第23話 思いを一つに、前へ進む
グレン様をじっと見つめる。
「ん?どうしたレオ」
「えっと、すごいなって」
「ガハハハ、そうだろう、そうだろう。俺はすごく強いぞ!」
「そ、そうですね」
呆れ声で返すも、グレン様は上機嫌。
本当に、色んな意味ですごいな。
咳払いするロベルト。
「片付けの目処が立ったので、ハワードには傭兵の監視、尋問をお願いしました。私は使用人たちに指示を出し、別室にてグレン様に全容をご説明しておりました。それで、レオ様の事になり、別館の話をしたところ……。突然立ち上がり、2階の窓から飛び降りまして、現在に至ります」
なるほど、グレン様にも困ったものだな。
ニッコリ笑う。
「そうか。ロベルト、破損の修理にかかる費用の見積もりをお願い。できたらグレン様に渡して」
「承知致しました」
「レ、レオ?」
「グレン様、本館のことロベルトに注意されたよね? なのに、熱も冷めないうちに、また同じことしちゃったの? どうして? ダメだよね」
「う、うむ。すまない」
しょんぼりするグレン様。
「私を心配して行動した結果だと思うので、弁償だけで許してあげます」
「う、うむ」
「ですが、次はないですよ? 所構わず破壊したり、物を壊しちゃダメですよ」
「うむ。気をつけよう」
「はい、お願いします。でも、グレン様」
手を伸ばしグレン様の腕に触れる。
すごい筋肉だな。
「心配してくださり、ありがとうございます。すごく嬉しいです」
笑顔で言う。
すると、効果音付きでパアーと、いい笑顔になる。
何故か、めっちゃ尻尾を振っているように見える。
大型犬だね。
「その、レオ。私と話すときも普通で良い。敬語なしでかまわん」
「え?」
「レオ、無意識か? 親父と話すとき敬語になって、俺も私になっていたぞ」
目上に対するクセがでたのか。
「気づかなかった。グレン様、いいの?」
「ああ、その方が良い」
嬉しそうに笑うグレン様。
「ありがとう。グレン様」
「うむ」
「これからの皆の予定は?」
「ああ、そうだな。引き続き頼めるか?」
俺の質問にエドガーが答えてくれる。
説明は苦手のようだ。
ロベルトが頷く。
「この後ですが、人質を本館に移します。お昼前に、迎えの人員がこちらに参ります」
「捕らえている者達はどうする?」
リックが名前を出さず聞く。
「地下牢は傭兵がおりますので、地下室にとりあえず移しましょう」
「ロベルト、俺がいた地下室は使うの止めて欲しい」
「理由をお伺いしても?」
「こちらに調査が入る場合に備えて、あのまま保管しておきたい」
「……承知致しました」
「ロベルト、後でその部屋を俺達に見せてくれるか」
リックも頷く。
「私も同行させてもらおう」
グレン様も乗ってきた。
「え、三人とも別に見る必要は」
「「「ある」」」
ないと、言おうとしたけど三人に被せられた。
三人とも切れそうだし、どうしよう。
考え込んでいると、頭をなでられた。
「大丈夫だ。悪いようにはしない」
「そんなことは思ってない。けど……」
「けど?」
「部屋見ても冷静でいてね?」
おずおず上目遣いで言う。
「ああ、もちろん」
え~、こめかみに青筋が……。
チラとグレン様見ると、同じだった。
いつも無表情のリックは、ものすごく良い笑顔。
怖いよ!
「レオ様、ご心配には及びません。御三方は確認が必要なだけです」
「確認?」
「さようです。後ほどご説明します。先に続きをよろしいでしょうか」
「うん。お願い」
「人質になっていた者達は、体調確認の後、聴取を行います。問題なければ家族と引き合わせます。ただし、屋敷で働いている家族のみとします」
「それは、情報漏れを防ぐため?」
「さようです」
「う~ん。子供たちの親は全員屋敷にいるの?」
「おそらく、確認致します」
「もし屋敷にいなかったら、可能なら全員こっちに来てもらおう。ただし、伯爵が捕まるまでは、この屋敷にとどまってもらうのが前提かな」
「その条件が可能かも含め確認致します」
「うん、お願い。兵たちや協力者さんたちの怪我は大丈夫?」
「問題ありません。手加減されていたので」
チラッとグレン様を見る。
「当然だ。傭兵は打ちのめしたが、他は実践稽古だ」
「……それにしては、やりすぎでは? 骨折してポーションを飲んだ者が、数人おりましたが」
「軟弱なだけだろ?お前か、ハワードが鍛えろ」
え~、ついて来られないんじゃないの?
「今の伯爵家では無理です。ポーションがまったく足りません。よって、今回使用したポーション分は別途ご請求致します」
「そこまで酷いのか?」
グレン様が呆れた声で言う。
「残念ながら」
ポーションの問題なの?
骨折前提?
それが普通なの?
