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STAR・BLAZES  作者: 水無月 明
第1章,星の精鋭達
17/21

死者の軍団

◎今回登場する敵:

☆降魔族:

★首領・魔皇アスラ

★骸魔・ガオウ

★骸兵



 息を切らしながら森を突き出ると頭上から眩しい光がアレン達を照らし、温かい空気が身を包み込んだ。

 振り向くと異形の者達が追ってくる気配は無かった。さらにアイファが言うには地面の下から気配はするが、出てくる気配は無いと言う。


「……まさか」


 アレンは顔を上げて太陽を見上げて考えた。雲1つ無い青い空には太陽が燦々と輝いていた。

 一説では細胞を活性化させるフォジャン式とグラム式の作用は太陽の輝きと同じ効果を持っていると言う……、その説を考慮するなら異形の者達は太陽に弱いと言う事になる。

 アレン達はバッファローが停泊している場所まで向かうと乗車して現場を後にした。

 

 サリーが車を走らせ、助手席に座ったアレンはフェニックスに無線を入れた。

 案の定と言うべきかバッファローの無線も使い物にならなくなっていた。だがしばらく呼びかける内にフェニックスと連絡が取れるようになった。

 アレンは直ちに今まで起こった事を報告した。


『まさか、そんな事が……』


 ルイスは口ごもった。

 対応をしてくれているルイスも信じられないと言った感じだった。確かにこんな状況など信じろと言う方が無理だった。

 だがルイス達が調べている事件も電波障害や内側から掘り起こされたクレーターの痕を考えれば辻褄が合う……、ましてアレンが嘘を言うとは思えなかった。

 それに物的証拠は手元にある、サリーに回収させたサンプルだった。


「とにかくジンも負傷している事だし、精密検査をするから医務室の用意をしておいてくれ……、詳しい事はその後話し合おう」


 そう言うとアレンは無線を切った。

 すると後部座席のジンが怒鳴り込んできた。


「おい、オレは治っただろ! 検査なんて大げだ!」

「そうも行かない、帰ったら精密検査だ。これは命令だ」

「……チッ」


 ジンは舌打ちをした。

 もしあの異形の者達の瘴気が人体に異常を来たす毒素を含んでいるならば精密検査が必要だ。本人が大丈夫と言っても知らぬ内に体に異常が起こっている可能性もあるからだ。

 まして相手は正体の知れない存在、注意するに越した事は無かった。それに映画や漫画では無いが、あの異形の者達に襲われて同じ存在になるかもしれないとアレンも思っていた。

 フェニックスに到着するまでの間、ジンの応急手当が行われた。勿論こんな事はマニュアルには書かれていないので、毒を持つ生物に対しての対処だった。

 ジンの場合は被害を受けたのは両手と右足の脛のみ、両腕と右足の膝から下を捻った包帯をきつく巻きつけた。

 本当なら一刻も早くフェニックスまで戻らなければならないが、あまり急いで車体が揺れ動けば毒の促進が速まるので、なるべく速度を落して第33支部へ車を走らせた。


 車を走らせてから2時間後、アレン達はフェニックスへ帰艦した。

 フェニックスに向かうとルイスが準備してくれていた医療班がジンをストレッチャーの上に乗せると医務室へ運んで行った。その際ジンは不満げに不貞腐れていたのは言うまでも無かった。

 勿論攻撃を受けないとは言え現場に行ったアレン達も男女別れてレントゲン・赤外線・脳波を検査し、異常が無い事が分かるとアレンとアイファは指令室、サリーはサンプルを持って研究室へ向かった。研究室にはテレビ電話があるので、実験をしながら報告するとの事だった。

