第6話 動き出す計画
「ま、魔物?」
魔物って、漫画やアニメで言う “あの魔物” であ合っているのか?
というか、本当に魔物なんているのか。
「え?ここから別館への道に、魔物って出るものなのか?」
「本来は深い森に住んでおります。レオ様、魔物のこと少し説明いたしましょう」
「頼む」
そこから、ロベルトの簡単な魔物講座で知識を得る。
「なるほど、魔素の濃い森ほど強い魔物が出ると」
「さようです」
「この周辺は魔素があるのか……」
「いえ、ございません」
「じゃ、なんでいるんだよ!」
「ご説明すると長くなり、少々お伝えしづらいのですが……」
「短く簡潔に、気にせず教えてくれ」
「承知致しました。別館はレオ様と母君のサラサ様がお過ごしでした。サラサ様は従魔を連れておられました。その従魔の庇護を受けるように、弱い魔物たちが周りの森に住まうようになったのです。ですが、サラサ様亡き後、従魔の気配は消えました。それにより、弱い魔物を捕食する魔物達が訪れ、今に至ります」
ツッコミどころ満載だな!
だが、俺は聞き流す。すごく気になるけど、今は聞かない。
「あ~、そうか。うん、分かった。それで、今いる魔物の強さや数は?俺達と協力者で抑えられるか?」
「……我々は問題ございません」
含みのある言い方だな。
「我々は、ね。傭兵だと対処できないから、猟犬を置いていると?」
いい笑顔で頷くロベルト。
「ふぅん。猟犬を取り上げ、武器も没収すれば、奴らは別館には行けないのか。でも、それだけだと弱いな」
「猟犬は始末しないのですか?」
「犬に罪はないだろう。笛で言うこと聞くんだろ?」
「まぁ、そうですな」
「傭兵の無力化か、人質の安全確保後に考えていたが、この案だと同時にする必要があるな。しかし、猟犬や武器を補充されたら終わりだ。別館にずっと人数を割いていられるか?」
「いえ、無理ですな」
「本館で証拠集めしたいから、無力化は必要だ。ロベルト、傭兵七人はずっとここにいて、外出はしないのか?」
「常時、別館に二人、こちらに二人はおります。後の二名は交代要員で、一人は伯爵と行動を共にしております」
「なるほど、協力者は何人になる?使用人全員なのか?あと、外部にもいるのか?」
「使用人は全員協力者ですが非戦闘員が多いです。外部の協力者もおりますが、私が把握しているのは、情報のやり取りしております一人です。それ以外はハワードに確認しないと人数は分かりかねます」
「ハワード?」
「申し訳ありません。ハワードは騎士団長です。常駐している騎士は七名。荒事を実行するのはこの者達と、私にレオ様となります。まぁ、レオ様は魔法が使えるようになれば、の条件付きとなりますが」
「騎士七名か、意外に少ないな」
「そうですな。ですが問題ありません」
「なぜだ?……いや、正確な人数を知らないだけで、外にそれを補える戦力があるんだな?」
ニコリと笑うロベルト。
「それは、ありがたい。ありがたいが、外の仲間は俺を逃がした後の世話役だったのか?違うか?」
「どうですかな?」
片眉をあげて、明確な答えを避ける。
「正解だな」
ニヤリと笑い返す。
「早々にハワードと話をつめて欲しい。外の協力者の人数と、いつ頃決行可能になるか。人質の人数に、可能なら別館のどこに捕らえられているか。後は使用人の人数だな。他は伯爵と息子のダリルだっけ?ん?伯爵の奥さんは?」
「はい、そのように。奥様はサラサ様が、こちらに来られる前にお亡くなりになっております」
「そうだったのか。あと、気を悪くしないで聞いて欲しい。味方の中に裏切り者はいないか確認して欲しい」
「お気になさらず、こちらも目を光らせております。ご安心を」
「さすがだな。さて次の課題だ。伯爵は、騎士より傭兵を重宝させている事実。これは騎士が一緒に行動できない、もしくは騎士を連れていけない場所に伯爵自身が出入りしていて、後ろ暗いところがある。そうだな?」
固まっているロベルトをそのままに続ける。
「ここからは感だが、財政悪いだろ?ロベルトとモニカの服、綺麗にしているが、古くないか?要は使用人の服も用意できない、もしくは、その金を別に使い込んでいる。なら他の経費も使い込んで……。こういう連中は金の亡者だからな。うまい話に乗って使われているんだろ?」
「……レオ様、あなたは一体何者です?」
まぁ、そうなるよな。
だが、この家を放置する方が問題だ。領民が居るならなおさら、伯爵家には消えてもらう。
そのためなら、能力の出し惜しみはなしだ。
「俺は俺だとしか言えないな。信用できないか?」
「いえ、そうではありません。ただ、レオ様とは違いすぎて……」
「そうか……。だが、今は受け入れて欲しい。伯爵を追い込むためには、ロベルトや他の者の協力が必要不可欠だ」
「それは、もちろんです」
「ありがとう、助かるよ。話の続きだが、伯爵が手を染めている悪事の証拠が欲しい。それに、伯爵が切り捨てられる前に、黒幕につながる証拠も見つかればいいが……。ん?誰に証拠を渡せば伯爵は罰せられる?」
「……。変なところが抜けていらっしゃいますな。罰することが出来るのは国王様になります。ですが、我々が直接証拠を提出するのは難しいです。私達の計画ではお家騒動を起こして、王家まで届くように計画を立てておりました。今回の計画ではその手は使えません。あまり気のりしませんが、ツテを頼りましょう」
どれだけ、物騒な計画を立てていたんだ!?