……異世界怖い。
思わず俺を抱えているエドガーの腕を握る。
「おい、レオが怖がっているだろ」
そう言って、俺を両腕で抱き込むエドガー。
「ハハハ、安心しろ、騎士だけだぞ」
「はい、レオ様は対象外です。ご安心を」
「う、うん」
俺は知っている。
ロベルトは限界ギリギリを見極められることを……。
考えるの、止めよう。
話を戻そう。
「じゃ、怪我人は大丈夫と、傭兵の聴取はハワードが始めているんだよね」
「はい。ただ、残っている者は主力以外ですので、肝心な情報は持っていないかと」
「そうか、頭への連絡手段はない?」
「ございましたが、押さえております」
「じゃ、傭兵は問題なさそうだね」
頷くロベルト。
「証拠は集まった?」
「ええ、全て回収済みかと。レオ様が確認されたいと思い、分類して置いてございます」
「ありがとう、後で確認するよ。それと、伯爵の私室と執務室、ダリルの私室も確認したい」
「承知致しました」
「俺が一緒に行こう。場所も分かるし、いいだろ?」
エドガーが同行を申し出てくれる。
助かる。
「うん」
「ロナルドが証拠を見た感じ、感触はどう? 破滅できそう?」
「余りあるほど十分に」
二人してニヤッと笑う。
「「「……」」」
両頬を引っ張られる。
「いひゃい」
「悪い顔をするからだ」
ペチペチとエドガーの手を叩き、離された頬を両手でさする。
「俺は、それだけのこと、されたと思うけど?」
むっとして睨む。
「ぅ、それはそうだが。いや、だからこそ、あんな連中のことで、そんな顔をするな。何かムカつくから」
きょとんとしてしまう。
「ムカつくの?」
「ああ」
「エドガーが?」
「悪いかよ?」
「ううん、ふふ。なんか、嬉しい。ありがとう、エドガー」
「おう」
そっぽ向いて言う。
でも、俺膝の上だから丸見えなんだよね。
頬と耳が赤い。
照れている。
じっと見ていたら、無理やり正面向かされた。
「えっと、証拠の確認はお昼食べた後になるかな?」
「……」
じっと俺を見るロベルト。
「ロベルト?」
「いえ、失礼しました。そうですな、昼食後でお願いします。それで、明日以降の予定ですが、その前にお二人のことですかな?」
「そうだな。ここからは俺が話そう」
エドガーが請け負う。
「まぁ、もう知っているが、改めて俺はエドガー・フォン・グランフェルト。辺境伯の三男、隣に座っているのが父親だ」
グレン様が頷く。
「で、リックだが」
「俺の名はリック・エルドラン。公爵家で騎士をしている」
「あ~、補足すると、実家が子爵で次男だ。で、結婚していて、もうすぐ子が生まれる」
「え!? 子供生まれるのに、こんなことしてていいの?」
「こんなことって……」
エドガーが呆れ声で返す。
「仕事だ」
リックは端的に答える。
あ、そうか。
異世界だもんな。
感覚が違いすぎて困る。
「そうか。なら早く終わらせようね」
「レオが、焦ってどうするんだ?」
「問題ない」
「そ、そう?」
「ああ」
リックやエドガーに笑われる。
微笑ましそうに見るの止めて、ロベルト、グレン様。
「で、俺も同じく公爵の騎士ね。レオの推測通り、公爵様の命令で潜入して情報を集めていた。公爵はバルダン伯爵から黒幕を探っていた。黒幕に関して情報は言えない。こっちとしては、だいぶ予定としては狂ったな。だが、俺達もこっちの計画に乗っかることにした。公爵様も了承している」
「え!? いつ、連絡取ったの!?」
「秘密だ」
ウィンクするエドガー。
むぅ、知りたい。
「そう、むくれるな。公爵家の手段だからな、悪いな」
「そうなんだ、二人が連絡取っている手段もそうなの?」
「ハハ、気になるか?」
「そりゃ気になるよ。連絡取っている感じじゃないのに、伝わっているから」
「すまんな」
「はーい」
優しく頭をなでられる。
「公爵様には、エドガー達が知っていること全部伝わっているの?」
「ああ、全部伝えてある」
「そうなんだ。すごいね」
そうか、全部知っているのか。
俺の呪いのことも伝えたんだな。
でも、公爵様じゃ、仕方ないな。
「で、公爵様から、1日でも早く来いとお達しだ」
「1日でも早くですか……」
心配そうに俺を見るロベルト。
「大丈夫だよ。元々そのつもりだったし。準備できたら、少数精鋭ですぐに出発しよう」
「いや、出発しようって、レオ。馬車の手配や食料の準備が必要だぞ」
エドガーが困った顔で言う。
「ロベルト?」
「はい、食料の準備できております。あと、馬の手配も」
「ありがとう、ロベルト」
「は? 馬? 馬車は使わないのか?」
「うん、辺境伯と俺、それとエドガーとリックかな? 馬で行けば早いでしょ?」
「そりゃそうだが、レオの負担が……」
「時間との勝負だよ。皆を守りたいし、失敗するわけにはいかないんだ」
「だが……」
「魔法でどうにでもなる。ただ、馬には乗れないから、エドガー乗せて? お願い」
上目遣いで、コテンと首をかしげる。
手で目を覆って天井を仰ぐエドガー。
恥ずかしいんだから、早く返事ちょうだい!
「分かった、俺がレオを守ってやる」
「エドガー、ありがとう」
そう言って抱きついておいた。
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次回 4/15 (水) 20時更新します。




