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元刑事、異世界で答えに辿り着く  作者: 月乃音


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第14話 歪みの露見

俺は子供たちの会話を聞きながら、子供たちの姿を思い出す。

服は質素だが清潔な物を着ていた。

特に痩せた状態には見えなかったし、食事もちゃんと食べられているように見える。

クッションを貸してくれたエマも、子供特有のふっくらとした頬をして血色も良かった。

ホッとするも、思わず言葉が溢れた。


「この少年、レオだけ……」


小さな呟きで、誰の耳にも届かない。

頬が濡れた気がして、手で拭くと涙が流れていた。

この少年が泣いているのか?

俺には、少年の記憶がない、思い出す気配もないのにな。


「ちがう……」


熱のせいだ。


俺は毛布を手繰り寄せ、体を丸める。

冷静になれ、今出来ることをやるんだ。


ぐっと毛布をにぎる。

俺は俺だ。それに、……そう俺は刑事だ。

かなりレオよりな、精神状態になっていたようだ。

引っ張られているのだろうか?


女の子4人組とテリーをリーダーとした3人、セト含み年長2人、子供は全部で9人。


女の子たちは、俺に一番近くに居た。

どうもエマが俺の側に行きたがり、そうなったようだ。

テリー組はベッドで、セト達はソファー。


俺を気にしているのは、女の子とセトグループ。

特にセトの視線は、突き刺さるようだ。


セトとナタリーの二人は、親子とは思えない空気だった。

ナタリーの接し方は、他の子供と一緒だ。こんな状況でおかしい気がする。

あえて? と逆も考えたが、無意識に出る子を思う母親特有の表情、視線が一切なかった。


セトも子供らしくなく、淡々と受け答えをしていた。

愛情に飢えているのではなく、あの目は……諦めた目だ。


ナタリーは子供たちに受け入れられている。

口うるさく叱られるが、何でも言えて安心できる相手と言ったところか。

エドガーに対しては、緊張、近づかない。ただ、恐怖はなかった。


大人たちがいなくなると、緊張もなく誰もがリラックスしている。

閉じ込められているが、環境は悪くない。


……誰も、暴力を振るわれていない。

人質だからこそか。


この少年レオは母親も亡くなり、人質ではないからな。


子供たちが安全だったのは良かったと思う。

不謹慎だが、情に訴える材料にはならない。

いや、他にも腐る程、罪状は出るだろうから問題ない。


大人たちの人質の状況を知りたいな。


つらつらと色々考えつつ、いつの間にかうたた寝していたようだ。



*******************



ナタリーが夕飯を運んできた。

俺はあえて寝たふりをした。


ティーカートを部屋に入れ、ドアの所に置いたまま俺の様子を見に来る。


「レオ様」


名前を呼び、俺のもとに来ようとするとエマに止められた。


「ダメ。ちょっと前に寝たの。起こしちゃダメなの」


ナタリーが戸惑いながら、息子に声を掛けた。


「セト、そうなの?」


「はい、そう思います。寝返りをしていたけど、少し前から落ち着いています」


「そう。ならこのまま眠らせておいたほうが良さそうね。辛そうな様子は無かった?」


「特に変わった様子はなかったと思うけど、みんな、どう?」


「ねーんじゃねぇ」


「ないと思う」


テリーと、もう1人は女の子、誰だ?


「そう。あなた達、騒いでいないわよね?」


「はい」


セトが答え、皆頷いているようだ。


「分かりました。夕食を食べていいわ。レオ様の分は持ち帰るから、カートからあなた達の分を下ろしなさい」


子供たちが食事を運び終えて、食べ始めたようだ。


「食べ終わったら、ドアの近くに置いておくように。セト、レオ様をお願いしますね。あなたたち静かに過ごしなさい。レオ様の睡眠を邪魔しないように」


そう言って、ティーカートを引いて部屋を出ていった。


……子供たちに冷たくないか?

食事を子供たちに取らせた、小さい子もいるのに……。


それより、気のせいだろうか?

レオに対して態度が他と違いすぎる。

義理だが伯爵の息子だからか?


