誇りの尊さ
◎今回登場する敵:
☆剣帝会
★四刃将・胴凱圭吾(龍の秘宝)
幻かと思った。
一瞬何が起こったのか分からなかった。
突然胴凱が持つ宝玉から眩い光が溢れると、その光の中から赤い龍が飛び出して胴凱の体中に纏わり付いた。
腕や足、胴回りに絡まりつき、最後に大きく上あごを開いた龍の口が頭に被さって具現化た。
鋭い2本の角の生えた龍の頭を模して中央に紫の丸い水晶と吊り上がった瞳の兜、6つに分かれた白い腹筋と赤い鱗の胸部と3本の鉤爪が鷲づかみにした青い水晶がはめ込まれた肩と背中からは2本の尻尾が生えた鎧、赤い鱗の篭手、楕円形を描いた腰当て、つま先が3本に分かれた赤い鱗の具足の鎧となった。
「それが、龍の秘宝?」
アレンは目を細めた。
アレンは進一から聞いた事を思い出した。
この辺りに棲んでいた『龍神の亡骸』から造られた。
無論アレンは神など信じてはいない、神なんていれば戦争は起こらないし差別も無いからだ。
しかし迷信にはそれなりの真実と言う物が存在する、それは神とて例外では無かった。
人間や怪獣が何かしらの理由で『神』と呼ばれる事もある……、推測でしかないが『龍神』とはこの辺りに棲んでいた古代生物か何かだろう、それから作られたと言う事はロスト・テクノロジーと言う事になる。
ロスト・テクノロジーとは遥か昔に開発・使用されていた古代の産物である。
今も尚シルバー・クレストの各惑星のどこかに眠っており、その全てを銀星系連合軍が回収・管理している。
しかし今優先すべき事はロスト・テクノロジーの回収でもテロリストの撲滅でもない、人質である御堂一家を解放するのが先決だった。
アレンは長剣を構えると切っ先を胴凱に向けた。
胴凱は現在の自分の姿を見てまだ状況を理解できずにいたが、兜の龍の目の部分が怪しく輝くとアレンの顔を見て鼻で笑った。
「ククク、なるほどな……、どうやら拙者にも運が向いてきたようだ。この力があればこの国は再び侍の物となる!」
胴凱はこの龍神の秘宝を身に纏ったのは初めてだ。
しかしこの鎧が凄まじき力を持っているのを一瞬にして理解した。
ロスト・テクノロジーを銀星系連合軍が改修しなけばならない理由は2つある。
1つは現代の技術を越えた物をほおって置いてうっかり起動させたら大惨事を引き起こしかねない為……、そしてもう1つは人の手、特にテロリストの手に渡らないようにする様にする為だった。
テロリストの手に渡れば現在のシルバー・クレストの力のバランスは崩れ、秩序は崩壊は崩壊する……、シルバー・ウォーズの戦火から折角得た平和が崩れるのは防がなければならない事だった。
しかし優先すべきは目の前……、と言うより後ろにある命だった。
御堂一家だけは絶対に守らなければならない、相手がロスト・テクノロジーの場合は状況によってはナイトの使用も許可されている……、しかし龍の鎧の性能と能力が分からない現状況では使うべきではなかった。
頭の中で状況を整理していると胴凱は目を吊り上げて言って来た。
「かつてこの国は我等刀を持つ者達で溢れていた。しかし星人供との戦争に敗北したが為、我等は生ける屍と化した!」
胴凱は語る。
かつてこのジパーダは幕府により統括されていた。
しかし、突如訪れた異星の人間達との間に起こされたシルバー・ウォーズにより全てが変わった。
当時胴凱は兵を率いて最前線で戦っていたのだが、異星の武力に押されて敗戦確定と悟った幕府は即座に全面降伏を宣言し、幕府自体も解散された。
それにより多くの侍達は住む場所を追われ、胴凱本人も見知らぬ土地に流れ着いて意気喪失していた所を噂を聞きつけた剣帝会の者達にスカウトされて剣帝会に入ったのだった。