 アレンとアイファが指令室に到着すると早速作戦会議が行われた。アレンは今までの事を説明した。


「そうか、まるで映画みたいな話だな」


 マーカーもアレンと同じ事を言った。

 勿論アレンを疑っている訳ではないが、にわかに信じがたいと言った感じだった。

しかしアレンは良い続けた。


「奴等は人間ではありません、遠慮する必要は無いでしょう……、ガオウの捜索もそうですけど、今は奴等の事を優先するべきです」

「そうだよ~、あいつら昼間は良いけど、夜になったら出てきちゃうよ~っ!」

「分かった。そう言う事情ならナイトの使用を許可する……、サリーの方でも何か分かったかな?」

「通信してみますか?」


 ルイスが尋ねたその時だった。

 突然マーカーの背後のモニターに研究室にいるサリーが映し出された。

 研究室の壁際には1台百万もしそうな機材や実験器具の入った棚が並び、中央に置かれた無数のテーブルには白衣を羽織ったサリーより大人の科学者達が向かい合わせに座ってサリーが持って来たサンプルの分析を行っていた。

 科学者はざっと数えて20人はいるだろう、それぞれデジタル顕微鏡で分析する者、フラスコや試験管の中に入れて様々な色の薬品と混ぜて反応を調べる者、それをアルコールランプの火で熱する者等役割は様々で、その中には制服の上から白衣を羽織ったサリーが実験結果をまとめていた。

 そのサリーがマーカーに言って来た。


『司令、隊長、今の所いくつか分かった事がある』

「何か分かったのか?」

『いや、黒い結晶体の分析や雑草が腐食した理由もまだ分からない、何せ初めての事だから……、ただ連中の肉片の分析は終った』

「どうだったんだ?」


 アレンは尋ねる。

 するとサリーは少し戸惑った様子で目を泳がせると、やがて切り出した感じで言って来た。


『これは人間の細胞だった。しかも復元した形跡がある』

「復元?」

『この細胞は一度停止して腐食していた。つまり連中は元々死んでた事になる』


 サリーの言葉に全員が言葉に詰まった。

 つまり死体が無理やり動いて襲ってきた事になる。

 するとユウトが言って来た。


「なぁ、もしかして隊長達が戦ってた奴らって……、墓荒らしが盗モンじゃねぇのか?」

「飛躍しすぎですわ、さっきも言いましたけど死んだ人間を生き返らせる魔法なんてある訳ありませんわ」

「いや、ユウトの考えが妥当かもしれないな……、例え生き返らせるのは無理でも、何かしらのトリックで動かすのは可能かも知れないな」

「あるいはロスト・テクノロジーの可能性もありますね」

「じゃあ何か? 墓荒らしの犯人が死体を動かしてガオウを誘拐したってのか? 何の為に???」

「そんなの、首謀者に聞いてみない限り分かりませんわ」

「でもどこにいるのかしら?」

「心当たりはある」


 ルイスが考えるとアレンが言って来た。

 ガオウ襲撃事件からしばらく時間が立っている、夜になれば移動できるにも関わらずあの森の中にいた。つまりあの森の中がアジトと言う事になる……、生きているかどうかは分からないが、ガオウの手掛かりもあるのは間違いないだろう。

 話が決まった所でマーカーは指令を出した。


「よし、ならやる事は決まったな、今回の任務は事件の首謀者の正体を突き止めてその目的を解明する事だ。夜まであまり時間は無い……、できれば2時間以内に全て終らせよう、各自出撃の準備をしておいてくれ!」

