↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元刑事、異世界で真実に辿り着く  作者: 月乃音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/80

第53話 翼亭

王都に無事入ることができた。

でも、今度は宿泊場所で揉めていた。


今日から泊まる宿屋の件で、フェリクスさんとリックが話し合っていた。


「こちらの指定の宿に宿泊して欲しい。安全を考慮している。分かるだろ?」


「お前の立場も分かるが、こちらとしては無理だ」


「リック、お前が断るなよ~」


「俺なら、いいのか?」


エドガーが参戦する。


「いいわけないだろ!?」


「頼むよ、俺の顔を立てると思って、な?」


エドガーとリックが顔を見合わせ、悪い顔をする。

その二人の顔を見て、顔を引き攣らせるフェリクス。


「悪いな、フェリクス。もう宿を取ってあるんだ」


「は? 今着いたばかりだろ?」


「連絡が取れるんだよ。俺はな」


「は? 連絡が取れる? そんな宿……まさか?」


「ふふ、そのまさかよ」


「イ、イザベラさん!?」


「そんなに驚くのかい? 酷いじゃないか、フェリクス」


セクシーなお姉さんが急に現れてた。

モデルのような長身でスタイルがいい。


「そんなに怯えないでよ」


フェリクスの肩に手を置き、もう片方の手の指で、フェリクスの顎クイである。

色気が半端ないな……。


「イザベラ、あまりからかうな。フェリクスは、お前の様な奴には免疫がないんだ」


「失礼しちゃうわね。せっかく迎えに来てあげたのに、ねぇリック。エドガー、酷いと思わない?」


「そう言われても、そのとおりだし」


「リックまで」


「早く離れてやれ」


「え~、面白いのに」


「アークに言いつけるぞ」


「ふふ、そんな狭量(きょうりょう)じゃないわ」


エドガー、リックは美人さんのイザベラさんとは知った仲のようだ。

だが、フェリクスさんは、本当に免疫がないようで、顔が真っ赤だ。


「フェリクス、俺が取った宿は、こいつのところ翼亭(つばさてい)だ」


「そういうことなの。あなたが心配することは一つもないわよ」


フェリクスから離れず、顎を指でくすぐるイザベラさん。

完全に遊んでいるな~。


「翼亭がダメなら、ここでイザベラと交渉しろ」


目を白黒させて動揺するフェリクス。


「ふふ、良い子のフェリクスは、そんな交渉しないわよね?」


「は、はい!」


「いい子、公爵には私から手紙を書いてきたから、これを渡してね」


そう言って、ウィンクしてフェリクスから離れ、手紙を腰につけていた鞄から取り出して、フェリクスの手に握らせた。

なるほど、ここまで読んでイザベラさんをエドガーは召喚したのね。


「なるほど」


つぶやいて頷いていると、イザベラさんが俺に目を止めた。


「その子がエドガーの秘蔵っ子ね。私は、」


「近づくな」


「え、酷い。ここまで迎えに来させておいて」


「宿に入ってから、アークと一緒に紹介する」


唇を尖らせるイザベラさん。

美人はどんな顔も絵になるな。

イザベラさんはエメラルドグリーンの瞳に、緩くウェーブがかかった長い黒髪を、ポニーテールにしていた。


「イザベラ、宿で頼む」


リックが割って入る。


「リックちゃんが言うなら、しょうがないわね。分かったわ」


リックちゃん。


「ふふ」


思わず笑いが漏れてしまう。


「イザベラ、俺は副騎士団長なんだ」


「あら、ごめんね。ついクセで」


軽くウィンクして、小さな舌をぺろっと出すイザベラさん。


「は~、次からは間違えないでくださいね」


頭を掻きながら言うリック。


「は~い、じゃ行きましょう」


「ああ、そうだな」


「俺はフェリクスを正気に戻してから行く」


「ああ、しかし毎度だな」


「だな、いい加減免疫ができていいと思うが、こればかりわな。じゃ、後でな」


リックは軽く手を上げて、フェリクスさんを引っ張って行った。

なんかフェリクスさんて、憎めないな。


リックを見送り、イザベラさんが歩き出した。

それに少し離れて後を付いて行くエドガー。


南門から真っ直ぐ大通りを歩いていく中で、エドガーが離れた理由が分かった。

イザベラさん顔が広いし、目立つ!

