二回目の目覚め
一つの命が儚く散った。
士郎はその光景を呆然と見詰めていた。
完璧に倒したはずの怪物が、今、戦友の体を噛み砕いている。
その兵士の名前を何人かが叫んだ。
「マックス!」
ヨルムンガンドはマックスの体をそのまま持ち上げ、飲み込んだ。
ゴクリ、と比喩ではなく気味の悪い音が聞こえてきた。
マックスは悲鳴も、苦しむ声もあげることなく、怪物の体内に入った。
しかし、ヨルムンガンドはそこで止まる事は無かった。
次なる獲物を視界に捉えると、鎌首をもたげ、再び襲い掛かる。
「ひっ!」
たじろいだ兵士の一人の体が引き裂かれる。
またも、命が消える。次々にそれは続いていった。
怪物は怒り狂ったように兵士達を丸呑みにしていく、だれもそれに抗えなかった。
かろうじて銃を撃つ兵士がいても、それはなんの効果も無い。
まさにむだな足掻きだった。
そして、遂にヨルムンガンドは士郎の前にも迫ってきた。
その眼は爛々と輝いていて、血走っている、大きく開かれた口からは血がたれていた。
士郎は死を予感した。死神がもう既にそこまで迫っている。
本能がそれを直感し、士郎の体全体にそれが波及した。
―このとき、死って物が急に近くに感じたんだ。
そうしたら、頭の中がクリーンになって、そう、イグナさんとの訓練で何度か感じたあの感覚。
そでもれ以上に、僕はこみ上げてくる怒りを強く感じていた。
仲間達を葬った、目の前の敵を倒したい。いや、絶対に倒す。
今の僕なら、それが出来ると思った。
時間の流れが遅くなったかのように、状況を全て支配しているかのような奇妙な陶酔感に浸っていたこの時の自分なら。
士郎は急激に遅くなったヨルムンガンドの動きを見切り、大きく横っ飛びに飛んだ。
ヨルムンガンドの牙が空を切る。
士郎はすかさず、銃剣をヨルムンガンドの右目目掛けて突き出した。
突き出した銃剣はヨルムンガンドの眼に真っ直ぐに突き刺さり血しぶきを上げる。
「キシャアアアアアア!」
ヨルムンガンドは妙に高い音でうめきながら、頭を左へ反らした。
剣の切っ先が眼から引き抜かれ、血が転々と純白の雪を汚し、士郎の体に返り血となって、ニ、三滴かかった。
だが、士郎はそんなことには構わずに追撃を開始する。
ヨルムンガンドが身をくねらせ、再び大きく口を開いて、士郎へと襲い掛かる。
「見えてるよ。」
士郎はボソッとつぶやいて、身をひねり、今度はヨルムンガンドの左目を目掛けて思いっきり、両手で突き刺した、今度は抜けないように深く深く、そして、士郎は引き金を引き続けた。
ヨルムンガンドは今度こそ、完璧に死に至り、デナリ山に静寂が訪れた。
―そこからの記憶が無い。
気付いたら、僕は病室のベッドで横たわっていた。
起き上がろうとすると、体中が悲鳴を上げた、激痛が走る。
ベッドの横にはユリアが居て、心配そうに僕のことを見つめていた