「「「「「了解ッ!」」」」」


 スター・ブレイズ達は立ち上がると敬礼をした。


 マーカーは全職員に対してスクランブルを出した。

 途端フェニックス内が慌しくなり、各職員達は上から下への大騒ぎとなった。格納庫では整備班によるナイトのチェックが行われ、医療班もジンの精密検査が急がれた。

 さらに食堂は大忙しだった。何しろいつもの様に悠長に食事など摂っている暇は無いからだ。スクランブル時は作業効率を優先させる為に軽めの食事と決まっていた。

 よってサンドイッチか、ジパーダに伝わる伝統的なファースト・フード『おむすび』のどちらかを選び、食べ終えた順番から仕事に戻った。

 アレンは手押し式のワゴンの上にサンドイッチと無数の紙コップと飲み物が入ったポットを乗せると研究室へ向かった。

 本来ならば食事の配達も食堂班の仕事なのだが、解析班の様子を見たかったアレンが配達をする事になった。

 研究室に到着し、部屋をノックして扉を開けた。


「皆さん、お待ちどう様」

「隊長!?」

「差し入れを持って来たよ」


 アレンはワゴンと供に部屋に入ると誇り除けに被せてあったフードカバーを外し、重ねてあった紙コップを並べるとポットの中の飲み物を注ぎこんだ。

 研究班の人間達は作業を一時中断すると1人づつ自分の分を受け取った。しかし1人だけ、サリーだけが顕微鏡を眺めていた。

 するとアレンがサリーの横に彼女の分のサンドイッチとコーヒーを持って来た。サリーはアレンの気配に顔を背けた。


「隊長」

「一休みしよう」

「で、でも……、まだ奴等の弱点が」

「隊長命令だ」

「……了解」


 サリーは渋々作業を中断した。

 サリーはアレンからコーヒーとサンドイッチを受け取った。

 サリーも科学班の手伝いをしているとは言えスター・ブレイズの隊員である以上、出撃に備えて食事を摂っておく必要がある、だがサリーはサンドイッチにもコーヒーにも口をつけようとしなかった。

 アレンはサリーがメンチカツサンドが好物だと言う事を知って用意して来た。しかし隊員達の中で1番の大食漢のサリーにとって珍しい事だった。


 サリーは異形の者達の存在に大きく心が乱れていた。

 何しろ映画や漫画の中でしか出てこないような存在だ。科学主義であるサリーにとってこの状況はそう簡単に受け入れられるものではなかった。

 するとサリーはアレンに尋ねた。


「隊長、聞いて良い?」

「何?」

「今回、私達が戦うのね?」

「ああ、司令からの命令だ」

「……勝てる、の?」


 サリーの声はとてもか細かった。

 サリーは勝てる確率を前提に考えて動くタイプ、今まで戦ってきた敵は不可解な存在もいるが、それでも怪獣や人間などれっきとした人間だ。それだけでも心のモチベーションは安定している。

 しかし今回の相手は死人、しかもどんな原理で動いているのか分からない相手に対してサリーの心は不安で覆われていた。

 するとアレンは言った。


「さぁな」

「さぁって……」

「当たり前だろ……、って言うか、今までだって勝てるなんて思った事は無いよ」

「……嘘?」


 サリーは信じられないと言った顔だった。

 アレンは今までどんな強敵も倒してピンチも切り抜けてきた。さらにデスクワークの時も書類でミスをした事も無いし、日々の鍛錬を怠った事は無い……、そんなアレンが『思った事は無い』と曖昧な返事をした。

 しかしアレンは嘘をつくような人間ではないし、嘘を付いて何か得をする訳でもない、アレンの言っている事は真実だった。

 するとアレンは微笑しながら続けて言って来た。


「言っとくけどオレだって人間だ。失敗だってするし、できない事だってある……、ただ、どんな事でもやってみなければ分からないんじゃないか?」

「……そんなの、理由になってない」

「そうだろうね、でもオレは諦めない……、だから君も諦めずに対処法を見つけてくれ」


 アレンはそれだけ言うとサリーに背を向けて歩き出した。

 サリーはそんなアレンの背を見ながら言葉の意味を考えた。


 それから数時間後、第33支部よりフェニックスが飛び立った。

 通常ならバッファローで行くのが当たり前だが、フェニックスならば現場までの距離はあっと言う間だが、停泊できる場所が無い為に空中で静止すると格納庫のハッチが開き、中からナイトを装着したスター・ブレイズ隊が飛び降りた。

 ルイス・ジン・リリーナ・ユウト・アイファの5人はナイトのホバーリング機能を利用すると落下速度を激減させて地面に着地した。

 アレンに関してはナイトを使う訳には行かないので、代わりに反重力装置内蔵の黒いベルトが付いたバックパック『フライング・パック』を背負って空に飛び出した。そしてある程度降下すると右側のベルトに取り付けられていたボタンを押した。

 するとフライング・パックの両サイドに取り付けられた2つの反重力装置が起動し、落下速度が落ちるとアレンは無事着地した。

 そして部下達に言った。


「各自、敵陣に突入する! 今回のはまだ正体の知れない相手だ。各自気をつけて戦うように」

「「「「「了解!」」」」」


 ルイス達は敬礼すると得物を構えて森の中へ飛び込んだ。

 夜の中は昼間よりも更に不気味な不意息に包まれ、昼間とは違い冷たい空気に包まれていた。

 夜の森は視界が悪く歩き難い、幸いな事に規模はそれ程大きくないので遭難する事は無いが、異形の者達は地中を移動できるのでどこから現れるのか分からない……、連中にとってここは有利な場所だ。

