↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元刑事、異世界で真実に辿り着く  作者: 月乃音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/80

第61話 記憶の違和感

俺達は、あの後店を出た。

双月に寄る予定だったが、オスカーさんが手配してくれて、帰り際にケーキを渡された。

しかも会計済みだったようだ。


できる執事は格好良いよね。


そのまま、俺達は翼亭に帰り、イザベラさんにケーキの土産を渡した。

俺とエドガーは先に部屋に戻り、リックは飲み物を受け取ってから戻ってくる。


「なんか、濃い一日だったね」


「疲れたか?」


「ん~、少しは? でも楽しかったよ。なんか、久しぶりに色んな人に出会ったなって」


ピタッとエドガーが止まる。


「エドガー?」


「あ、いや悪い」


ジト目で見る。


「エドガー、また俺が? とか思ってない?」


目をそらすエドガー。


「あのね。それ考えるだけ時間の無駄だからね。俺が違うって言ったでしょ?」


「そうだな。悪…イタタ、ちょ、痛いって」


おもいっきり髭を引っ張ってやる。


「謝るのも禁止! まったく、世話が焼けるなぁ」


「こら、引っ張りすぎだ。言っていることと、やっていることが合ってないぞ」


「そう? 可愛がっているのに」


「どこがだ」


髭をさすりながら文句を言うエドガー。


「だって、今夜、髭そるんでしょ? 名残惜しんでいるの」


「それなら、なでればいいだろ?」


あ、気付いちゃった。


「それも、そうだね」


「お前、分かってやっているな、レオ」


ほっぺを、おもいっきり引っ張られる。


「いひゃい」


そこで、部屋の扉が開きリックが入ってくる。

目が合うと、呆れた顔をされた。


「お前ら飽きないな」


溜め息をつきながら言う。


「ほら、飲み物と、皿にフォーク持ってきたぞ」


テーブルに飲み物、皿とフォークを置いていく。


「エドガー、遊んでないでケーキをだしてくれないか。俺は疲れたからケーキを早く食べたい」


「珍しいな。お前が甘いものを食べたいなんて」


「お前が原因だろ? オスカーさんに、もう少し礼儀正しくしろよ」


きょとんとするエドガー。


「今更だろ?リック、その融通が効かないところ、治したほうがいいぞ」


「いや、普通のことだろ?」


リックは真面目だからな。


「騎士団長の世話係なんだから、もう少しゆるくしないとハゲるぞ」


「余計なお世話だ! お前も世話しろよ!」


公爵家の騎士団長、曲者っぽいな。

会いたくないな、面倒くさそう。


「あ、騎士団長は、今王都にいないから会わずに済むぞ」


エドガーが、俺の頬を突きながら言う。

顔に出ていた!?

思わず顔を両手で触る。


「くく、本当にそういうところは子供っぽいな」


リックに笑われる。


「だな」


「エドガー、早くケーキだしてよ」


ちょっと、むくれながら言ってしまった。

二人に笑われる。

子供っぽくなっているな。


「ほら、レオ」


俺の前に置かれた皿にケーキをのせてくれる。

リックと自分の分も皿にのせる。


「美味そうだな」


「ああ」


「うん、美味しそう」


三人の目がケーキに釘付けになる。


「食べるか」


「うん、いただきます」


一斉にケーキを一口、口に含む。


「ん~」


「美味い!」


「……」


リックが無言だ。

口にあわなかったのかな?


「これは、凄いな。チョコレートは甘さと苦みのバランスがいい。ベリーの酸味がちょうどよく加わり、濃厚なチョコクリームのアクセントになっている。この酸味のおかげで甘みが口に残らず重くならない。素晴らしいな」


目がキラキラしてる。

リックって、評論家っぽくなるのね。

美味しく感じたときだけなのかな?