すると胴凱はアレンの向かって右手の人差し指をつきたてながら怒鳴りつけた。
「全ては貴様らの責だ! 貴様ら星人さえいなければこんな事にはならなかったんだ!」
「ふざけるなっ!」
アレンは一喝した。
アレンの叫びが木霊し、祭壇内に沈黙を走らせる。
そして一間置くとアレンは言って来た。
「戦争で皆苦しんでるのは同じだ。だが敗戦を理由に今を生きている人々の暮らしを脅かして良い理
由にはならないっ! 自分達だけが特別だと思うな!」
結果だけを見るならただの逆恨みだった。
確かに今まで剣に生きてきた者達にとっては住みにくい世界になった。
だがその代わり剣を持つものだけが優遇される事がなくなり、身分や生き方を縛られない世界となった。
かつてジパーダは刀を持つ者が優遇され、それ以外の者は平民や農民として暮していた。
しかし差別されているからこそ、問題が起こる事も多かった。
侍達は自分達の立場を利用して恐喝まがいの事をしていた。金品や家族などを奪い、最悪の場合は命を奪われる場合もあった。
無論ただの浪人程度ならば捕まって処分を受ける場合もあったが、それ以上の権力を持つ者達の場合は事件その物をもみ消されて泣き寝入りをするしかなかった。
勿論金を出せば侍にもなれるが、それはごく一部のもので、大半の者達は侍達の圧制に苦しんでいた。
「そのロスト・テクノロジーは回収する、お前を倒すっ!」
「やれる物ならやってみろ!」
そう言うと胴凱はカッと目を見開いた。
途端肩のショルダーの水晶が輝くとソフト・ボールくらいの紫色に燃え盛る火球が発射してアレンを襲った。
アレンはその場から横に飛んで回避すると今ままでいた場所が轟音を立てて爆ぜた。
土煙が晴れると攻撃された箇所は黒ずみ所々が真っ赤に溶解していた。
これは高密度に圧縮された熱エネルギーと言う証拠だった。1000度や2000度なんてレベルじゃない、恐らく生身の人間が食らえば骨も残らず消滅するのは間違いないだろう。
地面に転がったアレンはそのまま身を起こして体制を直した。すると同時に胴凱が上半身を少し折り曲げると背中の左右の龍の尾が伸びてアレンの方に向かって飛んで行った。
先端が反り返った鋭い刃となり、赤い鱗がびっしりと並び、細かい棘が鋸の様に並んだ無数の節が無数繋がった双尾はまるで意思を持つ様にくねりながらアレンを襲った。
アレンは長剣を振るうと金属を擦り会う鈍い音が響いた。縦横無尽に襲い来る龍の尾を防ぐのが精一杯で反撃に出る事が出来なかった。
それを少し離れた場所で見ていたアイファは槍を構えてアレンに加勢しようとした。
「隊ちょ~っ! アタシも戦う!」
「来るな! 皆を連れて逃げろ!」
「で、でも……」
「状況を考えろ! ここに来たのは何の為だ? 約束を守るんだろ? だったらその約束を果たすんんだ!」
アレンは叫んだ。
アイファは思い出した。それは御堂姉弟にした『必ず守る』と言う約束だった。
守ると言うのは別に戦って勝つと言う訳ではない、今自分達の後ろで庇われている者達の安全を確保するのも重要な事だった。
アイファは少し迷うと姉弟の父親の腕を自分の肩に回すと祭壇を後にした。
それを見た胴凱はアイファ達を攻撃しようとした。
「逃がすものかっ!」
胴凱の両肩が再び怪しい光を放った。
しかし素早くアレンが銃を引き抜いて胴凱目掛けて引き金を引いた。
銃口からレーザーが発射されると左肩が爆発した。
エネルギーを圧縮中に外側から放たれたエネルギーの銃弾により左側の球体が破壊された。
