか」


「そうです」


俺と公爵はしばらく無言で見つめあった。


「はぁ、私は呪いを感じることは出来ない」


「好きに調べてください。そのために来ました」


公爵は俺をじっと見る。


「私が君を使って実験するとは考えないのかい?」


「あの二人が、公爵様の下で騎士をしています。私には、それで十分です」


「ハハ、あの二人を信用しているようだね」


「はい」


「私の騎士だ。私の命令に従う。君を無き者にするかも知れない」


公爵は静かに俺に言って、冷めた視線を向けてきた。

数秒見つめ返す。


「公爵様、そういう事をする人は面と向かった時は、とても優しく接するものです。公爵様のようには言いませんよ」


「……。はぁ、君のような子供ははじめてだよ」


「公爵様は、子供好きですよね?」


「そうかもね」


苦笑いをする公爵様。

そして、スッと真顔に戻り、俺の前に跪いた。


「レオ様、失礼しました。私も公爵として、自らレオ様のお人柄を確認せざるを得ませんでした。どうかご容赦を」


俺は固まって動けなかった。






読んでいただき、ありがとうございます。


次回 9/9 (水) 20時更新です。

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