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元刑事、異世界で答えに辿り着く  作者: 月乃音


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第11話 隠された任務

ロベルトが扉を開け、外に出た。


「っ」


思わず両手で目を覆う。

眩しい……。


「レオ様?どうされました?」


「大丈夫、眩しいだけ」


目がしょぼしょぼする。


「日陰に入れてやれ」


ぶっきらぼうな男の声がした。

ロベルトが声の方を向く。


「ずっと、暗い地下にいたんだ、光に目が慣れていない」


「確かに」


そう呟きロベルトは木陰に移動し、俺を下ろす。


「いかがですか?」


「大丈夫、ありがとう」


瞬きを繰り返す。

この少年になってから、外に出るのは初めてだ。

少年は一体いつから、あの部屋にいたのだろうか?


「ロベルト、俺はいつからあの部屋にいた?」


「4年ほど前になります……」


「「4年」」


思わず声が重なり、視線が合う。

だが男はすぐに視線を逸らした。

あの部屋に4年も1人で耐えていたのか……。


「……そうか」


俺は空を見上げ深呼吸をする。

屋敷の反対側は森?と言えるほど木が生い茂っている。


「ロベルト、今までありがとう」


「いえ、とんでもございません。リックさん、お気づきになられたかも知れませんが、レオ様は記憶を失っておいでです」


リックというのか、男をよく観察する。

痩せ型だが、均整の取れた筋肉がついている。

髭があり、年齢は20代後半から30代前半か?

異世界人の年齢よく分からんな。


「いつの記憶だ?」


「何も、ご自身の事や我々のことも、知識は問題ないです」


「は? ……いつからだ?」


「前回の後です」


目を閉じ、拳を一瞬握った?


「そうか、今回の怪我は?」


「切り傷が多く、数カ所深い傷があります。こちらが手当に使った薬になります」


リックは無言で籠を受け取り、中身を確認する。


「問題ない」


「よろしくお願いします」


ロベルトが頭を下げる。

一瞬間が空き、リックが俺を見る。


「行くぞ」


そう声を掛け、森にある小道に向かっていく。

ロナルドへ視線を向けると、黙って頷く。

俺も頷き返し、リックの後に付いて行く。


……足の怪我が酷かったようだ。

痛みの感覚が、麻痺していたのか気づかなかった。

冷や汗を掻きながら、ゆっくり歩く。


リックはそんな様子に気づいたのか、こちらを見ないが歩みが遅くなる。

気づくとリックが木々で見えなくなる。

俺は振り返り屋敷を見ると、2階の窓がまだ見えた。


「なるほどね」


俺は前を向き歩き出す。

そう、リックの足音は、木々で屋敷が見えなくなった場所で止まった。

その場所に追いついたと思ったが、誰も居ない。


「あれ?」


周りを見渡そうとした瞬間、抱えられる。


「わっ」


「大人しくしていろ、右足か?」


「え?」


「怪我だ」


「あ、はい」


抱えなおされる。

あ、痛くないようにか。

思わず、じっと見つめる。


「なんだ?」


「ありがとうございます」


一瞬、リックの体が固まった。


「……」


一度視線を寄こしたが、すぐ逸らして歩き出す。

この人、不器用なんだな……。


無言で歩いていくリック。

あれ?そう言えば犬がいない?


「なんだ?」


「犬がいないなと思って」


「なぜ知っている?」


「メイドに聞きました」


納得したように頷き、俺をじっと見てくる。

思わず首をかしげる。


「お前、熱ないか?」


「え? ないと思うけど?」


視線が痛い。

見つめ合うこと数秒、リックの顔が近づいて……。


「いたっ」


おでこ、ゴンされる。

熱があるか見たようです。


「悪い、それより熱が出ている。急ぐ、少し我慢しろ」


少し腕に力を入れて俺を固定し走り出す。

え? ほとんど揺れてない。

何者? と思っていたら、もう別館に着いたようだ。


「エドガー」


リックが別館前に立っている男に声をかける。


「慌ててどうした?」


え? 慌てていたの?


「熱が出ている、深い傷があると言っていた」


迫りながら言うリックに、後退りしながら苦笑いするエドガー。


「わかった、わかった。俺がナタリーさんの所に連れて行く。お前は見張りを交代してこい。イライラして待っているぞ」


俺をリックから受け取りながら言う。


「行ってくる。頼んだ」


「おう。ぅお!?」


返事してすぐ、リックが迫って驚くエドガー。

エドガーの腕から俺を抜き、向きを変えてエドガーに渡す。


「右足の怪我酷い。後、記憶がない」


そう言って、別館のドアを開け中に入り、あっという間に見えなくなる。


「あ~、大丈夫か? 怖くないぞ、あんなだけどリックは子供好きなんだよ。俺はエドガーだ」


「は、はい」


にこっと笑って別館に入って行く。

結構広く、綺麗な状態だ。

周りを観察しつつ、エドガーを見る。

エドガーも痩せ型だが筋肉はある。

リックはガッチリタイプで、エドガーは着痩せするタイプか。

観察していたら、ピタッとエドガーが止まる。


「あれ? 記憶がないって言った? どういうこと?」


俺に聞いてきた。

あれは説明不足だよな。


「えっと、前回の、その暴力? の後に記憶をなくしました。何も覚えてなくて……」


「……は?」


ドズの効いた声が返ってくる。

あれ? この人も?


