20.
「――え?」
「あれ?」
「ここは……」
――その次の瞬間、気づけば一同は荒涼たる景色の、まさしくただ中にいた。
「またかよ、本当いきなりだな……」
そう、ガルフが知らず呆れて呟いたように、またもや視界が淡い、朧ろな光でつかの間覆われた、そのすぐ後のこと。
「ようやく戻ったか……」
「でも、何もない――これって、ロランが目覚めたから?」
すなわちそこは紛れもない現実世界、広大な沼の中にポツンと浮かんだあの小島の上だったのだ。
「ああ。全て終わったよ。もう、夢は消えた」
かくてどこか疲れた口ぶりで、リロイがアリソンへ説明してやったように。しかもなぜか見えるのはねじくれた木々に草で覆われた地面のみと、今まで彷徨っていたはずの館の姿が、跡形もなく完全に消え去っていた中。まるで最初から、そんなもの存在すらしなかったかの如く。
「ふうん……」
とはいえアリソンにおいては、そのことに関してさほど満足感感じていなかったようだが。それはむろん事態の余りの急変ぶりについていけなかったからだろうが、あるいはそこにはまた別の原因もあったのかもしれない。つまりは夢魔の零した最後の涙、あれをしかと目撃してしまったからには。
「……ロランも、結構罪な男ね」
「何?」
「仕方ないとはいえ、最後なんだからもうちょっと温かい言葉を掛けてあげても」
……離れた位置にいる、今まさに目覚めたばかりと地面からむっくり起き上がった吸血鬼見つめ、ふとそうした一言洩らしながら。はたしてどこか非難するがごとき響き、そこには含まれていて。
「別れの言葉か。なるほど、君には冷たく聞こえたか?」
「もちろん。何だかあっさりしていたし」
「だがあいつなりに、あれは珍しく結構気持ちが入っていたはずだぜ。ああ、長い付き合いだから分かる」
もっともそんな曾孫見つめ、対するリロイは苦笑浮かべつつなだめの声、掛けてきただけだったものの。
「そうかなあ……」
もちろん少女に変わらず釈然としない表情、示させたまま。
まあいずれにせよ、これで長い長い冒険の末、ついにリロイ三人の家臣が揃ったのは紛れもない事実だったのであり。つまりは、巨人アウゴエイデス復活の、まさに大いなる鍵となる。
「とにかく、ようやく三人が無事勢揃いしたんだ。喜ぼうじゃないか」
「え? う、うん、それはそうだけど」
「これで、後はアウゴエイデスを……」
それゆえ本来なら、そんなアリソンはともかくとして他の皆は当然ひとまず仕事終えたことにひとしおならぬ歓喜、覚えても良いところだったのだが。そう、何より早く、待ちに待った帰路へと着くべく――
「ム!」
「あ!」
「な、何だ?!」
――しかし好事魔多しと言うべきか、息つく暇もなくその時突然コールたちが上げた驚きの叫びが、たちまちにしてそうした朗らかな空気、無残にも切り裂いてしまったのである。




