第16話 お粗末な真相と、記憶への道
エドガー達が使っている部屋で、リックが持ってきてくれた夕食を食べる
「なぁ、レオ。何があった? あの態度、お前らしくない気がしてな」
「元メイド長のこと?」
「名前を呼ぶのも嫌か」
呆れた声で言う。
「何かされたわけじゃないけど。子供への態度が命令口調で配膳もせず、カートから取らせて、片付けもしない。それとセトへの態度。一番は俺への態度が気持ち悪い」
「ブフォ!」
サッと皿を避けるリック。
「笑い事じゃないよ。気づかなかった? 異様な執着を感じる、息子のセトより俺を見ているし。その俺を見る目が気持ち悪くて、我慢できない」
「ああ、確かに」
「え? リック気づいていたのか?」
「結構わかりやすいぞ、多分、双子も気づいている」
「あ~、あの二人、観察しているからな~」
「なんで、お前ら二人がわかりあっているの?」
「エドガーって、そういうとこ鈍感なんだね」
ムスッとするエドガー。
「悪かったな。飯食ったなら薬飲め、ほら」
思いっきり話を逸らすエドガーに、俺とリックは視線を交わし笑った。
俺は薬を受け取り飲みほした。
食後は他愛もない話をして、しばらく俺の様子を見ていた二人。
「今のところ大丈夫そうだな」
「ああ、やっぱり切れるのは夜中だろう」
「なら、早いほうがいいな」
「レオ、どっちから行く」
「寝ている人質見ても意味ないから、先に人質の状態を確認したい。できれば、二人のどちらかが人質と会っている時の様子を見たいかな。頼める?」
「問題ない、俺が食事を取りに行く。そうすれば、ナタリーも部屋に入れられる」
「だ、そうだ。良かったな」
「リック、ありがとう」
「ああ」
*******************
俺はエドガーと秘密の通路にいた。
「こんな通路、よく見つけたね」
「蛇の道は蛇さ」
そう言ってウィンクする。
「この通路を知っているのは俺達二人だけだ」
「そうなの? ロベルトは?」
「知らないと思うぞ、知っていたら使えないようにするはずだ」
「確かに、確実に使えなくするね」
「あ、リックが来たな。ここから覗ける、大きな声は出さないように」
「わかった」
エドガーが俺を抱えて、見やすいように位置取りをしてくれる。
覗き穴の高さは大人が覗ける位置にある。
そこから部屋の様子を伺う。
使用人用の部屋のようでシンプルだ。
ここは女性のようだ。
ノック音が響き、ビクッと震えた女性がドアから離れ返事をする。
リックが入ってきた。
誰が来たか分かった時、女性の体から強張りが解ける。
食べ終えた食器を渡しながら、リラックスした様子で会話をする女性。
怯えは見られない。
リックが扉を締めた後、特に変わった様子はない。
俺は覗き穴から目を離し、エドガーに頷いた。
そこから順に全員を見ていった。
女性5人、男性3人の計8人だ。
「やっぱり女性の方が多いね」
「そりゃな、人質にするなら女の方が都合いいからな」
言いながら嫌な顔をするエドガー。
「皆、リックのことは、怖がってないね」
「そりゃな、俺ら二人は暴力振るわないし、恫喝もしないからね」
「人質との関係を良好にすれば、情報は得やすいからね」
「一言多い。じゃ、次は前にレオが使っていた部屋へ行くか」
「ちょっと、待って」
俺は人質たちの様子を思い返す。
1人だけ、部屋に来たのがリックと分かった時の反応に違和感があった。
怯えじゃないが、一瞬見せた表情が気になる。
誰もが力を抜き、普通に会話をしていたから余計に違和感が残る。
「会話は普通だったけど……」
「どうした?」
「ちょっと引っかかっている人がいて……」
「男か?」
「うん、エドガーも?」
「確信はないが、1人な……。ビリー、男の一人目だ」
頷く。
同じ人物だ。
「もう一度、行きたい」
「わかった」
隠し通路を戻り、ビリーの部屋へ行くと会話が聞こえてくる。
俺とエドガーは視線を合わせ訝しんだ。
エドガーが先に覗き穴から、様子を伺う。
驚いた表情を見せ、俺と交代する。
見えたのは、ビリーとナタリーが親密そうに体を寄せ合い話していた。
「嘘だろ?」
無意識にこぼした言葉に慌てて、両手で口を塞ぐ。
様子を伺うが二人とも気づいてないようだ。
見ているのが不快だったので、覗き穴から見るのをやめ、二人の会話に集中した。
エドガーも同様だ。
「「…………」」
おおむね聞き終え、エドガーと視線を合わせ、二人して天を仰いだ。
「ここを、離れよう」
「少し待とう」
「?」
