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元刑事、異世界で答えに辿り着く  作者: 月乃音


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10/26

第10話 黒い贈り物

ここまでお読みいただきありがとうございます。

もし少しでも楽しんでいただけましたら、

評価やブックマークで応援していただけると嬉しいです。


次回 3/4(水) 20時更新します。

『第11話 隠された任務』も、よろしくお願いします。


油断していた。


魔力操作も無事、鬼教官のロベルトから合格をもらい、別館への移動が決まった。

決行は予定通り三日目の今日お昼すぎだ。

その準備で時間がないと、ロベルトが昨夜に朝食も置いていった。

久しぶりに、のんびりと朝食を食べ、猛特訓の疲れで寝てしまった。



俺は怒鳴り声を聞いた瞬間に、床に叩きつけられた。


「ぐっ」


痛みで息が詰まる。


「俺が来たのに、いつまで寝ている!」


髪を捕まれ、無理やり上を向かされ、腹を思いっきり蹴られる。

痛みで声も出ない。

身体強化して蹴ってやがる。

だが、魔法で保護は出来ない、外傷が出来ないのはダメだ。


「挨拶もできないのか? 仕置が必要だな」


愉快そうに顔を歪めた少年。

そこからは、殴る蹴るが続き、意識が朦朧(もうろう)となる。

すると、水をぶちまけられ、水球に閉じ込められる。


息が……、息が出来ず苦しく顔が歪む。

そんな俺を見ている少年は、(みにく)い笑みを浮かべた。


残虐性の強い愉快犯が見せる表情だ。

こんな時でも、頭は冷静に働くようだ。


「もっと苦しめ!俺を楽しませろよ!」


今度は風魔法で水球ごと切り刻まれ、俺はなすすべもなく風圧で壁に叩きつけられ、そのまま床に崩れ落ちる。


「なんだよ、いつもみたいに泣き叫べよ!」


思いっきり背中を踏みつけられる。


「がぁ!」


「アハハハ!みっともない声だな。ほら、泣き叫べ!」


何度も背中を踏みつけ、腕を引っ張りあげ腹を蹴り飛ばす。

腕を掴んだまま、俺の顔を覗き込む。


「俺が学院入学するから、別館に行くそうだな。平民のゴミどもと一緒の部屋だって? お似合いだな、だが俺がそれだけで許すと思うか?」


あぁ、やっぱり、こいつがダリルか、魔物図鑑で見た魔物の方が可愛く見える。


「あぁ、可愛い弟よ。良い物を見せてやる。俺が、ある方から(ゆず)り受けたものだ」


俺を仰向けに転ばせ、足で思いっきり腹を踏みつける。


「うっ」


ダリルは真っ黒な手袋を嵌めた。

そしてポケットから、小さな箱を取り出し中身を俺に見せる。

そこには、禍々しい真っ黒な球体があり、嫌な気配を漂わせていた。


「俺から、お前にプレゼントだ」


そう言って腹を思いっきり殴り、服をめくり直接腹に球体を押し付ける。

すると、球体が俺の体に消えていき、跡形もなくなる。

唖然と見ていると、全身に激痛が走る。


「ぅがぁぁぁぁぁ、あぁぁぁぁぁ!」


痛みにのたうち回る。全身に黒い(もや)がまとわり付く。

激痛に苦しみ悶える俺に、ダリルは言い放つ。


「いいザマだ。俺からの最初で最後の贈り物だ、気に入ってくれたか?」


全身に冷や汗をかき、痛みに震えながら俺は睨みつける。


「へぇ……お前、そんな顔もできたんだな。だが、残念だったな」


ダリルは顔を近づけて、ニヤリと嫌な笑いを見せる。


「お前の命はあと数カ月だ。死の恐怖と、痛みにせいぜい苦しめ。あぁ、……死んだら母親に会えるかもなぁ?」


嫌な笑みを見せ、満足そうな顔をして立ち上がり、俺を憎々しげに見下ろす。


「やっと、やっとだ。やっと父上から、お前を始末する許可が下りた。まぁ、いい気晴らしにはなったが。これで最後だ、嬉しいだろ? ……お前の苦しむ様子が見られないのは、残念だ」


