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元刑事、異世界で答えに辿り着く  作者: 月乃音


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第3話 思い出した名前

気づくと夜桜を眺めていた、綺麗だな。


「冷えるな。神崎、寒くないのか?」


聞き覚えの声に振り向く。

屋上に居た男に声をかけ、横に並び桜を見て話をしている。

あれは、白井警部と……俺!?

俺だよな、どうなっている?

俺はここに……、自分を見ると透けていた。

状況を飲み込めずにいると、スマホの着信音が響いた。

意識が二人に向く。


「待て!神崎!」


走り出した俺に、待ったをかける警部。

俺は声を無視して屋上から出ていった。


……知っている、俺はこの場面知っている。

この後、俺は……。


場面が切り替わる。


「そいつです!」


声が響く。

そこには横断歩道へ急ぎ、男と少年の間に入る俺がいた。


間に入ってはダメだ!避けろ!!

次の瞬間、スローモーションのように倒れる俺を見る。


あ、あぁ……。俺は、ここで……。


ズキリと頭が痛み、酷い頭痛に耐えられず意識が途絶える。



*******************



なんだか暖かく心地がいい、意識が浮上する。


「目覚めたか、大丈夫かの?神崎悠人(かんざきゆうと)、本当に申し訳なかった。あの者に記憶が封印されていたのを、解除した。徐々に記憶は戻るからの」


なんか、じいさんの声が聞こえる。

記憶……。

俺は、あぁそうだ。俺は神崎悠人。

刑事で、あの日あの場所で刺されて……。


「うむ、悠人の人生に加え、こちらの世界まで……。見つけるのが遅くなってすまなかった」


……誰だ?


「うん?私は神じゃよ。そうそう記憶の封印を解いたからの。能力も解放されて、使えるようになっておる。使い方も自然と分かるはずじゃ、」


「ちょと、待て待て」


思わず口を挟む。

俺を置いて話を進めるな。

頭がついていかない。


「起きたか。良かった」


「ん? あぁ」


目を開けると、薄暗いあの部屋だった。

夢じゃないのか……。

しかし、こちらが現実だと言い切るには、曖昧すぎる。

確かなのは、今は俺が少年としてここに居ることだ。


頭を整理していると、すぅ~と、目の前に光の玉がやってくる。


「うわ!」


思わず、飛び起きて壁際に身を寄せる。

ひ、人魂!?