いや、なにか違う。

なんか執着しているように感じる、勘だが。

嫌な感じだ。




子供たちの食事が終わり、休んでいるのを見計らい、寝返りして目を覚ました演技をする。

目を開けて、仰向けになり天井を見る。

子供たちの視線を感じつつ、上体を起こそうとするも力が入らず動けない。


「ぅ……」


思わず声が漏れる。

身体強化したいが、魔法を使っているのを知られては困る。

エドガーに聞いておけばよかった。


「起きた~」


そう言ってエマが近づいて来て、俺の顔を除く。


「うん。起きたよ」


ちょっと声がかすれた。


「顔が赤いの。お姉ちゃん、えっと」


首をかしげるエマ。


「レオだよ」


「レオ、顔が赤いの。声も変なの」


部屋に来たときからエマに寄り添っていた、大人しい女の子が手持ちのコップに水を入れこちらに来ようとした。


「おい、必要ないだろ」


テリーが女の子に声を掛ける。


「水分は必要だよ」


歩き出そうとして、テリーに腕を強く引かれ転倒してしまう。


「きゃ!」


同時に手に持っていたコップも落ちて割れる。


「ラナ!大丈夫?」


「ん、大丈夫。水が少しかかっただけ」


「ちょっと、なんなの!? さっきから、あんた何様よ!」


気の強そうな女の子と、テリーの言い合いが始まる。

呆れて見ていると、小さい声が聞こえた。


「お姉ちゃん……」


エマが、か細い声で呼んだ。

心配だが、二人が怖くて近づけないようだ。


気付いたラナが立ち上がる。

それに気づいたテリーが、また引っ張り転ばせる。


それを見た強気な女の子は、思いっきりテリーを押した。

押されたテリーは尻もちをつき顔を歪ませる。


そんな、やり取りをセトは冷めた目で見ていた。


「お姉ちゃん!」


エマが姉に駆け寄る。


「お前が!」


ドン!とエマが押され転ぶ。


「お前が!あいつに構うからだろ!」


テリーがエマに怒鳴る。

エマは怒鳴られ泣き出した。


「エマ!大丈夫、大丈夫だよ」


ラナがエマを慰めながら抱きしめる。


「あんた!やりすぎだって言っているでしょ!」


「うるせえ!」


テリーは机に置いてあった、水差しを持ち上げ、ラナとエマに向けて投げつける。


頭より体が先に動いた。


“ ガッシャーン “


俺の背中にあたり、水差しは割れ床に落ちる。

抱え込んだ腕を離し、二人を見る


「大丈夫か?」


ラナとエマを交互に見る。


「怪我はないな? 濡れたか?」


ラナは驚きに目を開きながら、首を横に振る。


「ううん。怪我もないし、濡れてもない」


「そうか、エマは?」


エマはラナに抱きかかえられたまま、顔をこちらに向ける。

大きな目に涙をためていた。

ラナがエマの体を確認して頷く。


「もう大丈夫、よく我慢できたね。いい子だ」


頭を撫でる。


「エマ、いい子なの」


笑顔になった可愛いな、良かった。

俺はゆっくり立ち上がり、テリーと向かい合う。

後ろで息を飲むラナ。


「何か言うことは?」


言いながらテリーを睨む。

息を飲み後ずさるも、横目で机を確認するテリー。


「な、何だよ。お前が勝手にしたんだろ!」


コップを掴み、俺に投げつける。

女の子から悲鳴が上がり、エマが泣き出してしまった。

俺はコップを咄嗟に掴み、水は(こぼ)れ床を濡らした。


思わずテリーを見て溜め息をつく。


「俺のことはいい、彼女達に言うことがあるだろ?」


「この、格好つけているんじゃねぇよ」


俺に掴みかかろうとして、セトに止められる。


「やり過ぎだ」


「はぁ? お前も気に入らないって言っていただろ?」


「今は関係ないだろ? エマとラナに何をした?」


「は! たった今まで傍観していたやつが何言ってやがる」


セトに掴みかかるテリー。


「そこまでにしておけ」

「そこまでにしなさい」


セトと一緒に居た男の子と、もう1人の女の子の声が重なる。

男の子はテリーを引っ張り、セトから離す。


この二人、雰囲気似ているな。ん? 顔も似ている?

二人を見ていたら、女の子に声を掛けられる。


「あなた、大丈夫なの?」


「ん? あぁ、このぐらい平気だ、慣れている。それより、君達は……」


「私達、双子なの。私はルミで、ルトよ」


「ルトだ」


「双子、なるほ、ど……」


話の途中で立ちくらみを起こし、倒れそうになる俺をセトが支える。

そして、驚いて俺の肩を抱き支え、額に手のひらを当てる。


「すごい熱だ。とりあえず体を拭かないと」


セトが慌てる。

その時、部屋のドアが勢いよく開きエドガー、リック、ナタリーが入ってくる。


エドガーとナタリーが足早にこっちにやってくる。


「大丈夫か?」


「すごく熱が高く、……っ」


エドガーに話しかけている途中で、頬を叩かれ黙り込むセト。


「何なの! この状況は? レオ様のこと、お願いしたでしょ? それなのに、なんてことなの!」


ヒステリックに叫び、いつもの落ち着いたナタリーとは別人のようだ。

そして、また腕を振り上げるナタリー。

俺はセトの前に出た。


「レ、レオ様!」


俺の頬を叩いたことに気づき慌てる。

赤くなった俺の頬に伸ばして来る手を、俺は思いっきり払う。


「何をしている」


睨みつけ声を落とし問う。


「あ、あの?」


「お前は何をしているんだ?」


「レ、レオ様? 何を……?」


俺の剣幕にオドオドするナタリー。


「自分の子供に理由も聞かず、暴力を振るうとは、どういうことだ?」


ビクッと体を揺らし、目を彷徨わせる。


「セトは倒れそうになった俺を支え、体が熱いことに気づき熱を確かめていた」


目を見開き、セトを見るナタリー。


「その証拠に、エドガーに俺の事を伝えようとしていた。それを……お前、母親だろ?」


睨みつけると、震えながら後ずさり首を振る。


「わ、私は、」


「言い訳はいい。お前は俺に構うな、部屋の掃除をしろ」


ムスッと黙り込む俺。

俺に庇われ唖然と佇むセトに、呆然としているナタリー。


それを見ながらエドガーは頭を掻く。


「あ~。まず、レオ着替えようか」






ここまでお読みいただきありがとうございます。

もし少しでも楽しんでいただけましたら、

評価やブックマークで応援していただけると嬉しいです。


次回 3/18(水) 20時更新します。

『第15話 知らなかった真実』も、よろしくお願いします。


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