その4
「水助、水助、どうしたの?」
「う、う~ん……」
いつも聞きなれた声に、水助はゆめの中から目を覚ましました。水助の目の前にいるのは、大好きなお母さんのすがたです。
「母ちゃん、どうしてここに……」
「だって、水助がうめき声を上げていたんだもの」
お母さんは、たった1人の子どもである水助のことがどうしても心配でたまりません。水助はお母さんの顔を見ていると、自分のふとんの中が冷たくなっていることに気づきました。
「も、もしかして……」
水助が不安そうな顔つきになる中、お母さんはそっとかけぶとんに手をのばそうとしています。これを見た水助は、あわてた様子で大きな声を上げました。
「わわわっ! めくったらダメ!」
思わずさけんだ水助ですが、その前にかけぶとんがお母さんによってめくられました。すると、水助ははらがけの下を両手でかくしながらはずかしがっています。
「母ちゃん、ごめんなさい……」
「ふふふ、今日も見事にやっちゃったんだね」
水助のおふとんには、いつも通りにでっかいおねしょがえがかれています。自分がやってしまった大失敗をお母さんに見られて、水助は顔を赤らめながらモジモジしています。
「おねしょしたって、お母さんは気にしていないからね」
「う、うん……」
お母さんは、おねしょした水助にやさしい笑みをうかべながら言葉をかけています。けれども、水助は自分のおねしょぶとんを見ながらしょんぼりしています。
小さい家の外にある物ほしには、水助にとって見られたくないものがほされています。そこには、水助がえがいてしまったおねしょのおふとんがあります。
「きのう、水助はスイカをいっぱい食べたんだもの。だから、こんなに見事なおねしょをしちゃったね」
「で、でへへ……」
水助は大好きなスイカをよく食べるので、その分だけおねしょも大きくえがかれています。暑いときにぴったりのスイカですが、当面の間は水助に食べさせるのはおあずけになりそうです。
「ふふふ、水助のはらがけもほさないといけないね」
お母さんの手に持っているのは、水助がおねしょしたばかりのはらがけです。はらがけの下のほうを見ると、水助がやってしまったおねしょでぬれていることがわかります。
そんな2人が庭にいるところへ、近所の子どもたちがやってきました。水助は、はずかしいものを見せたくないとおねしょぶとんをかくそうとしています。
しかし、どんなにかくそうとしても他の子どもたちにはおふとんが見えていることに変わりありません。
「わ~い! 水助くん、10才になってもまだおねしょするの?」
「おねしょ! おねしょ! おねしょ!」
「わわわっ! こっちを見ちゃダメ!」
子どもたちがおねしょをはやし立てると、はらがけ1まいでいつもすごす水助は顔を赤くしながら自分のふとんを見せないように必死になっています。そこへやってきたお母さんは、水助が大失敗したはらがけを子供たちの目の前に出しました。
「わ~っ! はずかしいからやめて! やめて!」
思わずさけび声を上げた水助ですが、自分がおねしょしたはらがけもお母さんを通して子供たちに見られてしまいました。
その様子を遠くからながめているのは、水助のゆめの中に出てきたカエルじいやです。
「はっはっは! あのぼうや、今日もおねしょをしてしまったのか。10才なっても、あれだけの大失敗をするのはさすがとしかいいようがないなあ」
いつものようにくり返す水助のおねしょが完全に治るには、まだまだ時間がかかりそうです。