「ぐおおおっ?」
爆破の反動で胴凱の巨体が揺らいだ。
両足を踏ん張って倒れるのを防ぐが、自分の鎧(自分のではないが)を傷つけられた事にアレンの方を見て目を吊り上げた。
アレンは銃を引っ込めて叫んだ。
「そうはさせない!」
「き、貴様ぁああーーーッ!」
胴凱の頭に血が上ると両腕を強く振るった。
すると手の甲から4本の鉤爪が伸びると石畳を蹴って走り出した。
アレンは銃をホルダーにしまうと両手で柄を握り締めると胴凱に応戦した。
「はああっ!」
胴凱の両腕の鉤爪を長剣を払って懐に入り込んだアレンは手首を捻って胴凱の腹を切り裂いた。
しかし胴凱の鎧には傷1つ着いていなかった。
胴外も切られた箇所を見下ろして確かめる、鎧の性能を把握していなかったので、やや不安気味に顔を顰め、苦笑しながら言って来た。
「どうやら御自慢の剣も通用しないようだな……、今なら許してやらなくも無いぞ? 泣いて許しを請い、具足を舐めると言うのならな!」
「断る! テロリストに請う許しなんて無い!」
「フン、ならばくたばれ!」
再び胴凱は両手の鉤爪を振るって攻撃してきた。
アレンはそれを交わし、隙を見て反撃に出るが鎧はビクともしなかった。幾度も長剣を振るって斬撃を打ち込むが、鎧は亀裂が入るどころか欠ける様子すら見せなかった。
アレンの剣もネヴュラ・メタルで作られている、少なくともネヴュラ・メタルと同格かそれ以上の素材で作られている。
この土地に棲んでいた龍神はそれだけの存在……、さらにこれだけの力を作り出した文明もかなりのレベルだ。
そう悟ったアレンは懐に手を入れてライセンス・ギアを取り出した瞬間だった。胴凱の龍の兜の目がレーザーを放った。
「うわっ!」
アレンは身を屈めて交わすが、さらに追撃のレーザーが放たれた。
アレンはさらに横に飛んで交わすが、その隙を突いた胴凱が身を屈めると腰の翼部分が大きく広がった。
胴凱が石畳を蹴るとまるでジェット機のように滑空した。
あっという間に間合いを詰めると身を屈めて右肩を突き出してアレンに体当たりをした。
「ぐはぁああっ!」
アレンは体を曲まげると呼吸が止まり、意識が飛んだ。
そのまま壁の方まで飛んで行くとアレンはそのまま壁に叩きつけられた。
途端その場所に亀裂が入ると粉々に砕けちり、アレンの体は深々とめり込むとボキボキと言う肋骨が折れる音が響いた。
「がはああっ!」
アレンは口から大量の血を吐いた。
恐らくは内臓も痛めたのだろう、夥しい量の鮮血が石畳に零れ落ちた。
胴凱が離れるとアレンはその場に崩れ落ちた。
麻痺していた体に次第に激痛が走り、アレンは咳き込みながら顔を上げて胴凱をにらみつけた。
優勢になった胴凱はアレンを見下して鼻で笑った。
「おやおや、どうした。拙者を倒すんじゃなかったのか? ああん?」
「このっ……」
アレンは歯を食いしばって長剣を支えに立ち上がると渾身の力を込めて長剣を振るった。
「うおおおっ!」
「フンッ!」
しかし胴凱はアレンに即刀蹴りをお見舞いすると、アレンは再び壁に叩きつけられてその場に崩れ落ちた。
「ぐはあっ!」
最早呼吸する事自体が辛くなった。
痛みで全身の感覚が麻痺し、指一本動かす事が出来なくなった。
するとアレンから少し離れた胴凱がアレンに言った。
「本当なら貴様は八つ裂きにしたい所だが、生憎時間が無い、表に貴様の仲間達を始末してくれるわ!」
すると胴凱の龍の兜の角がバチバチと火花を放ち始めた。
そして天井を見上げると角から緑色の電撃のような物が放たれて天井を貫いた。
ガラガラと音を立てながら砕け散った天井がアレンの頭上に降り注ぎ、アレンは瓦礫の中に消えていった。