チラッとエドガーを見る。

苦笑いして、肩をすくめる。

後で聞こう。

ちょっと、リックが可愛く見えた。


「本当に美味しいね。ケーキなんて久しぶりに食べたよ」


レオの記憶はないから、俺自身の記憶だがな。

いつだったか……。


あれは確か部長に呼ばれ、部屋に入ったらクラッカーで迎えられたんだよな。

33にもなって誕生……。

――いや、まて33ってなんだ?

俺は確か……。


「レオ、どうした?」


考え込んでいたら、エドガーが心配そうに覗き込んできた。


「大丈夫か?」


「口に合わないなら俺が…」


「食べるよ!」 


「はは、冗談だ」


リックが微笑ましそうに笑う。


「ちょっと考えたんだよ。前に食べたのはいつだったかなって、思い出せないけどね」


「……」


「……」


二人が黙り込む。


「今さらでしょ? 思い出そうとしたのは味だよ。双月のケーキ美味しいから、他の店のケーキ食べられなくなりそうだなって」


「ああ、確かに。間違いないな」


リックが頷く。


「俺も今までで一番美味いと思う。今まで食べたのは、美味いが甘すぎるんだよな」


なるほど、普通は甘みが強いのか。


「なら、双月一択かな。俺もこれより甘みが多いのはちょっと苦手かも」


「甘みが苦手なんて、子供らしくないな~」


笑いながら、頭をグリグリされる。


「ちょ、食べられない」


「お前ら、本当に飽きないな。まぁ仲がいいのは良いけど」


紅茶を飲みながら、呆れた顔をされた。


「羨ましいか」


エドガーがリックに言う。

チラッと見て、ふっと笑う。


「良かったな」


「……」


エドガー黙り込み、そっぽを向いた。

リック圧勝。





穏やかな時間が過ぎ、夕食の時間となった。

しかし、三人ともお腹が空いていないので、軽食にして部屋で食べた。

軽食とは思えないサンドイッチだったけどな。



エドガーとリックは、明日の早朝にそれぞれ家に戻り身支度をするそうだ。

だから、先にお風呂を済ませ、準備している。




俺は一人ゆっくりお風呂に浸かっていた。


「ふぅ~~、やっぱ、風呂は気持ちいいな」


浴槽の縁に首を乗せ、力を抜く。

ぼ~っと天井を見る。



お腹の黒ずみの変化はなかった。


「3週間あればいいな。美味しいものを食べよう」


今のうちに、好きなものを食べておこう。


「ケーキ美味かったな。また食べたい」


……そういえば、記憶にある誕生日の年齢は33歳だ。

それまで、俺は28歳だと思っていた。


「俺は何歳で死んだんだ?」


記憶が曖昧だ。

思い出した記憶以上のことは浮かばなかった。


「じいさんに聞いてみるか……」


ちょっと身構えてみるが、じいさんは現れなかった。


「俺も朝早いし、出て寝るか」




風呂から出ると、エドガーとリックもゆっくりしていた。

明日、公爵家から迎えの馬車が来るそうだ。


「え? 目立つじゃん」


「いいんだよ。抑止力になる」


「そうだな」



抑止力って、翼亭にいるだけでも十分じゃないの?