 勿論それは想定済みだった。地中からならアイファが察知できる、さらに現在スター・ブレイズ達のナイトのヘルメットには赤外線機能が内蔵され、装着されたカメラを通してゴーグルに目の光景が鮮明に映し出されていた。

 だが問題は異形の者達との戦闘だった。話によれば異形の者達が現れそうになると電子機器に異常が訪れる、つまりその時が戦闘開始の合図だった。

 そしてその時が訪れた。


「んっ?」

「どうしたルイス?」

「隊長……、きゃああっ!?」

「ルイス! ……ッ!!」


 アレンは背後を見た。

 すると闇の中で無数の赤黒い不気味な光がこちらに近づいてきているのが見えた。しかもその数は昼間見た倍はあった。

 そしてスター・ブレイズ隊の耳にあの唸り声が響いた。


『ヴヴヴゥゥゥ……ッ!』

『アアアァァァ……ッ!』


 アレン達の背筋に悪寒が走った。

 想定はしていた。ナイトも所詮機械の鎧、異形の者達が現れると言う事はナイトが使えなくなる場合も考えていた。現にナイトの各起動系が火を噴いて動かなくなってしまった。

 勿論想定していたと言う事は対処法も考えていた。


「皆、ナイトを解除して通常戦闘に切り替えろ! そして防毒マスクを被るんだ!」

「りょ、了解!」

「た、隊長! 早くしてくれ!」

「少し待ってろ!」


 アレンは地面に肩膝を付けると持って来たアタッシュ・ケースを地面に置いて鍵を開けて蓋を開いた。中に収められていたのは人数分のゴーグル付きの防毒マスクだった。

 異形の者達との戦闘ともなれば連中が発する異臭も障害となる、果たしてこの防毒マスクが通用するかどうかは分からないし気休めかもしれないが、少しでも集中する為に用意して置く必要があった。

 その後素早く立ち上がったアレンは1番近くにいたユウトの正面に立つと右手を伸ばしてバックル中央部分に親指を押し当てた。途端ナイトの結合部分が音を立てながら分解し、ユウトはナイトを脱ぎ捨てた。

 ナイトには機体に異常が起こった時の為に緊急解除装置が取り付けられいる、装置はバックル部分にあり、強く押せば自動的に機能を停止する事ができる、ユウトはナイトに取り付けていた自分の刀を取るとアレンから防毒マスクを手に取り、マスクを被って刀を抜刀した。

 アレンは次々に仲間達のナイトを解除して行くと、残りの隊員達も防毒マスクを手にとって被って戦闘に備えた。

 そしてアレンはルイスに命令した。


「ルイス、あれを頼む」

「了解!」


 ルイスは自分のナイトの左腰部分に装備されていた大型の拳銃を手に取ると両手で構えて銃口を空に向けて引き金を引いた。


バアアン!

 

 轟音が轟き、銃口から放たれた弾が青葉を突き破って空に飛び上がると大きく爆ぜて周囲を照らし出した。

これは第33支部から借りてきた夜間戦闘訓練用の照明弾だった。これを撃つと5分~10分の間、周囲が昼間のように明るくなるのだった。

 真っ暗だった森の中は昼間の街中ほどではないが視界は良好になった。


 異形の者達は昼間の時とは変わっていた。

 いや、大した変化は無い、だが顔が猛々しくなり、異臭の方も昼間の物よりも酷い物となっていた。

 異形の者達は時間が立つとさらに強力になるのだろう、全身から噴出すどす黒いオーラにより足元の草が腐食するどころかボロボロになり、樹木の方も倒れて朽ちて行った。

 黒いオーラに触れるのは危険すぎる、ここは距離をとっての遠距離攻撃の方が合理的だった。

 アレンは懐から実弾式の拳銃を、ルイスは自分のナイトに取り付けてあったライフルを手に取り構えた。

 レーザー銃が使えないとなると実弾式しかない、レーザー銃のエネルギー・パックと違って重くてになるし、実際に撃てる回数も少ないので無駄遣いはできないが、それでも持って来れるだけの銃と実弾を持って来た。