「あ、知識は多分大丈夫です」


「多分って、フォローになってないよ……。自分のことは分かるよね?」


俺は緩く首を振る。


「……それってさ、それだけ酷いことされたって事だよね?」


目が座って、怖いよ。

コクコク頷く。


エドガーの腕に力が入る。


「いたっ」


「あ、ごめん。大丈夫?」


「はい、大丈夫です」


俺の顔を見て、焦るエドガー。


「顔色が悪い、急ぐよ」


足早に歩き、階段を上っていく

そんなに?


《ズクン》


腹に嫌な感覚を感じた途端、全身に冷や汗がでる。


「ぅ、ぅぁ……」


あの痛みがフラッシュバックして、身体が震えだす。


「どうした?」


異変に気づき立ち止まり、俺を伺う視線が驚きに変わる。


「……お前」


まず俺の顔に手を添えて目を見てくる、そして全身を見る。

息を飲むエドガー。


「そんなもの、どこで! 腹か、まずナタリーを呼んでくる、少し」


俺に腕をぐっと掴まれて口を(つぐ)む。


「……ここの人たちには、教えないで……」


驚いたように、エドガーの目が見開かれる


「何を言っている!? これは――」


更に力を入れて腕を握る。


「「……」」


視線が絡み合う。


「っ……、うぁ……」


息がつまり苦しむ俺を、優しく抱え直し背中を擦る。

エドガーの服を握り、再度視線を合わせる


「呪い……でしょ。…お、願い、お願い……秘密に、ぅ……」


痛みを堪え、冷や汗を掻きながらもエドガーへの視線は外さず訴える。

眉間に皺を寄せ、思いっきり溜め息を吐く。


「チッ! 後で事情聞くからな」


そう言って、手近な部屋に入りドアを締めたエドガー。


「もう少し耐えろ、今リックが来る。遮音の魔法を使った、音が漏れることはない。それにリック以外はこの部屋に入れない」


そう言って、俺をソファーに寝かせて、魔法をかけた。


「呪いに治癒魔法は聞かない。得意じゃないが、癒やしの魔法を掛けた。多少ましだろう」


俺の手を握りながら、気遣うように頭を撫でる。

慣れてないのか、ぎこちない。

その不器用さに口元が一瞬緩むも、すぐ苦痛に歪む。

思わずエドガーの手を握り返す。


「何だって、こんな子供に!」


苦々しく吐き捨て、苦悶の表情を浮かべる。

そこに、静かにドアを開け入ってくるリック。


「リック、頼む」


エドガーはリックに場所を譲る。

リックは俺を見た瞬間顔を歪め、すぐ魔法を発動する。


「くっ、なんだ、この呪いは!」


リックの魔力が俺を包み込む。

だが、俺の体から黒い(もや)が立ち上り、魔力を押し返すように蠢いた。


リックはぐっと歯を食いしばり、魔法の威力を上げ黒い(もや)を魔力で押し返す。

2つの力が反発しあい、魔力の渦が俺とリックを覆う。


リックは膝を付き、額に汗が流れる。


「よせ! それ以上は、お前が死ぬ!」


エドガーがリックを止めようとするも、魔力の渦で近づけない。


「リック!! 任務を忘れるな!」


ピクッと僅かに手が揺れた。

俺はその手に触れる。


「治さなくて、いい……。痛みが、かなり治まりました。ありがとう、ございます」


俺の言葉を聞き、表情を険しくして止めようとしない。

リックの手を握り、緩く首を振る。

そして、リックの目を真っ直ぐ見つめ、ゆっくり伝える。


「あなたまで、犠牲になる必要はない」


苦渋の表情をして目を閉じ、息をゆっくり吐くリック。

魔法の発動を止め、俺の手を両手で握り額を付ける。


「すまない……」


俺はリックの手を優しく撫でる。

顔を上げ俺を見つめるリックに、笑い返した。

うなだれるリックの肩に、手を置き労うエドガー。


「落ち込むな、痛みを取り延命すれば、治せる可能性だってある」


「……そうかも知れない。いや、そうだな」


二人の鎮痛な表情を見て、思わず苦笑してしまう。

今度は怪訝そうな顔をされた。


痛みが収まるのを待ち、二人に顔を向ける。


「ありがとうございます」


お礼を言うと、ぎこちなく頷くエドガーと、視線を逸らし苦痛の色を浮かべるリック。


「そんなに気にしないでください。もともと俺はいつ死んでもおかしくない状況でした。

それに期限が付いただけです。ダリルは後、数カ月の命だと言っていました。でも、俺はそれより短いと思います。体が弱っているので」


「「……」」


絶句する二人。


「それより、お二人がここまで俺を、気遣ってくれるとは思いませんでした。どうしてです? 傭兵さん?」


あからさまに顔を背ける二人。


「どうしました? エドガーさん、任務って何の任務ですか?」


「な、何のことだ?」


じっと見ると視線を逸らす。


「エドガーさん、視線を逸らしたら認めたのも同然ですよ? お二人の主は、どちら様でしょうか?教えて頂けますか」


二人は視線を交わすも、黙り込む。

室内の空気がぎこちない静寂に包まれた。













ここまでお読みいただきありがとうございます。

もし少しでも楽しんでいただけましたら、

評価やブックマークで応援していただけると嬉しいです。


次回 3/7(土) 20時更新します。

『第12話 密偵に向かない二人』も、よろしくお願いします。


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