王都へ…
「という訳でウェイン、ガイの面倒は見てやってくれよな。あと報告や交渉はガイに任せたら良いから逃がさない様にだけは頼むよ。」
「お任せして下さいッス!兄弟だからって逃がしたりはしないッスよ!」
「頼もしいわね、逃がしたら帰ってきても新婚なのに1人暮らし生活が待っているけど心配は要らない様ね。」
「ぎゃあ〜っ!酷いッス!横暴ッス!」
「逃がさなければ良いんだよ、逃がさなければね…大丈夫。1人暮らしになったら小屋くらいは俺が用意してあげるからな…。」
「そんな優しさは要らないッス!しかも家じゃなく何気に小屋とか酷いッス!」
マサルとアデリナの無慈悲な説得に喜んで(?)任務を受理してポータリィムに向かう兄弟を見送り、マサルたちも王都に向けて出発する。
「じゃあ、俺たちも行きますか!」
「気が重いけど仕方ないわね。わたしが女王とかあり得ないけど、考えてみればある程度軌道に乗ったら誰かに後を任せれば良いわけだしね。」
「一代で軌道に乗るなら何処の国も苦労なんかしてないけどね?」
「………現実逃避くらいさせなさいよ!この悪魔!」
「ほら、さっさと乗ってくれよ!出発するぞ!」
「あっ、待って!今行くから!」
文句は言いつつも嬉しそうに助手席に乗るアデリナに、本当に国主を任せても大丈夫なのかと内心では心配していたマサルもその逞しさに呆れ、そして不安が消えていく。
「まぁ、俺たちで出来る限りサポートするから心配すんなよ。」
「えっ?何?」
「………いや、何でもないさ。じゃあ、出発!…とその前に…スマホを出して、ミュージックスタート!」
ポケットに突っ込んだスマホから有名戦闘機映画のテーマ曲が流れ出す。
「えっ?えっ?何!?」
マサルから流れる軽快な音楽にあたふたするアデリナを笑顔でスルーし、
「じゃあ、みんな宜しく!」
と合図を出すと、街の人々が車を押して勢いを付けてくれる。ゆっくり動きだした車体に人々は旅の安全を祈り声をかける。
「気をつけて行ってくるんだよ!」
「兄ちゃん姉ちゃん頑張って!」
「マサル!あんまり無茶するんじゃないわよ!」
「楽しんでおいでよ!」
口々にかけられる声にアデリナは照れ臭そうに、皆に手を振る。
「じゃあ、門からスピード出すからな。」
「…えっ?スピード?」
街の門には門番と一緒にメイの姿が。
「おにいちゃん!れでぃ〜ご〜なの!」
「おっしゃぁぁぁぁあぁぁっ!!」
メイの出した合図に気合いを入れてフルパワーでペダルに力を加える!
「きゃあぁぁぁっ!おにいちゃんすごいのっ!」
メイの歓喜の叫びに気分を良くしてドンドン加速していく為にペダルへの力を緩めない。
「ちょっとマサル!?スピード出しすぎよ!!」
「まだまだぁ〜っ!」
どんどん上がっていく速度にアデリナの顔はひきつっていく。この車の車高が低く乗り物と言ったら乗馬か馬車と言った視線の高い乗り物だっただけあって、一般的な自動車より更に低いこの車の視界は恐怖以外のなにものでも無かったのだ。
「ちょっと音楽の音が小さいな…ちょっとボリュームを上げて…。」
「ちょっとマサル!前っ!」
「ほえっ?」
ズドンっ!!
マサルがスマホを操作している間に木陰から飛び出てきたホブゴブリンは車の前に立ち塞がるように棍棒を構えるがそのまま跳ねられてしまった。
「きゃあぁぁぁあぁぁぁぁっ!」
飛び散る血と跳ねられて宙を舞うホブゴブリン…丁度マサルとアデリナの間を通り過ぎ遥か後方に置いてきぼりにされていく。
「アデリナ!?大丈夫か!?」
「……………………………。」
血の飛び散った顔を静かに拭きながら前を指さす。
「…………はい。ちゃんと前見て走ります。」
教訓。運転中のスマホの操作は絶対に止めましょう。
「………マサル…後で覚えてなさいよ。」
呟く様に言ったその言葉は妙にマサルの脳裏に響くのだった。
皆さんも走行中のスマホ操作は本当に危険ですので止めましょう。