そう言って部屋を出ていった。


「ぐっ……」


言いたいことだけ言いやがって、クソガキが。


全身の痛みで指先さえ動かせず、息も……くそったれ……。

そこで意識が途絶えた。



*******************



「ぅん……」


「レオ様、お目覚めですか?」


目を開けると、心配そうに見るロベルトと視線があった。


「ロベルト?」


「申し訳ございません。まさか、あのクズが今日動くとは思わず、油断しておりました」


あ、そうだ。ダリルに……。

ハッとして起き上がり、自分の体を確認する。


「どうされました?大丈夫ですか?」


ロベルトが心配そうに声を掛けてくる。


「あぁ、大丈夫だ。手当ありがとう。よかった、傷そのままだね」


呆れ顔をするロベルト。


「まったく、レオ様は。私が、どれだけ心配したとお思いですか……」


「す、すまない」


それから、ロベルトは部屋に入った時からの事を、事細かに聞かせた。


「まぁ、前回よりは軽かったので良かったのですが」


「そ、そうか」


軽かったのか……、あぁ確かに、あんな出血はしてないな。


「お身体の具合はいかがですか」


「問題ないよ。もう、お昼になる?お腹が減ったかな」


「それは、ようございました」


そう言って、サイドテーブルに食事の用意をしてくれた。


「ありがとう」


「ごゆっくり、お召し上がりください。レオ様、お話しても?」


「もちろん」


「朝食の食器や、本はどうされました?」


口の中の食べ物を飲み込む。


「ん。空間魔法だっけ? 収納出来るようになったから、昨日の夜に練習して、入れたままだった。今出すよ」


ベッドの上に、食器と本を取り出し置く。


「レオ様には、驚かされてばかりですな」


笑いながら、俺が出したものを収納するロベルト。


「ロベルト、予定通りで問題ないよな?」


「本来なら中止と言いたいですが、変更ございません」


「よかった。あ、ハワードには、このこと話さないでね」


「そうですな、その方が良いでしょう。レオ様がひどい目にあったと知ったら、計画関係なく暴れるでしょうから」


「だよね」


二人で頷きあう。


「レオ様、この後ですが着替えをご用意しますので、お着替えしていただいた後、別館へ移動するように話してまいります」


「そうだね、これは酷すぎるよね」


風魔法で刻まれてボロボロで、血も付いたままだ。


「うん。お願い。明日の予定もそのままだよね」


「はい、変更ございません。多少時間が前後するかも知れませんが」


「それは問題ないよ。ごちそうさま」


「では、着替えをお持ちいたします。それまで少しでもお休みください」


「うん、そうするよ。ありがとう」


ロベルトは片付けて部屋を出ていった。




俺はロベルトの足音が遠ざかったのを確認して、ベッドに横になる。

自分の腹を撫でる。


「ふぅ。ロベルトは、球体に気づかなかったみたいだな。良かった」


これに気づいたら、計画を中止にするだろう。

体に入った直後と違い、腹に球体としてあるのは認識できるが……それだけだ。

特に変化はない。


「まぁ、いいものじゃないのは確かだな。あのガキ、数カ月って言っていたな……」


この事は、誰にも言うつもりはない。


「どうしたものかな……。まぁ、なるようになるだろう」


この件を、片付けられる時間はあるだろう。

上手く利用できるといいのだが……。

何故か……恐怖はなかった。


「しかし、傷は痛いが……いいタイミングで怪我したと言うべきか。演技しなくて済むのは気が楽だ」


これからの事を考えていたら、寝てしまったようだ。

ロベルトに起こされる。


「レオ様、お時間です」


「ん……」


頭がボーっとする。これ血が足りてないな。


「失礼します。傷の具合をもう一度診ます」


そう言って、俺の服を手早く脱がし、傷を診て手当をする。


「……傷が多いですな。それに深い傷もあります。今日の夜は熱が出るかも知れません。

ポーションは飲まれないですよね?」


「ああ、俺の立場だったら、普通は飲めないだろう?」


「……はい」


苦い顔をするロベルト。


「化膿止めだけの、ポーションはあるか?」


思わず聞いていた。

あんな表情をされるとな……。


「ございます」


嬉しそうにポーションを出して渡してくる。

出すの早いな。

思わず苦笑する。


「ありがとう」


ポーションを飲む、無味無臭だ。


「どうされました?」


「いや、味がないなと思って」


「苦いポーションならありますよ? レオ様も飲まれています。ただ、覚えておいでではないかと」


意識がない時に飲まされているのか。


「そうなのか、効き目いいの?」


「はい。レオ様が証拠ですな」


「そ、そう」


「レオ様、こちらの服にお着替えをお願いします」


「わかった、ありがとう」


簡素なシャツとズボン。生地がゴワゴワしている。

傷が擦れて痛い。

思わず顔をしかめる。


「傷に障りますか……。人質の解放後に、すぐお着替えを致しましょう」


「はは、ありがとう。そこまでじゃないから、落ち着いたらお願い」


着替え終わる。


「レオ様、念の為、飲水と軽食をお持ちしましたので、収納をお願い致します」


「あぁ、わかった」


「では、参りましょう」


ロベルトに支えられ、部屋を出る。

殺風景な廊下に出る。


「失礼します」


ロベルトに抱えられる。

かなり恥ずかしいが、今は助かる。


「ありがとう」


「いえ、別館への移動は歩いていただかなくてはならないので」


申し訳なさそうに言う。


「気にしなくていいよ。何かあった?」


「……お子様が、私やメイドの付き添いを禁じました」


ロベルトから怒気と冷気が漏れる。


「あぁ、なるほどね」


「はい、昼過ぎに交代予定の用心棒が、一人残って待っております」


「わかった」


「ご安心ください。その者は寡黙ですが、暴力は振るいませんので」


「そうなんだ」


へぇ、そんな奴もいるのか。


「あちらから外へ出ます」


頷く。

さて、いよいよだ。


第10話は暴力描写がございます。

苦手な方は、お気をつけください。

よろしくお願いします

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