二匹目の影
士郎は立ち上がり、三階の窓から身を乗り出し、一気に下へと飛び降りた。
だが、そのまま地面に体を打ち付けて怪我をするでもなく、死ぬでもなく、やわらかく着地した。
ただそれだけの事だ、とでも言うように、訳も無くそれを実行していた。
そして、士郎は第六感とも、勘とも言える不確かな情報を元に、敵の位置を掴んだ。
「まずい、ユリアに近い、間に合うか?」
士郎は今度は人間にはありえない速度で戦場へ駆け出した。
病院を出た、すぐの道、闇夜にまぎれた敵の存在を眼で捉え、セイファはつぶやいた。
「ワイバーンか。」
空を飛ぶ、翼竜のような生物で、それよりも一回り大きい。
ワイバーンはセイファの存在に気付くと、空を滑るように滑空し、襲い掛かってきた。
丸腰のセイファは横に大きく跳び、前転し、ワイバーンのギロチンのような牙をかわした。
セイファは辺りを見回し、何か武器になるようなものが無いか探した。
その間にも、ワイバーンの第二撃が来る。
セイファは武器を探すのを諦めて、正面からワイバーンの攻撃を受け止めた。
セイファの体が引き裂かれた、かに見えたが、実際のところ、セイファはワイバーンの下あごの牙を左腕で、上あごの方を右腕で取っ組み合うように押さえつけていた。
ワイバーンのはその巨体にしては短い足を踏ん張らせて、セイファの体を押し返そうと努めた。
一進一退の構図だ。お互いに譲らず、力を入れて踏ん張り続けている。
が、この勝負は実は互角ではなかった。セイファの顔には明確な余裕があった。
「本来、私は力仕事を得意とするほうでないんだが。これはしかたがないな。」
セイファはワイバーンの牙を掴んでいるほうを両方とも引っこ抜いた。
「ギャギャアアアア。」
ワイバーンが叫び声をあげ仰け反った。しかし、セイファの攻撃の手は緩まない。
「すまないが、私の使命はお前を殺すことだ!」
セイファはワイバーンの巨体に思いっきり蹴りを入れた。
ワイバーンの眼が白黒し、そのまま倒れた。
完璧にその活動は停止していた。
「武器があれば苦しませることも無かったかもしれないな。」
セイファは眼を閉じ、ワイバーンに黙祷を捧げると。
病院の方に戻りユリアを迎えに行こうとした。
すると、病院の方からガラスの割れる音がした。
病院にいる人々の悲鳴も聞こえた。
ワイバーンらしき影が一面にはってあるガラスをぶち破り、中に侵入したのだった。
セイファは慌てて後ろを振り返った。そこにはちゃんと、ワイバーンが横たわっている。
「まさか、二匹いたのか!?」