まぁ、おバカはいるか…、おバカは権力には弱いよな。


「ふわぁ~」


あくびが出た。


「今日は色々とあったからな、疲れただろう」


そう言って、俺の頭を優しく撫でるエドガー。


「うん、そうだね。もう、眠ろうかな」


「それがいい。俺らも寝るか」


「ああ、気疲れしたからな、休もう」


リックは、調整役だからね。

お疲れ様です。


「レオ、俺たちは朝早いから起こさずに出て行くから、ゆっくり休め」


「うん、分かった」


「明日、朝にオスカーが仕立てた服を持ってきてくれて、着替えも手伝ってくれるからな」


リックが教えてくれる。


「オスカーさんなら安心だね」


「セドリックも付いてくると思うぞ~」


あり得る。

いや、来るな。


「来そうだね」


思わず笑った。

その後は、少しセドリックさんの実家のことを聞いていた。


だけど、いつの間にか眠っていたようだ。




日が昇る前の早朝、エドガーとリックがそっと部屋を出ていくのに気づいた。


俺は安心のため、オスカーさんだけが部屋に入れるように結界を張って、眠りについた。





ざわざわと声がする。

騒がしいな。


「ちょっと~、なんで私は入れないのよ~」


「セドリックは当然として、どうして私も入れないんだい?」


「なぜでしょうね。では、私がレオ様を起こして、身支度をお手伝いいたしましょう」


あ~。

やっぱり、セドリックさん来ているね。

もう一人はイザベラさんね。



良かった。

オスカーさんだけ部屋に入れるようにしておいて正解だったな。



「さぁ、お二人とも静かにしてください。まだ、早いですからね」


オスカーさんが二人を嗜(たしな)める。


「入れないなら、しょうがないわね。私は仕事に戻るわね。セドリックも諦めな」


「はぁ、そうね。イザベラ、朝食お願いできる?」


「ああ、美味いもの食べさせてやるよ」


「いいわね。オスカー、レオをお願いね。私は下で待っているわ」


「旦那様、帰らなくてよろしいのですか?」


「なに言っているのよ。仕事で来ているのよ。最終チェックがあるんだからね」


「さようですか?」


「ちゃんと、仕事道具も持って来ているでしょう?」


手に持っている鞄を掲げる。


「さようですね。承知いたしました。着替え終わりましたら、お呼びいたします」


「お願いね」


「オスカー、朝食を部屋に持って行かせるから、着替える前にレオと一緒に食べとくれ」


「ありがとうございます」


二人がドアから離れて行った。

オスカーさんが部屋に入りドアを閉める。



荷物を置く音がした。

俺に近づいてくる足音が、ベッドの横で止まる。


「レオ様、もう起きてもよろしいですよ」


「……」


起きていたの、バレてた。



「おはよう。オスカーさん」


「おはようございます。レオ様」


やっぱり、ただの執事ではなさそうだ。



起きて身支度をした。

その後は、オスカーさんと優雅な朝食時間。



「レオ様、こちらになります」


オスカーさんが箱を開けて見せてくれた服。


思わず息を飲んだ。

昨日見たのはレオの瞳と同じサファイア色の服だ。


今、目の前にある上着は、袖と立ち襟部分から縁が、金と銀の刺繍で飾られていた。

派手さはなく品よくまとめられていた。


そっと手を伸ばす。


「綺麗ですね。でも昨日は刺繍なかったのに」


「それが、セドリック様の固有スキルですよ」


「これ、魔法なの?」


「さようです。セドリック様は複数の針で刺繍を同時に行うことが出来るのです」


「……すごいですね」


「ええ、とても素晴らしいです。セドリック様は、ああ見えて魔力操作がとてもお上手です」


刺繍をまじまじ観察する。

この刺繍を複数同時にか。


「感想は、セドリック様に直接おっしゃってください」


「うん、そうするよ」



オスカーさんに手伝ってもらい、着替えた。

窮屈かと思っていたけど、とても着心地がよく動きやすかった。



「とても良くお似合いです」


「ありがとう」



浴室の鏡で見てみた。

つくづく、レオは美少年だ。

王子と言っても過言ではないだろう。


瞳と同じサファイアブルーの服がよく似合う。

そして、金色の刺繍がレオの金髪とお揃いで、とてもまとまっていた。


「……」



これ、下に降りて行って大丈夫かな?

エドガーいないから防波堤がない。


オスカーさんに直接お礼を、と言われたばかりだしな。

抱きつかれない?

セドリックさん、力強そうなんだよね。





いつもお読みいただきありがとうございます。

楽しんでもらえたら嬉しいです。


次回 8/29 (土) 20時更新です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。