その頃、アイファは遺跡から抜け出した。
空から日差しが降り注ぎ、暖かい空気が身を包んだ。
「もう少しだから頑張って」
アイファは3人に言う。
すると、空からキィィン! と言う音が耳に入り、空を見上げるとイーグルがやって来た。
しかしこの辺りには着陸できる場所が無い為、上空を旋回していた。
アイファはライセンス・ギアを紛失している為に連絡を取る事が出着ない……、すると今度はクラクションの音が聞こえ、見ると遠くの方からもバッファローがやって来た。
バッファローの運転席からサリー、後部座席からナイトを装着したジンとリリーナが飛び出した。
怪我人がいる事が分かると、サリーはバッファローの助手席の中から救急箱を取り出して御堂姉弟の父を介抱した。
さらにバッファローの無線を使い、ルイスに人数分のナイトを投下してもらった。
そしてアイファは谷底に落ちてから今に至るまでの事をリリーナ達に話した。
「アレン様が? 貴女、それでのこのこ逃げてきたんですのっ?」
「そ、そんな事……」
「ふざけないで! アレン様に何かあったら……、一体どう責任取るつもりですのっ!?」
リリーナはアイファに平手打ちをお見舞いしようと右手を振り上げた。
だがそこをジンが無言で止めた。
リリーナは自分の細い腕をつかんでいるジンの右手を振り下ろそうとした。
「何ですのっ? 離しなさい!」
「寄せ」
「貴方、この小娘の味方をするんですの? アレン様が心配じゃないんですの?」
「……別に、あいつは死にはしねぇよ」
「はぁ? 何でそんな事が言えるんですの? いい加減な事を言わないで!」
「死んだら死んだでそれだけだ。それとも何か? お前はあいつを信じてねぇのか?」
「………」
リリーナは何も言えなくなった。
その姿を見た時、アイファはジンがそれほどアレンを信頼しているかを分かった。
いい加減な事など言っていない、そのそれだけの強い意思が瞳の中に秘められていた。
するとその時だ。
アイファの背筋に悪寒が走った。それは洞窟の方だった。
「皆逃げて!」
アイファが叫んだ。
途端、洞窟手前の地面が盛り上がって爆発した。
その中から胴凱が現れるとジンは身構え、リリーナは左手のルーン・アローを身構えた。
サリーもライセンス・ギアからレーザー・ライフルを召還して銃口を胴凱に向けた。
胴凱は周囲を見回すとアイファ以外の敵が現れた事に顔を顰めた。
「ぐっ、おのれ……、貴様ら星人供はどこまで莫迦にすれば気が済むのだっ!」
「はぁ? このゴリモグラ、何言ってるんですの?」
「アンタ……、隊ちょ~はどうしたのよ?」
アイファは恐る恐る尋ねる。
すると胴凱は鼻で笑いながら言って来た。
「フン、あの小僧は洞窟の中で生き埋めになっている、貴様らも後を追わせてやるぞ!」
「そ、そんな……」
アイファは息を呑んだ。
とても信じられなかった。しかし胴凱がこの場にいるのが何よりの証拠だ。
今までどんなピンチにも駆けつけてくれた。どんな状況でも諦めずに勇敢に戦い勝利した。あれだけ強いアレンが負けた。
信じられない事実に直面すると人間は思考が停止し、目の前が真っ白になると言う……、今のアイファがまさにそうだった。
しかし残りの者達は違った。
リリーナは憧れの人がやられた事に怒りに身を震わせ、サリーも得物を持つ手に力が入った。
ジンは相変わらず無表情だが内心は別だった。勿論戦闘民族ゆえに戦いで死ぬのは承知している、だが折角心を開く事が出来た人間に怒りを燃やしていた。
その頃。
大聖堂の一角で瓦礫の中に埋もれていたアレンは目を覚ました。