「む、驚かせたかの、すまない」


光の玉が弱々しく光、揺れる。


「さっきから勝手に話していた、じいさ……いや神様なのか?」


「そうじゃ」


光が先程より明るくなった。


「は、はじめまして」


「いや、会っておるぞ。あぁ、思い出さなくても良い。多くを一度に、思い出そうとすると体に負担がかかる。焦らずとも良い」


「わかっ、分かりました」


「ほほ、普通に話して良いぞ」


「そうか、助かる」


「順応早いの~。まぁ良い。む、もう時間がないようじゃ、その前に怪我を治しておこうかの、傷が見るに耐えん」


「まった、傷はこのままでいい。体内、内傷だけ治して欲しい。傷は証拠になるからな。後できたら筋肉つけられないか? この体、貧弱すぎる」


「ほぉ、傷を証拠に。面白い、あい分かった。筋肉は無理だの、魔法を使うと良いの。

色々考えておるようだ、好きにするが良い。だが、子供では出来ることが限られる。そこでじゃ!そなたの味方になる者に啓示をしておいたぞ。神の啓示じゃ、心強いであろう」


光の玉が膨らみ、クルクル回る。

うん、胸を張っているのが想像つく。


「ありがとうございます」


「うむ。また様子見に来るからの。落ち着いたら、この世界を楽しんでくれると嬉しい。ではの」


そう言い残して、光の玉は消えた。

部屋は一瞬で暗くなり静かになった。


「俺は、神崎悠人……。刑事で……」


走馬灯のように見た最後を思い返す。

細かいところは、まだ思い出せない。


「……犯人は逮捕できただろうか?」


自分の最後をダイジェスト版で見るとはね。


「本当に、あれで最後なのか……」


無意識にもれた言葉に、悔しさ、怒りに悲しみが渦巻く。

涙腺が緩み、顔を上げる。


「柄じゃねぇな」


過去は変えられない、感傷に浸っても無意味だ。

暗い天井を睨みつけ、感情を押さえつける。


「よし、問題ない。じいさん魔法使えって言ったな」


筋肉は無理らしい残念だ。

ここの件が片付いたら、地道に鍛えよう。

問題は魔法だ。


「どうしたら使える?」


自然と分かると言っていたが……、まったく分からん。

どうしたものかと悩んでいると、遠くから足音がした。


静かに毛布を被り横になり、足音に集中する。


あぁ、モニカか。昼間より足取りが慎重になっているようだ。

体から力が抜ける。


小さなノック音がした。

短く返事をすると、静かに鍵が開けられモニカが入ってくる。


「お待たせ致しました」


「大丈夫だ。そっちこそ問題ないか?」


「はい、問題ありません。まず、お話の前に、お食事の準備致しますね」


そう言いながら、何もないところから机や椅子を出す。


「は?」


ご丁寧にテーブルクロスまで掛ける。

そこに、これでもかと食事が用意された。


「お坊ちゃま、お召し上がりください」


やり切ったという笑顔で言われた。

反応できず固まっている俺を見て首をかしげる。


「記憶が戻られたと伺ったのですが……」


は?……誰からだよ!


「私に、ライガード神様より啓示があったのです!」


俺の心を読んだのか?

というか、目をキラキラさせて、手を組むなよ。


「ライガード?」


じいさん?


「レオお坊ちゃま!ライガード神様を呼び捨てなど、不敬ですよ」


ずいっと寄って言い聞かせてくる。


「す、すまない」


後ろに仰け反りながら言う。


モニカはハッとして、誤魔化すように咳払いをする。


「い、いえ。失礼致しました。坊ちゃま」


「モニカ、その坊ちゃまと呼ぶのは止めろ。名前でいい」


「承知致しました。レオ様」


様もいらないが、まぁいいか。ここは身分制度ありの世界のようだしな。

面倒くせぇ。


「ああ、それでだ。啓示をどう受けたかわからないが、俺は徐々に思い出すと言われている。それに、急に思い出そうとすると、体に負担がかかるそうだ」


「さようですか、申し訳ありません」


じいさんが言い忘れたか、俺の記憶が戻ると言われ、舞い上がり聞いてなかったか。

モニカは……、後者だな。


「気にするな。せっかく用意してもらって悪いが、今の俺は水分しか取れないぞ」


「いえ、それは大丈夫です。ライガード神様が、坊ちゃ……レオ様のお体を治す時に、召し上がれるようにされたとの事です。体力が付くような食事を用意するようにと、ご指示を頂きました」


聞いてねぇぞ!食えるなら教えていけよ、じいさん。大事なことだぞ!


「初耳だ。そうか、食べられるなら、モニカも一緒に食べよう」


「いえ、食事は済ませておりますので」


「そうか。なら飲み物と軽いものだけでも摘んでくれ、一人の食事は味気ないからな」


モニカは、ハッとした顔をして、何とも言えない表情をする。


「では、お言葉に甘えてご一緒させて頂きます」


優しい笑みを見せた。


「ああ、食べながら話そう」


そう言ったのだが、どうやら想像以上に腹が減っていた様だ。

食べ始めたら止まらず、視線に気づいたのは食べ物がなくなってからだ。

唖然と俺を見ていたモニカと視線が合う。


「す、すまない」


「ふふ。大丈夫ですよ。驚きましたが、召し上がれて良かったです。まだ、出せますよ。」


優しく微笑み、慈しみの目線を向けてくる。

止めろ!恥ずかしい。赤面しているのが分かる。

少年になっているからなのか?

そうだ、きっとそうに違いない。


「いや、もう大丈夫だ。何か飲み物はあるか?」


「はい。お茶をお入れしますね」


「ありがとう」


時間が過ぎたが、お茶を飲みながら話すことになった。

お茶は紅茶だった。一口飲んで息をつく。


「先程から物を出し入れしているのは、やはり魔法なのか? 魔法に関して、まだ記憶が戻ってなくて。そもそも俺は魔法を使えるのか? 使っていたか知っているか?」


「レオ様は魔力をお持ちですが、その教育を受けておらず……」


モニカは言いにくそうに言葉を濁す。

なるほど、この環境ならあり得るか。


「そうか、気にしなくていい。モニカの知っている俺のこと教えてくれるか? それに、この家のこと、モニカ自身のこと、またモニカと同じ状況に居る者達のことを詳しく」


モニカは息を飲み、神妙に頷く。


「分かりました。私が知る限り全てお伝えいたします」


「ああ、頼む」














ここまでお読みいただきありがとうございます。

もし少しでも楽しんでいただけましたら、

評価やブックマークで応援していただけると嬉しいです。


『第4話 すべて話してほしい』も、よろしくお願いします。


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