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元刑事、異世界で真実に辿り着く  作者: 月乃音


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第62話 美少年と貴公子

着替え終えたので、オスカーさんと一緒に部屋を出る。

服が皺になるのが嫌なので、自分で歩いて行く。


久しぶりに歩く気がする。

エドガー、俺を抱っこしすぎじゃない?


階段をゆっくり降りて行く。

一階に着いて、食堂に入った瞬間に音が消える。


息を飲む者。

口をあんぐり開ける者。


素知らぬ顔でセドリックさんの席へ向かう。

オスカーさんが、さり気なく視線を遮ってくれる。


セドリックさんは、静かになった食堂が気になったのか振り向いた。

呆けた顔を一瞬したが、嬉しそうに笑った。


「レオ様、よくお似合いですね」


おや?

言葉遣いが普通だ。


首を傾げ、オスカーさんを見上げる。

オスカーさんは、少し困った顔をした。


何だろ?

反対側に首を傾げる。

苦笑いされた。


「レオ様、その仕草は外ではなさいませぬように」


「え?」


首を傾げそうになるも、思い留まる。


「よくできましたね」


ふふふ、と笑うオスカーさん。

思わず半目になってしまう。


「はぁ、そんなお顔も可愛らしいとは、反則ですな」


あ?

可愛らしい?


あ……。

ビジュアル、レオだった。

どうしても、俺の姿がレオの姿に変換されない。

周りを見ると、身悶えしている人が多数。

なぜ、男もいる!?


「……」


「レオ様?」


「何でもない」


気にするのはやめよう。

俺は俺だ。

じっと、セドリックを見ると、俺だけに聞こえるように少し屈んで小声で話した。


「親しい人しか、普段の姿は知らない」


「なるほど」


俺は頷いて姿勢を正す。


「セドリックさん、短い時間で、素晴らしい服を用意してくれた事に感謝する」


本当は頭を下げたいが、貴族だからな。

俺のほうが身分は上になる。

面倒くさい。


セドリックは立ち上がり、礼をする。


「お褒めの言葉をいただき光栄です。とてもお似合いです」


「ありがとう。とても着心地が良く動きやすい。それに、この刺繍は見事だ。」


「気に入ってくださり何よりです。レオ様、動きで問題ないか確認させていただいてもよろしいでしょうか」


「ああ」


俺はセドリックに言われたように動いて見せた。


「特に問題ないようです」


「旦那様」


「どうした?」


「レオ様の迎えが到着したようです」


「そうか。レオ様、この度は『シークレット・ローズ・ショップ』をご利用いただき、誠にありがとうございました。何かご入り用でしたら、お声をお掛けください」


「ああ、そうさせてもらおう」


「レオ様、あちらで騎士様がお待ちです」


「ありがとう。じゃ、またね」


セドリックに軽く手を上げる。


「またのご来店をお待ちしております。オスカー、お送りして」


「承知しました。レオ様、行きましょう」


俺は頷いて、オスカーの後に続く。

抱きつかれなくて良かった。


セドリックさんは外では紳士なんだ。

普段の姿は親しい人のみか。

この世界は確かに偏見多そうだ。



宿の入口に行くと、入口に騎士が二人、外には馬車と警護する騎士が四人もいた。

その中にはフェリクスさんがいた。


それよりも、目を引くのが入口にいる一人の騎士。

着ている服が間違っていますよ、と言いたくなるほどの貴公子だ。

格好良いけど中性的で美しく、顔だけ見ると儚くも感じる。

周りの女性の視線を独り占めだ。


なぜここにいるのかな?


俺は、もう片方の騎士へ視線を向けた。

リックだ。

髭を剃りさっぱりして、髪はオールバックにしていた。


めちゃくちゃ格好良いじゃん。

騎士服似合う。

いいな、俺も騎士服着てみたい。


「リック、お待たせ。髭がないとリック格好良いね。もう、髭伸ばさないでね。それより、リックは何歳なの? 髭がある時は30代ぐらいかと思っていたけど」


ショックを受けた顔をするリック。


「仕方ないでしょ。髭面だったんだし、それにリックは落ち着いていたしね」


「そうか」


「だいたい、エドガーも同じぐらいに見ていたよ」


「そうなのか?」


驚いた顔をして聞いてくるリック。


「え? だって、あんな髭面だよ? そりゃそうでしょ」


俺はリックと話しながら、外に向かう。

入口にいた、貴公子の前を通り過ぎる。

俺は小声でリックに聞いた。


「ねぇ、あの人、なんでここに居るの?」


「え!?」


「本当に騎士? すごく綺麗な人だよね。騎士してていいのかな、顔に傷がついたら大問題になりそうだけど」


リックを見ると、顔を逸らし手で口を押さえ、震えていた。


「リック? どうしたの?」


心配そうに見上げると、後ろを向かれた。


「ぶはっ」


馬車の方から、盛大に吹き出したのはフェリクスさん。

フェリクスさんを怪訝そうに見る。


「いや、レオ様、そ、れは……アハハ、アハハハ」


お腹を抱えて笑い出した。

他の騎士さんへ目を向けると、誰もが目を逸らし手で口を押さえていた。


なんで?