そんなに時間は経っていないだろうが、気を失っていた事を理解した。
そして胴凱の事を思い出すと意識が覚醒した。
「不味い! 奴が……、外に出たら」
アレンは身をゆすって瓦礫をどかそうとするが、怪我をしている上に重たい瓦礫をどかす事は出来なかった。
となると抜け出す方法はただ1つだった。
アレンは血まみれの手を伸ばすと、懐の中からライセンス・ギアを取り出してアプリを押そうとしたその時だった。
突然アレンの耳に何かが滴り落ちる音が聞こえ、強烈な臭いが鼻腔を突いた。
「何だ? この臭いは?」
明らかに刺激臭だった。
胴凱が仕掛けた爆薬かと思われていたが、それなら自分は今頃この世にいないはずだ。
だとしたら残るはただ1つ、この遺跡……、性格には大聖堂の外側の土の中に溜まっていたと言う事になる。
するとアレンは進一から聞いた言い伝えの事を思い出すと『ある事』に気がついた。
「そうか、そういう事か!」
アレンは装着アプリを押した。
その頃。
御堂一家をバッファロー内に案内するとサリーとアイファは自分のナイトへ向かった。
無論装着してくれるのを待つほど敵はお人よしではないが、その隙を作ってくれたのはリリーナとジンだった。
リリーナのルーン・アローで魔力を強化した火炎魔法の矢が放たれて胴凱を襲った。しかし胴凱が目の前で両手を交差させると鉄板に当たった水鉄砲のように弾かれて散り散りになった。
「フン、所詮この程度か! その程度では話にならんぞ!」
「……野郎っ」
次に仕掛けたのはジンだった。
ジンは波動を発動させると突進し、渾身の右ストレートが胴凱の胸に激突する、しかしジンの拳も胴凱には通じなかった。
胴凱は歯を見せてジンを見下すが、ジンはは歯を軋ませて眉間に皺を寄せると、さらに左手を引くと今度はラッシュ・パンチをお見舞いした。
しかしビクともしなかった。それでも諦めずに殴り続けたジンだったが、冷たい気配を感じた。
「おらあっ!」
胴凱は両手を下から振るってジンの拳を弾くと、両手から生やした鉤爪を攻撃した。
胴凱の爪が振るわれる度にジンのナイトのから鈍い音が走りって火花が飛び散った。
ジンは後ずさりをするが踏ん張って倒れるのを防ぐと胴凱の追撃を両手を構えて反撃を防いだ。
胴凱の猛攻は続き、龍の爪がジンの強化型ナイトを傷つけてゆく、そして最後に強力な一撃がアッパー・カットが炸裂した。
「そぉらあ!」
「ぐはああっ!」
右手の渾身の攻撃が繰り出されるとジンは吹き飛ばされて地面に転がった。
自分の目の前に転がり、一切自分に手が出せなくなった事に胴凱は大声を上げて笑い出した。
「どうした。どうした? 星人供が戦争に勝てたのはまぐれではないのか? 我が鎧には傷1つ付けられんわ」
決して自分の物ではない、だが胴凱は完全に自分の力と自惚れていた。
しかし悔しいが龍の鎧をどうにかしなければ胴凱を倒す事は出来なかった。
だが強化型ナイトでいくら戦っても勝ち目は無い、せめてアレンがいれば……
そう思っていると胴凱は鉤爪を向けながら言って来た。
「諦めろ、貴様らにはもう勝ち目は無い……、大体あれだけ大口叩いてた小僧も我に手も足も出せずに負けたのだ。貴様らも大人しく降伏した方が身の為だぞ?」
「ハッ、冗談じゃありませんわ、このデカゴリラ!」
するとリリーナが吐き捨てた。
一間置くとルーン・アローを向けながら言い放った。
「少し有利だからなんですの? 図体のクセに頭の中は幼稚ですのね、頭の中だけ成長してないんじゃないんですの?」
「な、何だと貴様ッ!」
