第19話 ずるい優しさの先に
ごめんなさい!!m(_ _;)m
また、予約日を間違えていました。
気づくの遅くてすみません(;´д`)トホホ…
エドガーは、痛みと戦いながら、呪いに立ち向かったレオを見つめる。
魔力と気力を使い果たし、気絶するように眠るレオの頬をそっとなでる。
その手でレオの手を握り、ゆっくりと魔力を譲渡していく。
その様子を見ていたリックが静かに声をかける。
「エドガー、そこまでだ」
その声を聞いても止めないエドガー。
リックはエドガーの腕を掴み止める。
「気持ちは分かるが、それ以上はレオの負担になる」
「……そうだな」
エドガーは自分の手を、レオの小さな手から、そっと離した。
「エドガー、これからどうする?」
「……俺は、このままレオの側にいる。お前は、朝一でここを離れ報告してくれ」
「俺も残る」
「ダメだ。エリーが待っているだろう。それに子供も生まれるだろう?」
「問題ない」
「だがな」
「エリーなら、戻ったほうが怒る。それに、確かに今回レオは上手く対応した。正直、無理だと思っていたからな。驚いた」
「ああ、そうだな」
二人して静かに眠るレオを見る。
「それに、現実的にこの包囲網を抜けるのは、かなり厳しいからな」
「それも、そうか」
窓から外を見るエドガー。
見えるのは木々だけだが、潜んでいる者達へ意識を向け探知魔法を使う。
「あ?増えてやがる」
「また?」
「これは、相当前から準備していたな。引き金はレオだな」
「そうだろうな、どう動く?」
「ん~、向こうの動きが予想できないからな。ただ、俺らと目的は同じと思ってよさそうだ」
「だと、いいが。あの執事がな」
「それな、俺らのこと感づいてそうだな、レオを1人で寄こしたんだ。あの執事が、ナタリーのお粗末な計画に気づかないと思うか?」
「……ないな」
無言で頷く二人。
「まぁ、要するにだ。その執事の思惑に乗っかればいいと思うんだ」
「どういう事だ?」
「今まで通り、レオと子供たち、人質を守ればいいんじゃね?」
「ああ、なるほど。なら、やることは変わらないな」
「そういう事だ。明日の昼に動くみたいだから、お手並み拝見だな」
「そうだな」
お互い笑いあう。
「俺等も、少し休むか」
「ああ」
エドガーはレオの隣に横になる。
それを横目で見て、リックは笑いを堪え静かにベッドに横になった。
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「レオ、きた。おはよ~」
「おはよう、エマ」
部屋に入るなり、駆け寄ってきたエマ。
可愛い。挨拶しながら頭を撫でる。
「おぅ、全員起きているな。飯配るから、全員座れよ~」
「おはようございます。手伝います」
セトがエドガーに話かける。
「はは、ありがとうな。でも、お前も座って待っていろ」
そう言って、セトの頭を軽く撫で、子供たちの様子を見て固まる。
「あ? テーブルないのか? 今まで、下に座って食べていたのか?」
「そうだよ」
「そうよ」
双子が一緒に答える。
息ぴったりだ。
だが、その返事を聞いたエドガーは、一瞬無表情になった。
はは、罪状増えてくね~。
エドガー、リックが机をと言っているのを、ぼんやり聞きながら朝のことを、思い出していた。
****************
俺は寝苦しさで、目が覚めた。
「苦しい……」
「ん~。レオ、まだ早い。もう少し寝ていろ」
すぐ近くで声がして、驚いて体がビクついた。
「大丈夫だ。安心しろ、俺がいる」
そう言って、俺を更に抱き込み寝息を立てるエドガー。
は? ……え?
身じろぐと、背中を優しくポンポンされる。
体が一気に熱くなる。
勘弁してくれ、俺、多分エドガーより年上だから。
顔を押さえてエドガーをチラッと見る。
気持ちよさそうに寝ている。
エドガーが寝ていて良かった。
抜け出そうとすると、腕で押さえられるので諦め、じっとしている。
まだ日が昇っていない。
ただ、窓を見ると薄っすらと明るくなっているので、夜明けが近いのだろう。
俺は寒さを言い訳に、エドガーにくっついていた。
今の俺はなんだ?
