1.
ワルプルギスの夜。
それは五人の魔女たちが君臨する、冷酷なる支配の時代。
古の帝国に代わって打ち立てられた、新たなる国家体制。
――魔術と計略の坩堝。
すなわちあの史上初めて機械で創られた巨人たちが姿見せた恐るべき大戦、<巨人戦役>の後、今や世界は五つの広大なるテマ(軍管区)に画然と切り分けられており。
リュクサリア、トラグザ、ヘルメイス、パンドーラ、イクティオン。
そう、各々その名で呼ばれる、五つの専制国家に。
それも精緻極まる、完璧な統制の網の目でもって。
つまりはそれぞれが師より受け継いだ神にも等しき超兵器、手にした魔女たち。そんな彼女たちが深謀遠慮をもって生み出したこの新たなる世界は、かくて以前の歴史とは違って余りにも完成され過ぎていたのだから。
まるでそれ自体が、精妙にして神聖な機械仕掛けででもあるかのような。
永久に、そして不変に果てしなく続く。
それゆえその五頭政治は何の妨害も抵抗もなく、栄華の絶頂にあるとすら思われ、反乱の兆し、むろんどんなに周到に練ろうとことごとく次々摘み取られてゆくまま、一つの大いなるシステムを形作っていくのだろう。
全ては五人のどこまでも果てしない権勢欲、満たすためだけに……。
ひたすら堅牢と。
誰一人、敵などもはやどこにも探すこと出来ず。
――ソーサリス。
皇帝に代わって登場した、威光と絶望常にその傍らに侍らせた名を持った、魔女たちの恐怖すべき世紀においては。
それがまさしく歴史的必然、それ以外の何物でもなかった以上。
そうして訪れたのは、まさに怪しげな魔性の香り漂わせてゆく時代。
まさしく、地上に悪魔たちが我が物顔で跋扈する――。
そして、それゆえに。
魔道暦107年。
かようにかつてないほど魔術で彩られた世界には魔女に対する者など存在しようはずもなく、そう、どれだけ救い求める声上げようとも、それはどこにも届くことあり得ず、――ただ畏れとともに平伏し、仰ぎ見るだけの時が流れていって、
それは民にとっての救済か、あるいは戒めか。
いずれにせよ広きに渡る大陸全土を遥か見渡せど、この昏く重い状況を打破できる力持つ者など、決して見つかるはずがない、……それが全ての人々の今共有する動かし難い事実だったのは間違いなかったのであり、
<黎明の巨人使い>
むろん遠い昔そう呼ばれ脅威された一人の偉大なる魔道士がいたことなど、完全に皆の記憶から幻の如く消え去っていたのも、また当然のことでしかないのだった――。