「大体、アレン様が貴方ごときに負けるなんてありえませんわ……、先ほど『生き埋め』と申されましたけど、死体の確認はしたのでしょうね?」
「ぬっ? そ、それは……」
「そんな事だと思いましたわ、これだから脳筋は困りますわ」
「お、おのれ小娘が~~っ!」
毒舌のリリーナの言葉に図星を指された胴凱はワナワナと震え出した。
しかし諦めていないのは他の者達も同じだった。
ジンも立ち上がり、アイファもへヴィ・パニッシャーを構え、ナイトを装着し終えたサリーも両肩の砲口を胴凱に向けた。
緊迫した空気が彼らの間を吹き抜ける中、仕掛けてきたのは胴凱だった。
右肩の水晶が光り輝いて火炎球が放たれた。
「くらええぇぇーーーっ!」
火炎弾は轟音を立てながら飛んで行く。
だがサリーがツイン・キャノンを放つと胴凱の攻撃と相殺し爆発した。
胴凱の火炎球の威力はサリーのツイン・キャノンと同格となる、片方がアレンに潰されていなければ力負けしていただろう、そしてその隙を狙ってアイファとジンが飛び掛った。
2人がかりで攻撃を繰り出すと胴凱の龍の瞳が輝いた。途端左手からも鉤爪が飛び出すと大地を蹴って突進した。
間合いを詰めた3人の猛攻が火花を散らして繰り広げられた。
アイファがグラビティ・パニッシャーを振い、ジンがへヴィ・ナックルの突きを繰り出すと胴凱が両手の爪を振るってなぎ払った。
するとそこに離れた場所でルーン・アローを構えていたリリーナが呪文を唱えていた。
リリーナの足元に魔法陣が浮かび上がるとそこから稲妻がほとばしり、ルーン・アローに吸い込まれていった。
「どきなさいっ!」
リリーナが目をカッと見開いて叫んだ。
同時にアイファ・ジンは左右に飛んで交わすと、リリーナは金色に輝くルーン・アローを胴凱に向けると電撃の弦と矢が現れた。
そしてありったけの魔力を込めた雷撃の矢を胴凱に解き放った。
「ギガ・ライザーッ!」
光を越える矢の圧力が空を裂き、土煙を巻き上げると胴凱に命中した。
胴凱は両手を交差させて敵の魔法を防御するが、ありったけの雷撃をその身に浴びて苦しんだ。
「ぐおおおおっ!」
いくら強力な硬度を誇ろうが金属部分が使われている事は変わらない、それを通って中身にダメージを与えていた。
体が強張り、筋肉が引きつって相手の動きが止まった瞬間を狙い、サリーの全ランチャー・パックが火を噴いた。
胴凱はたちまち轟音と供に爆煙に包まれると全員のありったけの攻撃が終った。
ジンとアイファが間合いを開け、魔力を使い切ったリリーナも両肩を落とした。
「どうですの?」
「これで終ってくれたらな~……」
アイファは言った。
これで胴凱を戦闘不能に出来ればアレンの元へ行ける……、もし胴凱の言う事が本当ならば一刻も早く助けなければならない。
だが時に現実は願望をことごとく砕く物だった。
爆煙が散り散りに吹き飛ばされ、その中から胴凱が現れた。
しかも最悪な事はまだ続く、またも鎧は傷1つ付けられ無かった。
「くっ!」
アイファは歯を軋ませた。
胴凱は息を切らせながら目を吊り上げた。
ダメージが無い訳ではない、しかし致命傷と言う訳には行かなかった。
すると胴凱が言った。
「今のは効いたぞ、だがここまでのようだな」
胴凱は一歩前に踏み出した。
スター・ブレイズ達も飛びかかろうと足に力を入れた。
しかし手が無いのは事実だった。
この中でフルで戦えるのはジンとアイファ、魔力が尽きたリリーナはしばらく戦闘不能、サリーはツイン・キャノンのチャージにしばらく時間が掛かった。
するとその時だった。
背後の洞窟が爆発するとナイトを装着したアレンが飛び出した。