「ルイス、訓練の見せ所だ。リリーナも準備ができたら攻撃してくれ!」

「了解!」

「はい、アレン様!」


 アレンの左右に立ったルイスとリリーナは得物を構えた。

 アレンとルイスが照準を合わせる中、リリーナは意識を集中させて呪文を唱えた。

 そして準備ができたところで先にアレンとルイスが攻撃を開始した。


「撃てぇ!」


 アレンが叫ぶと2人は異形の者達を攻撃した。

 引き金を引くと轟音と供に発砲された銃弾が空気の壁を突き破って異形の者達の額を攻撃した。

 銃弾は結晶体に当たると粉々に砕け散り、結晶体を失った異形の者達はその場に崩れ落ちると肉体が溶けて骨だけとなった。

 そしてその直後にリリーナの準備が完了した。彼女の足元に真紅の魔法陣が浮かび上り無数の炎が尾を引きながら噴出すと彼女の周囲でテニス・ボールくらいの炎の球体となり、さらに左手に持ったルーン文字の書かれた白い弓の先端に炎の弦が出来上がった。

 この弓は前にいた部隊に入隊した時に与えられた物だった。能力は強化型に装備されているルーン・アローを小型化したような物で、威力こそ低い物の使い手の魔力と威力を増幅させる能力があった。

 リリーナは炎の弦に手を当てると引き絞って解き放った。


「ギガ・ファイザ!」


 リリーナが弦を射ると周囲の球体から無数の紅蓮の炎が矢となり飛んで行った。

 炎の矢は木々を迂回して目的に突き刺さった。突き刺さった箇所から炎が噴出すと忽ち異形の者達の体を包み込んだ。


『ウウウウゥゥゥーーーッ!!』

『アアアアァァァーーーッ!!』


 火達磨となった異形の者達は悲痛な声を上げながら四散し、その腐食した体を消し炭に変えた。

 作戦会議の時、異形の者達の対抗策を考えた。通常の攻撃は効果が無い、レーザー銃などの近代兵器も通用しない……、そうなると自動拳銃による攻撃か魔法攻撃となる。

 だが魔法攻撃と言えど相手がどんなダメージも通用しないとなると一気に体を破壊する必要がある、そうなると炎で焼き払う事が最適と考えた。

 案の定効果はてき面だった。相手は異形とは言え相手が人間の体である以上体内にあるリンにより発火し炎上する……、そして原型をとどめない位破壊すれば動けなくなる事も分かった。


 しかし遠距離攻撃には限りがある、弾の補充や呪文の詠唱などかかる時間はどうしても防ぐ事はできなかった。

 その僅かな時間を防ぐのは前衛で戦う者達の仕事だった。ジン・ユウト・アイファの3 人は得物を構えて飛び掛った。

 だが3人は無理をしてまで必要は無かった。3人とも魔法は使えるがジンのグラム式はそれ程の効果は無い、そうなると対抗策の1つはやはりアイファとユウトだった。


「はああああっ!」


 この中で1番連中の危険を知っているアイファだったが、恐怖を押し殺して地面を蹴って飛び込むと異形の者達に距離を詰めて左手を突き出し、フォジャン式魔法を解き放った。

 その白い手の平から眩い光が発せられると黒い結晶体が砕け散り、光を受けた箇所がドロドロに溶解して骨だけとなって崩れ落ちた。

 フォジャン式も有効だった。他の異形の者達も本能でアイファの魔法が脅威と察知していたのだろう、アイファに近づこうとはしなかった。


 一方、ユウトは深く息を吐いた。

 そしてユウトは刀の柄を両手で握り締め、上段に構えた。


「正直得意じゃねぇけど……、やるっきゃねぇか」

 