答えのない疑問を考えていたら、エドガーの腕から力が抜けた。
俺はその隙に抜け出し起き上がり、窓から外を眺める。
「朝日が昇るな」
振り返り寝ているエドガーとリックを見る。
俺は大人で刑事だ。大丈夫だ。
もう一度、窓から外を見て、朝日に目を細め眺める。
高いビルもなく、遮るものがない空に、朝日の光が雄大に伸びて広がっていく。
「もう少しで二人とはお別れだな」
「誰がお別れって言った?」
ポツリと漏らした独り言に返事がきて驚き、振り返るとエドガーが起き上がっていた。
「えっと、それは……」
聞かれるとは思わず、気まずい。
オロオロしていると、ヒョイッと抱き上げられベッドに移る。
レオの定位置になっている、エドガーの膝の上だ。
「俺、いや俺達はこのまま残る」
その一言に、勢いよく顔を上げる。
「な? ダメだよ! 今すぐ出て、二人を巻き込みたくない。リック起きて!」
「起きているよ。俺も残るのに賛成だ」
「何を言って」
「レオ」
強めに名前を呼ばれ、言葉を飲み込み、エドガーを見る。
そんな俺の頭に手を乗せ、目をしっかり合わせるエドガー。
「甘えろ」
「え……」
「そんな爆弾抱えて、一人でどうするんだ?」
「それは」
思わず視線を逸らすと、抱きかかえられる。
「俺を見ろ」
俺は、ぐっと唇を噛む。
「そうじゃない」
頬を引っ張られる。
「いひゃい」
上目遣いで睨むと、おでこをくっつけられる。
「俺はお前と一緒にいたい。レオ、お前は?」
思わず目を見開く。
「ダ、ダメだよ。これは伯爵家、俺の問題だから」
「話をすり替えるな。俺と一緒にいたいか、いたくないか、どっちだ?」
ずるい。
我慢すればするほど、感情が溢れそうになる。
優しくしないで欲しい。
「レオ、一緒にいさせてくれ」
鼻の奥がツンとして、涙が溢れる。
「ずるいよ。そんな言い方」
「こうでもしないと、本音隠す誰かさんが悪い。で、返事は?」
「……一緒にいたい」
ふっと優しく笑い抱きしめられる。
「よく言えました」
「ふっ、良かったな、エドガー」
「おう」
抱きしめる腕に力が込められ、守られていると実感してしまう。
「ど、どうなっても知らないから」
思わず憎まれ口を叩く。
「あ~、それ、多分大丈夫。おたくの執事、俺らのこと織り込み済みだと思うから」
「え?」
「な、ここにきて執事に言われたことと、違うことがあるんじゃないか?」
「そ、れは……」
ある。
あの女に伝えておくと言っていたが、確実に何も言ってない。
別館にいる者で、こちらの計画を知っているのは、俺だけだ。
おでこを突かれる。
「その顔はあるんだな?」
「まぁ、元メイド長に計画を伝えておくと聞いていたけど、どう見ても何も伝わってない。俺のことも何も知らなかった」
「やっぱり、そうか」
「どうして分かったの?」
「レオが何度か、怪訝そうな顔をしたからな」
俺かよ!