その光景に敵味方問わずに目を見開いた。
「隊ちょ~っ!」
アイファは叫ぶ、すると今まで強張っていた顔が和らいで笑みが戻った。
勿論それは周りの者達も同じだった。ジンは鼻で笑い、リリーナやサリーも胸につかえていた物が取れた。
だが胴凱は別だった。
胴凱は眉間に皺を寄せるとアレンに向かって右手人差し指を向けて言った。
「き、貴様……、不死身かっ?」
するとアレンが言い返した。
「そう簡単に死んでられないんだよ、守る者がある限りはな!」
アレンは右手にオーラ・ブレードを召還した。
するとアレンのゴーグルに胴凱の姿が映し出され、鎧のデータがスキャニングされた。
いくら強力なオーバー・テクノロジーでもどこかしらに弱点はあるはず、先人は悪用を恐れて封印したのがその証拠だ。
つまり鎧のどこかにセーフティ装置があるに違いなかった。
するとアレンは龍の額の水晶にエネルギーが結集しているのが分かった。そこが弱点だ。
一方冷静さを無くした胴凱は雄たけびを上げながらアレンに突進した。
「がああああーーーっ!」
最早こうなると獣も同然だった。
アレンも目を見開くと刀身に金色のエネルギーが灯った。
同時にアレンも大地を蹴って走り出した。
「うおおおおーーーーっ!」
アレンは身を低くするとすれ違い様に一撃食らわせた。
オーラ・ブレードの斬撃に腹部に亀裂が走った。
「なにぃ?」
鎧の破損に胴凱は息を呑んだ。
個人型が強力なのもあるだろうが、防御力を過信しすぎて攻撃を受け続けてきたのが仇となったのだ。
そして足首を捻って振り返るとオーラ・ブレードを振りかざした。そして同じく振り返った胴凱に向かって渾身の力で竹割に振り下ろした。
一閃! オーラ・ブレードが額の水晶を砕いた。
「ぐあああああっ!」
胴凱は叫んだ。
途端胴凱の鎧が光を放って消滅、元のボロボロの鎧の姿となって倒れて気を失った。
龍の鎧はひび割れた水晶体に戻ると胴凱の足元に転がった。
それと同時にアレンの個人型ナイトの制限時間が切れた。
戦いが終って仲間達がアレンの下へ向かおうとするが、突然アレンが膝を着いて倒れた。
「隊ちょ~っ?」
「アレン様っ!」
慌ててアイファ達は慌てて近づいた。
バッファローから降りた沙耶と進一も驚いてアレンの下へ駆けつけた。
そしてジンがうつ伏せにアレンを仰向けにし、シャツを引き千切ると、その下の状況に皆顔を顰めた。
「……ひ、酷い」
「チッ!」
リリーナは口を押さえ呟い、ジンは舌打ちをした。
ふとサリーを見ると、サリーは首を横に振った。詳しく調べる事はできないが、彼女が言うには肋骨が砕けて内臓が破れていると言う……、最早手の施しようが無かった。
例えここがフェニックスの医療室だったとしても治す事は不可能だった。
皆何も出来ずに意気喪失している時だった。
アイファは両手を見るとアレンの胸にかざして目を閉じた。
「貴女! 何してるんですの? またふざけたマネを……」
「待って」
食って掛かるリリーナをサリーが止めた。
途端アイファの両手から柔らかい光が放たれてアレンを包み込んだ。
するとみるみる傷が塞がって行き、苦しみうめき声を上げていたアレンの表情が和らいで行った。
その光景に周囲の者達が目を見開いていると、アレンはゆっくり目を覚ました。
ゆっくりと体を起こし、自分の体を見回した。
「……これは」
「傷が、治った?」
「すごい……」
皆アイファの方を見る。
アイファは顔を顰めて目を背けた。
またこの力を……、自分が気味悪がられると思ったのだろう、一応気功と言ってしまえばそれだけだが、嘘もいつまで続くか分からない。