美人で長身だから、だけでなく存在感が半端ない。

この人、まったく隙がないことに気づいた。

あの雰囲気に飲まれて気づかなかった。

恐るべし、色気。


「イザベラさん! 珍しいですね、こんな時間に」


「ああ、ちょいと野暮用でね。あんた達は今からギルドかい?」


「はい! 依頼完了の報告に行きます」


「そうかい、頑張っているみたいだね。だが」


「「初心を忘れずに!」」


ふっと、優しい笑みを見せるイザベラさん。


「ああ、その通りだ。しっかりやりなよ」


「はい」


「ありがとうございます」


女の子3人のパーティだ。

一言も喋らなかった子は、最後にペコリと頭を下げて、先の二人に続いて去っていった。


「あの子達、冒険者なの?」


「ああ、そうだな」


「イザベラさんって、宿屋の人なんだよね?」


「ああ、今はな。後でちゃんと紹介するからな」


「分かった」


どうやら宿に着くまでは教えてくれないようだ。

それからも、数組の冒険者たちに声を掛けられ、笑顔で答えるイザベラさん。

十中八九、元冒険者だろうな。

後輩の面倒見が良いのだろう、とても慕われていた。


「あれが冒険者ギルドだ」


エドガーが教えてくれる。

大通りの市場の混雑を抜けて、大きい建物が目立つ。

そのひとつが冒険者ギルドのようだ。


「大きいね」


木造だが、3階建ての建物だ。


「まあな、3階は初心者用の宿泊施設になっているんだ」


「へぇ~、そうなんだ」


見学したいが、ぐっと我慢する。

その後は、商業ギルドもあった。

南門が玄関口のようだ。


噴水の広場に着く、そこから王城が見えた。


「大きいお城だね」


「ああ、見るの初めてだよな」


「うん」


目を見張っていると、笑われる。


「はは、これより帝国の城の方がデカいぞ」


「そうなの? エドガー帝国に行ったことあるの?」


「ああ、一度だけな。着いたぞ、翼亭だ」



噴水広場から左に入って、最初の路地を過ぎたところに翼亭はあった。

入口の扉は、今は開けられていた。

一階が食堂にもなっているようで、賑わっていた。

扉の上には木の看板があり、翼と剣の絵と一緒に翼亭と書かれていた。


かなり立地がいいな。

この場所で宿をやるって、相当なんじゃないか?


イザベラさんが、チラッとこちらを見て視線で方向を指した。


「裏口から入れだとさ、まぁ、この時間だから仕方ないな」


ちょうど仕事を終え帰ってくる時間のようだ。

入口を通り過ぎ、大通りから右の脇道に入る。

次の路地で右へ曲がると、イザベラさんが扉を開けて待っていてくれた。


「すまん」


「ありがとうございます」


「ようこそ、翼亭へ」


中に入ると、温かいオレンジの光が入口を照らしていた。

普通に玄関のようだ。

キョロキョロしていると、イザベラさんが笑った。


「こっちは、私ら夫婦の家の玄関なんだ。宿と繋がっているが、入口は別にしているんだよ」


「悪いな、こっちから入らせてもらって」


「かまわないさ。まず、旦那を紹介させてもらおうかね」


「ああ、そうしてくれ」


玄関から廊下を進み、ドアを開けると、広いリビングだった。

そこのソファーに座っていた男性が立ち上がる。


「おかえり、イザベラ」


「ただいま、アーク」


軽い包容と頬にキスをする二人。

外国の習慣と同じなのか、日本人の俺には見慣れない光景だな。


「よう、エドガー久しぶりだな。また、似合わない変装しているな」


「うるせーよ。久しぶりだ、今回は世話になる」


お互い軽く包容、俺がいるからね。

その後、ガッチリと握手を交わす。

旦那さんとのほうが、仲が良いみたいだ。

エドガーより背が高い、リックと同じぐらいかな?

体格は二人よりガッチリしている。


「この子か」


「ああ、レオ。アークだ。元Sランク冒険者で、今はこの翼亭の主人だ。で、迎えに来てくれたイザベラで、アークの妻。イザベラも元Sランク冒険者だ」


Sランク冒険者、隙がないはずだ。

唖然としていると、エドガーに頭を突かれる。


「あ、はじめまして、レオです」


そう言って外套のフードを取る。

二人の目が大きく見開かれる。


「これは、大変だな。ここでは、安心してゆっくり休めるからな」


アークさんはそう言って、オリーブグリーンの瞳を優しく細めて、俺の頭をそっと撫でる。

焦げ茶の短髪で迫力あるが、穏やかな人柄のようだ。

それより、気になるのはイザベラさん。

俺を見てから、無言で固まっている。


「エドガー?」


心配でエドガーを見ると、達観した目をしていた。

アークさんを見ると苦笑いをしている。

なんか、嫌な予感。


「ん~~~か、可愛い~~~~!!」


俺をエドガーから奪い去り、ギューと抱きしめてくるイザベラさん。

ちょ、胸が、苦しい!

更に力が強まる。

窒息する!!


「ん~!う~~~」


ジタバタすると、アークさんがイザベラさんを後ろから拘束。

その隙に、エドガーが俺を取り戻す。


「し、死ぬかと思った」


「悪いな、イザベラは可愛いものが好きなんだ。で、これを止められるのはアークしかいない」


なるほど、だから紹介はアークさんと一緒にするって、言ったんだ。

こうなると分かってたのね。


「大丈夫か、レオ」


アークさんが、イザベラさんを押さえながら声を掛けてくれる。


「はい、なんとか」


「悪いな。普段は面倒見のが良くて、優しくて、頼りになるんだが……。これだけは、どうしても直らないんだ」


なんだろう、惚気を聞かされたのかな?

そんな、アークさんの言葉など耳に入ってないイザベラさん。


「もう少し~、いいじゃな~~い。減るもんじゃないし。ね? レオ? もう1回、お姉さんに、ぎゅー、されたいでしょ?」


ウィンクしてくるイザベラさん。


「遠慮します」


つい、即答してしまう。


きょとんとするイザベラさんと、アークさん。

なんで、アークさんまで?


「?」


二人の反応がわからず首を傾げて、エドガーを見上げる。

俺のその視線を受けて、苦笑いのエドガー。


「レオが、イザベラのウィンクを受けても、顔色変えずに即答したからだ」


「え? なにそれ? 普通だよね?」


「「普通じゃない!!」」


ハモる夫婦。

仲良いね。


いつもお読みいただきありがとうございます。

王都での宿が決まりました。

これからも楽しんでいただけると嬉しです。


次回 7/31 (土) 20時~22時に更新します。

よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。