 ユウトは愚痴を零した。

 そして目を閉じて意識を集中させるとユウトを中心とした周りの雑草が木々の青葉が音を立てながらざわめき始め、刀の刀身に空気が渦を巻いて集まった。

 ユウトの故郷ジパーダではかつて魔法は『法術』または『陰陽術』などと言った様々な名称で呼ばれていた。

 サイクル自体はベルシエール式と同じで自分と自然界の魔力をブレンドして放つと言う物だが、発動には呪文の書かれた札や武具などを媒介にする必要があった。

 勿論その媒介が強ければ強いほど扱える魔法の威力が高くなるが、裏を返せば媒介が無ければ発動出着ない事になる……、さらに使える魔法は『木』・『火』・『土』・『金』・『水』の5つの属性に分かれているのだが、魔法よりも剣を尊ぶジパーダ人にとって、いつしか法力は『無ければ困るがそれ程でも』と言う物になってしまった。

 ユウト自身も剣のトレーニング中は生き生きとしていたが、魔法のトレーニングはどうしても集中できなかった。


「おらあああぁぁーーーーっ!」


 ユウトは風の巻きついた刀を振り降ろした。

 途端巻きついた風が半月型の刃になって飛んで行くと、ユウトの直線状にいる異形の者を真っ二つに切り裂いた。

 異形の者は左肩から右わき腹までを切り裂かれると臓物と体液をぶち撒きながらその場に崩れ落ちた。

 臓物と体液がかかった雑草は異臭を放って腐り落ちた。


「まだまだぁーーーっ!」


 ユウトは更に空気の刃を飛ばして攻撃した。

 空気の刃は異形の者達を次々に切り裂いて行った。

 しかし切断されても異形の者は上半身を這わせてスター・ブレイズ立ちに向かってきていた。一方下半身は黒い結晶体の影響が無くなった為にドロドロに溶解した。

 やはりユウトの攻撃は魔法とは言え切断なので物理攻撃と変わらないのだろう、しかしそれでも動きを食い止めるのでまだマシだった。

 銃弾の装填を終えたアレン達は再び射撃を開始した。次々と異形の者達はただの白骨となって行った。

 しかしいつまでもここにいる訳にも行かない、この事件に黒幕がいるならその黒幕を何とかしない限り同じ事が起こる、ここは二手に分かれた方が得策だった。


「リリーナ、アイファ、君達はオレと一緒に突入してくれ……、ルイス達はこいつ等を始末してきてくれ、ただ連中は地中からも来るから気をつけろ!」

「了解! 2人供お願い!」

「おう!」

「分かった」


 ルイス・ユウト・ジンはそれぞれ返事をした。


「アイファ、最も危険なするのはどっちだ?」

「えっと……、あっち! あっちから凄く強い気配がする」

「リリーナ!」

「はいっ!」


 リリーナはアイファ……、と言うよりアレンの命令道理に再びマジック・アローを構えた。

 その方向には異形の者達が集中している、その方向目掛けてリリーナは別の呪文を唱えた。

 途端彼女の周囲にできていた炎の球体が弓の先端にバスケット・ボールくらいの大きさの球体となって炎の弦を引いた。


「ギガ・ファイザッ!」


 リリーナが弓を射ると大きな球体から高密度で圧縮された巨大な炎が噴出すと、その先にいた異形の者達全てを飲み込んだ。

 飲み込まれた異形の者達は骨も残らず消滅し、アレン達の行く道が切り開かれた。

 アレン・リリーナ・アイファはその道を通って森の中へ走って行った。


 アレン達が森の奥へ進むに連れて森の内部は酷い物になっていた。

 かつては太陽の光を浴びて青々としていただろう青葉は全て落ちて腐り果て、立派に生えていただろう木々も黒く細くなり枯れていた。

 そしてこの森で生息していただろう鳥獣や怪獣達の腐乱死体が散乱していた。肉は溶け、骨や露出し、臓物には蟲が湧いている……、まさに地獄のような光景だった。

 勿論地中から異形の者達が現れてアレン達の道を塞いだ。だがリリーナとアイファの2人の魔法により異形の者達は倒れて行った。 


「本当に気色悪いですわ……、帰ったらシャワー浴びないと……」

 