俺は表情に出ないはずなのに、子どもの表情筋緩すぎだろ。
「ふ、レオは他の子供からしたら読み取りづらいぞ。でも、こっちもプロだからな」
思わず頬を膨らましてしまい。
エドガーに突かれる。
「ま、だから。俺らの身は安全だから安心していい。俺達はお前と、お前の秘密を守る」
俺を見て頷くエドガー。
リックを見ると、笑顔で頷かれる。
「ありがとう。二人とも」
ふっと、笑ってリックは立ち上がり、俺の頭をなでる。
リックになでられるのは初めてで、ちょっと照れる。
その表情を見たエドガー。
「リック、お前はなでるな」
「お前な、ちょっと引くぞ」
呆れた視線を寄こしながら言うリック。
「なんでだよ、いいだろ」
「まぁ、いいけど」
そう言いつつ、俺に憐れみの視線を向けてくるリック。
やめて。
「じゃ、俺は朝食の準備してくる。時間見てレオを子供部屋に送れよ」
「分かっているよ」
****************
そんな、やり取りを思い出して体が熱くなる。
「レオ、どうしたの?お顔赤いよ~」
エマが突っ込んできて、我に返る。
「ん、大丈夫だよ」
エマの頭を撫でてやると、とびきりの笑顔を返される。
可愛い。
癒されていると、エマの声を聞いていたのか、エドガーがきて俺を抱き上げた。
抱き上げすぎだよ。
「顔が赤い? レオ熱が出たのか?」
おでこを合わせてくるエドガー。
「ち、違う。大丈夫だから」
慌てて顔を逸らす。
更に熱が顔に集まる。
まさか、今朝のやり取りを思い出して、赤くなっていたなんて知られたら死ぬ。
「本当に大丈夫なんだな?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
「ならいいが、体調の変化があったら、すぐに言えよ」
「うん、わかった」
下に降ろされ、ホッと息をつく。
そんな俺に、小声で話しかけるエドガー。
「俺と一緒にいれるの、喜んで貰えて嬉しいよ」
「な?」
カッとなって体が熱くなる。
思わず振り返りエドガーを見てしまう。
そんな俺を見て、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
慌てて、そっぽを向き戻り、食事の配膳を開始するエドガー。
耳が赤くなっているのに気づき、さらに、体温があがった気がする。
勘弁してくれ!
俺は乙女じゃないぞ。
冷静な大人の俺に戻ってくれよーーーーー。
悶絶していると、話しかけられる。
「ねぇ、ちょっといい? 私、エリーよ。自己紹介まだだったでしょ。よろしくね」
「こちらこそ、よろしく」
「あと、こっちの二人も、こっちがセイ。隣でパン食べてるのがオルトよ」
「よ、よろしくセイです」
「んん、ゴク。オルトだよ」
「うん。よろしく、二人とも」
テリーに食って掛かっていた、気の強い女の子はエリーか、大人しい男の子はセトで、めっちゃ食べているのがオルトね。
ん~?
セトって誰かに似ているような……。
「あ!」
「ちょ、なによ」
「ごめん、ごめん。セトってモニカの弟かな?」
「う、うん。そうだよ。姉ちゃんと会ったの?」
「うん、数日前に会ったよ」
「姉ちゃん、無事なの? 怪我とかしてない?」
セトは前のめりになり、早口で聞いてくる。
「大丈夫だよ、安心して。元気だよ」
「本当に?」
「ああ、本当だよ」
「よ、良かった……」
涙目になりながら、ホッとするセト。
仲良い姉弟みたいだな。
そこに、テリーがエリーに引っ張られてやってくる。
「ほら、ちゃんと言いなよ」
「わ、分かっているよ。そんな引っ張るな」
俺と目が合うと、気まずそうに目を逸らすテリー。
するとエリーに背中を叩かれる。
「ってーな。力強いぞ。わ、分かっているよ」
文句を言って、エリーが更に手を振り上げる。
慌てて俺に向き直り、思いっきり頭をさげるテリー。
「昨日は悪かった。その、お前が、あんな暴力を受けていたなんて知らなくて、当たった。本当にごめん」
素直な良いやつじゃん。
「いいよ、気にしてない。皆の気持ちも分かるから、謝罪受け取るよ、テリー」
「良いのか?」
「いいよ。でもラナとエマには、ちゃんと謝ってよ」
「昨日謝った」
俺はラナとエマを見ると、二人が頷いた。
「テリー、ごめんなさいしたから、仲直りした~」
「そうか、偉いなエマ」
「うん。エマ偉いの~」
エマの一声で和む。
それから、皆でワイワイと話しながら、朝食を食べ終えてまったりしていた。
それは、突然だった。
《 ガン!ドッッカーン!!》
「きゃぁ!!」
「うわ!」
建物が揺れる。
その後に続く足音。
「全員、奥の壁際に! 早く!」
皆が壁際に集まった瞬間に、子供たちを守るように背で庇い結界を張る。
ほぼ、同時に部屋のドアが蹴破られた。