「ロベルトのツテ?」
「ええ、正確に言うと私と騎士団長ハワード、二人のツテになります。面白いことが好きな御仁なので、この時期なら乗ってくるでしょう。まぁ、絶対に協力させますので、ご安心ください」
執事ロベルトが真っ黒だった。
「う、うん。お願いします」
「確約が取れましたら、お知らせいたします。証拠については、伯爵が隠しそうな場所の見当は付いております。探すのは容易いかと」
「はは、さすがだな。黒幕につながる証拠もあればいいけど、探すときは俺も加わる」
「レオ様も?」
「そうだ。証拠は俺が持っていくのが筋だろ?どんな証拠があるか把握しておかないと。あれ?……俺一応伯爵家の人間だよな?籍入っていないのか?」
「籍に入っております。レオ様は伯爵家の次男となります」
「嫌だけど、俺が行くしかない。ダリルも罪を犯しているだろうし。そうすると、俺しか残ってないだろ?騎士やロベルトにまかせては意味がない。違うか?」
「確かにそうですが……」
「それに、今の俺なら問題ないと思わないか?」
ニヤリと笑う。
「それも、そうですな。大人としては立つ瀬がないですが、身分ですと適任はレオ様になります」
「おぅ、任せろ」
「今のレオ様、色々知っている大人のようですな」
「ハハハ、こんな見た目の大人がいるか?」
乾いた笑いになってしまった。
執事怖い。
「いませんな」
「俺のことはいいだろ。そうだな、協力者への打診と、ツテへの連絡、協力が得られたとして、いつ動けるか、逆算して計画を立てないと。失敗ないように皆の安全を考えて、隙なく的確に動けるようにしたい」
「承知しました」
「人質救出、傭兵を無力化した後に、証拠の確保の順になるか。あ……」
「どうされました?」
「伯爵とダリルを確保するタイミングはどうする?傭兵と同じに確保して、別々に閉じ込めるか。だが、あまり長期間閉じ込めるのは危険だろう」
「ええ。実はもうすぐ伯爵とダリルは王都へ向かいます。そのときに、傭兵も二名は同行します。出発後に動くよう計画を立てましょう。伯爵一行は王都で捕らえる方向で、日程を確認いたします」
「いいタイミングだが、数日で戻って来たりしないか?」
「問題ありません、ダリルが学園に入学する準備で1ヶ月は戻りません」
「それなら、問題ないな。というか、元の計画を、その期間で動くように準備していたな?」
「さすがレオ様、鋭いですね」
「いや、これは分かるだろ。今までの俺の発言必要だったか?だが、それなら計画も早く無駄なく出来るよな?」
「藪蛇でしたか」
「いい誤算だったよ。これで、モニカも安心できるだろう」
「モニカですか?」
「あ、そうだった。今日、いや昨日?傭兵がモニカに言ったのを聞いた。3ヶ月後楽しみだと、伯爵の後に可愛がってやる。ってな」
「ロベルト、何か知っているよな?」
「存じております」
苦い顔をして答える。
「その3ヶ月後は絶対に来ないって、モニカに伝えた。その通りになるな」
「レオ様には、かないませんな」
お互い笑い合う。
「違うよ。ロベルトや皆のおかげだ。元々、俺を助けるために準備してくれていたから、良い計画ができる。俺一人では何も出来ないよ。だから一緒に最高の勝利を掴もう。ほとんどの準備をロベルトに任せることになるが、よろしく頼む」
「おまかせを。ですが、その前にレオ様。魔法を勉強するお時間ですよ」
「お、おぅ」
なんか、めちゃくちゃいい笑顔だな?
怖いです……。
「レオ様は賢いので、すぐ理解されるでしょう。時間がありません、早速始めましょう」
プレッシャーがすごい!
「お手柔らかにお願いします」
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次回 2/21(土) 20時更新します。
『第7話 暴走する炎』も、よろしくお願いします。