 それをなるべく見ない様にアレンの後ろを走っていたリリーナとアイファも吐きたくなるこの状況を我慢していた。第一防毒マスクをしているのに嘔吐しよう物なら大変だった。

 勿論それはアレンもそうだった。このマスクが無ければ恐らく気が狂っていてもおかしくない、マスクに感謝だった。


 その頃。

 アスラは目の前にぶら下がる巨大な繭の鼓動が強い光を放っていた。

繭を見ながら腕を組んでいたアスラの後ろに黒い影が浮かび上がるとアスラに言って来た。


『もう直ぐ出来上がるな、上手くできているかどうかは分からんがな』

「どうせ死ぬ命だったのを拾ってやったのだ。感謝はされど咎められる言われは無い……、失敗した所でまた作れば良いだけの事だ」

『クククッ、面白い奴だ。良いだろう、お前に任せよう』


 静かに黒い影は消えてなくなるとアスラは静かに目を閉じて組んでいた手を解き、右手を腰に当てると不敵な笑みを浮かべた。


「フン、まぁ、見ていろ……、全ては我々の目的の為だ」


 アスラは鼻で笑うとうっすらと目を開いた。

 すると繭の点滅が終ると周囲が再び暗闇に包まれた。普通の人間ならば見える事は無いのだが、アスラにはこの暗闇の中でも昼間の表のように見えていた。

 だがそれはアスラ『だけ』ではなかった。

 繭の一部が裂けるとそこから粘り気のある液体と供に黒く大きな物がズルリと滑り落ちた。

 異臭を放ち、粘つく液体に包まれた黒い『それ』は上手く動けないのだろう、しばらくの間は地面にへばりついていたが、やがて震える両手を地面に押し当てると力を入れて上半身を押し上げた。

 黒い皮膚に真っ白な髪の『それ』は結膜部分が黒くなり、真っ赤になった瞳孔の眼で自分の目の前にいる少年を見上げた。

 すると少年は口を三日月形に開いて尋ねて来た。


「おはよう、生まれ変わった気分はどうだ?」

『ウウッ、グッ! ガァァ!』


 アスラが尋ねると『それ』は突然苦しみ出して頭を抑えた。


『……ウウッ! 頭ガ、痛イ……、……俺……、ドウナッタンダ?』

「細かい事は気にするな、力が溢れてくるだろう?」

『……チ、カ、ラ……、……力……溢レ……、ググッ!!』

「そうだ。お前は生まれ変わったのだ。この腐敗しきった世の中に復讐するべくな」

『……復讐?』

「そうだ。恨め、憎め、お前をそんな風にした人間達を、その人間達を生み出してきたこの世界をな!」

『ウウッ! グウウッ!』


 頭を抱えたまま立ち上がると黒い瞳を吊り上げて鋸の様に並んだ鋭い歯を軋ませると全身からどす黒い煙が噴出した。

 その様子を見て嘲笑していたアスラだったが、何かに気付くと顔色を変えて目を鋭く細めた。


「ムッ?」


 自分達がいる場所に向かってとても『強い力』が近づいている……、それも陽に満ち、生に溢れる不快な力だった。

 いずれ戻って来るとは思っていた。もし戻って来なければこちらから出向き、街を襲うつもりだった。

 手間が省けるとはまさにこの事……、その気配にアスラは昼間の者達だと言う事を察した。そして新しく一族に加えたそれに向かって命令を下した。


「もう直ぐここにお前を陥れた者達が来る、その者達に生まれ変わったお前の力を見せ付けてやれ」

『ウウッ! 許サ、無イ……、ニンゲン……、皆殺シダ!!』

「そうだ。『骸魔がいま』となった力でこの世を闇に包み込むのだ。行け『ガオウ』よ!」

『グオオオオオーーーーーーーッ!!』


 アスラが言うとガオウは口を大きく開けて吠え出した。

 それは雄叫びと言うより音の爆弾と呼ぶべきだろう、音量と衝撃により岩壁と天井に亀裂が入り、ガラガラと音を立てて崩れ出した。

 洞窟が崩壊する中、アスラの背後に黒く巨大な渦ができるとガオウに背を向けて渦の中へ消えて行った。

第17話アップしました。

長い間更新が止まってしまい申し訳ありませんでした。

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