首をかしげる俺に、ニヤッとエドガーは笑う。
「来るぞ」
すると扉が勢いよく開けられる音と共に悲鳴が聞こえた。
「お前達、何をしている?」
地を這うような怒気を含む声、リックだった。
思わずエドガーを見る。
ニヤッと笑う。
「こ、これは、彼が」
「ナタリー、部屋から出るなと言ったはずだが? どういう事だ、ビリー」
ヒッと悲鳴を上げて震えた声で言う。
「ナ、ナタリーが、訪ねてきて俺は何も……」
「な? あなたが来いと言ったんでしょ!?」
「何だと!?」
醜い言い争いが始まる。
するとエドガーが壁を触り、隠し扉が開いた。
「は~い、そこまで。二人の会話は俺とレオ、リックの3人が聞いたから、これ以上の醜態を晒すのは止めろ」
うわ、エドガーのマジ怒り怖え~。
声にドスが効いている。
二人が固まる。
ナタリーが俺に気づいた。
「レオ様、誤解です! 私はレオ様を思って……」
「……黙れ。まさか、俺のためだと言って、自分の利己的な罪を正当化するきか?」
「ぁ、あぁぁ~」
泣き崩れるナタリーと、ガックリと肩を落とす男ビリー。
その後、二人をエドガーとリックで拘束して、リックが地下牢へ連行した。
ここにもあるのか地下牢、辟易する。
うんざりした顔をしていたのだろう。
「あの二人の事は、とりあえずリックに任せれば良い。先に、レオが前に使っていた部屋を見に行こう」
「ん、お願い」
俺も、あの二人のずさんな計画は、とりあえず置いておくことにする。もう、阻止できたしね。
*******************
3階に上がり、一番奥の部屋に入る。
「ここだ。どうだ? 見覚えあるか?」
「……」
部屋を見渡す……が、まったく覚えがない。
ゆっくり首を振る。
「そうか……。あそこに、俺達が調べて目ぼしいものは置いておいた」
俺を下ろして、ローテーブルの上を指差す。
「ここは、一人のほうがいいだろ? 後で様子を見に来るから、ゆっくり見るといい」
頭を撫でて、入った入口とは違う扉を開き固定する。
「こっちにも部屋があるから、入れるようにしておく」
「ありがとう」
「ああ。あの石、持っているよな?」
頷いて、ポケットから出して石を見せる。
「ならいい。何かあったら、すぐ魔力を流せよ」
「わかった」
「じゃ、後でな。ああ、俺とリックしか入れないようにしておくから、気にせず過ごせ」
そう言って部屋を出ていく。
「男前だな」
鈍感だけど、よく気が回る男だ。
「はぁ。なんだか、身体年齢に引っ張られている感じが、微妙だな」
エドガーを前にすると、子供っぽくなり甘えたくなる。
「う~、恥ずかしすぎる。俺は28歳だったんだぞ、今のエドガーより年上だろ? しっかりしろ神崎悠人。俺は刑事、さぁ、捜査だ、捜査」
この少年と、母親の事を調べよう。
そう、俺自身のこと神崎悠人の記憶は戻った。忘れていても、いいような事さえ思い出した。
だが、少年や皆のことは思い出せない。
この世界の知識は、神のじいさんに貰ったから知っているだけだろう。
憶測でしかないが、俺はこの少年として生きていない気がする。
じいさんに確認要件だな。
「さて、どこから調べるか」
二人が見つけてくれたものは、後から見よう。
テーブルの上にある資料を収納する。
入ってきた部屋は、応接室だからか特に何もなさそうに感じる。
「寝室か、書斎になるか……」
隣の部屋へ移動する。
「この部屋は子供部屋か、するとレオの部屋だな」
一通り調べていく、清掃され綺麗な状態だ。
レオが、何かを隠すことはないだろう。
日記、あるだろうか?
机の上にはペンと紙が置かれている。
引き出しを調べていく。
「ん~、これといったものはないな。ん? 本か」
一番下の引き出しに一冊だけ入っていた。
その本は、何度も読まれたように背表紙がすり減っていた。
「お気に入りか」
ページを捲ると、物語のようだ。一人の少年が故郷を離れ冒険していく物語。
「王道だな。何故これだけ引き出しに?」
本棚を見に行く、ここにも、同じように何度も読んだと分かる本がある。
気になったので、収納した。
本棚も調べたが、特に変わったものはない。
再度、机にベッドを調べるも何も出なかった。
「逆の部屋に行くか。母親の部屋だな」
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次回 3/25(水) 20時更新☆
『第17話 心と感情は誰のものか?』も、よろしくお願いします。