するとアレンは頭に手を載せると笑みを浮かべながら言って来た。
「ありがとう」
最早2人の間に言葉はらなかった。
訳が分からずに目を細めているジンとサリー、嫉妬に歯を軋ませているリリーナの姿があったが、アイファはいつも以上の笑みを浮かべながら頷いた。
戦いは終わった。
胴凱を含めた遺跡から逃走する際に合流した小刀衆は全て捕縛、剣帝会・首魁と幹部1人は逃走した。
全ての武装を取り外され、駆けつけたジパーダ支部第8支部の者達により連行された。
そして話し合いの末に龍の秘法は銀星系連合軍が預かる事になり、村は再び静けさを取り戻し、平和な日々が訪れた。
村人に別れを告げ、フェニックスへ帰還したその翌日、スター・ブレイズは飛び発った。
司令室では昨日の事の報告書を作成していた。
デスクに座り、アイファは頭を描きながらアイファが言って来た。
「はぁ……、面倒くさいなぁ」
「仕方ないわよ、詳しい報告書を書けるのは、貴女と隊長だけなんだから」
ルイスは猫の絵が描かれたアイファ様のカップを持って来た。
「はぁ……、あんなのが秘法だったなんて、なくなってホント良かったよ~」
「そうね、人に迷惑をかけるロスト・テクノロジーは回収されるべきね」
「いや、秘法はまだ残ってるよ」
「ええっ?」
アレンが言うとアイファや他の人間達は振り向いた。
一点集中する中、アレンは言って来た。
「隊長、一体どう言う事? ロスト・テクノロジーがまだ残ってて、回収しなかったの?」
「って、それって違反じゃねぇかよ、良いのか隊長?」
ルイスとユウトは言って来た。
ユウトの言う通り、許可無くロスト・テクノロジー回収を怠れば条例違反とされ、隊その物の存続に関わる場合がある。
するとアレンはカップの飲み物を飲み、一間置きながら言って来た。
「アイファ、シンイチ君から聞いた言い伝え……、覚えてるか?」
「えっ? それって、昔あそこに龍神様が棲んでて……、その亡骸で武器を造ったって言ってた事?」
「もう1つあるだろ? それは『黒い涙』って部分だよ」
「何なのそれ?」
アイファが尋ねるとアレンは語った。
あの辺りの文明には龍神の元となった古代生物が生息していたのは間違いない……、先人達はその古代生物達から生成された化石燃料を生活エネルギーとして使っていたのだった。
その化石燃料を巡って争いが起き、追い詰められた先人達は龍神の骨や皮、鱗などを使ってあれだけ強力な鎧を造ったと言うのがアレンの考えだった。
長い歴史の中で伝説が鈍って伝わる事は良くある事……、本物の秘法は石油の方だったって事で、鎧の方はそれを守る道具と言う事になる。
とは言えあれだけ強力な物をほおって置く事はできない、ましてテロ組織が石油を独占されれば巨万の富を得て活動資金が無限大となってしまうだろう。
それを聞いたルイスは顎に手を当てながら言って来た。
「じゃあ、このまま黙ってた方がよさそうね」
「そうだな、あの村の為にもな」
アレンは言った。
するとアレンはアイファに尋ねた。
「ところでアイファ、今回どうだった?」
「えっ? どうだったって?」
「ジパーダ初体験、どうだった?」
「えっ? ああ……」
アイファは口ごもった。
アイファはジパーダに憧れていた。
しかし思っていた事と現実が違うなど良くある事、人間はそれに直面すると幻滅して離れて行ってしまう。
もちろん仕事とプライベートは別だ。しかしまた任務でジパーダに訪れた時に支障をきたす場合もある。
するとアイファは少し考えて答えた。
「良かったよ」
14話目です。
お楽しみいただければ幸いです。