思わず首を傾げる。


貴公子を見ると、爽やかな笑顔から黒い笑顔になってる。

あれ?

あの感じどこかで……。


ゆっくりと、こちらに近づいて来る貴公子さん。

目の前で立ち止まる。


「レオ様、はじめまして?」


なんで、疑問なんだ?

んん?

この声、どこかで。

じっと見て考える。

本当に綺麗だな、この人。


あれ?

なんか怒っている?

次の瞬間に、頭をガシッと両手で掴まれていた。


「だ~れ~が、貴公子だ! だれが!」


「え? ええ!? うそ!? エドガーなの!?」


「どっからどう見ても、そうだろうが!」


「いやいやいや、全然面影ないよね? 一ミリもないでしょ!?」


「おい、喧嘩売ってんのか?」


「あんな、髭面からこんな貴公子になるなんて、想像できるわけないよ!」


「エドガー、レオそこまでだ」


リックからストップが入る。

リックが視線で周りを見ろと合図してくる。


ああ、人が集まりだしていた。

公爵家の馬車だけで十分目立っていたのに、俺とエドガーが口論をはじめたからね。


そりゃ美少年と貴公子だから、目立つな。

エドガーもサッと視線を巡らした。


「しまった」


ボソッとエドガーが呟いた。


「だね」


こちらを向き、何とも言えない顔をするエドガー。


「気づかなくて、ごめんね」


謝られるとは思っていなかったのか、一瞬固まり挙動不審になる。


「い、いや。俺も悪かった」


「よし、エドガーとレオは馬車に乗れ、出発する」


リックがタイミングを見計らっていたのか、ここぞと俺たちを馬車へ誘導した。


「いや、リック、お前が乗らないとダメだろ? 副団長なんだから」


すかさず、リックに反論するエドガー。


「だからだ、俺が外にいれば抑止力になる」


押し黙るエドガー。

いや、騙されちゃダメでしょ。

馬車だけで十分だよ。


「リック様、エドガー様、お話中に失礼いたします。こちらの馬車があるため、荷車が通れなく困っております。この時間は混み合いますので、ご配慮いただけますと助かります」


オスカーさんだった。

綺麗な声掛けと打診だ。

でも、俺には——

『何やっているんです。朝のこの時間は市民の仕事の邪魔です。早く出発しなさい』

という福音が聞こえた。


オスカーさん、強い。


「ああ、すまない。今、出発する」


その声を聞いて騎士たちが動いた。

フェリクスさんは馬車の扉を開け、俺たちに乗るように促した。


エドガーと顔を見合わせる。

お互い苦笑いして馬車に向かう。

エドガーが先に乗り、俺はフェリクスさんからエドガーに渡された。


いいけどね。

子供だからね。


馬車の扉が閉まると、二人で息を吐いた。


「しかし、気づかれないとはね」


「仕方ないでしょ」


「だが、髪や目の色で分からないか?」


「そこを見る前に、視界が顔で占領されるから無理だよ。その顔の印象は強いからね」


「そうかよ」


「まぁ、そんな顔でもエドガーはエドガーだけどね」


「そうか」


お、ちょっと嬉しそうに見える。

まぁ、気づかれなかったら、拗ねるよね。


「でも、エドガーはお父さんに似てないよね」


「ああ、俺は母親似だ。だから、余計に戻れと煩くてな」


「なるほどね。辺境伯は奥さんが大好きで、奥さん似のエドガーは、自分の側に置いておきたいと」


「そういう事だ」


「大変だね」


「……それだけか?」


「え? 他に何かある?」


「いや、何でもない。そうだな」


ふっと笑うエドガー。

機嫌は直ったようだ。

良かった。


「エドガー、どのぐらいで公爵家に着くの」


「20分ぐらいだ」


「結構かかるね」


「この時間は人通りが多くて、スピードが出せないからな」


「なるほど」


「それに、公爵家は南東で森と湖に近いから、ここからは距離があるんだ」


「え? 公爵様は王城で仕事してないの?」


「しているぞ、ああ、王城に仕事へ行く場合は裏門から入る。裏門には近いんだ」


「そうなんだ」


「ああ、有事の際も素早く行ける。王城に一番近いからな」


「なるほどね」




それから、エドガーの貴公子顔に慣れながら、公爵様の話を聞いた。

扉が軽く叩かれる。

窓を開けるエドガー。


顔を覗かせたのはリックだ。


「もう着くぞ」


「分かった」


「レオ、緊張……は、してないようだな」


リックが面白そうに笑った。


「そうだね、おかしいかな?」


「レオらしくて、いいだろ」


エドガーが言う。

俺らしいって、どういうことかな?


「そうだな」


リックにも即同意された。


二人とゆっくりお話が必要かな。








いつもお読みいただきありがとうございます。

楽しんでもらえたら嬉しです。


次回 9/2 (水) 20時更新です。

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