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STAR・BLAZES  作者: 水無月 明
第1章,星の精鋭達
11/21

アイファvs四刃将

◎今回登場する敵:

☆剣帝会

★首領、剣帝

★四刃将、魁面圭吾・胴凱玄弥

★小刀衆(戦闘員)

 時は少し前に遡る。


 夜の闇が日下部村を覆った。

虫達の合唱が奏でられる中、村のあちこちに篝火が焚かれると剣帝会の下級戦闘員・小刀衆が5人1組で待機していた。

 忌むべき星人が侵入したと聞き、剣帝会幹部・魁面圭吾が見張りの数を増やして襲撃に備えたのだった。

 小刀達は全員と言う訳ではないが弓を持ち、そしてすぐ側には沢山の矢が収納された矢筒が置かれていた。

 これは星人が落下傘などで上空から侵入しよう物ならば、弓を持たない小刀が矢筒から引っ張り出した矢に火を点け、それを弓を持つ小刀に渡して射ると言う計算だった。

 無論銃器の用意もしてあるのだが、それは貴重な上に数に限りがある、まして夜の空ならば火の矢の方がうってつけだった。


 その頃、集会場の客室では剣帝が退屈しのぎに書物に目を通していた。

 すると廊下に人の気配を感じて目を向けると襖の向こうに1人の小刀が片膝を床につけた。

 そして口元を覆っていた覆面を下にずらすと口を開いて言った。

「ご報告します。遺跡の入り口が発見されました。しかしこれが中々頑丈でして、破壊する事は不可能との事です」

「そうか、やはり鍵はあの娘達が持っているという事になるな…… そいつらもまだ見付からんのか?」

「ハッ、申し訳ございません」

 小刀は頭を下げた。

「魁面の言っていた星人の方はどうなっている? 魁面から何の報告も無いが……」

「そ、それは……」

 小刀は口を紡いだ。

 言えるはずが無かった。

 何しろ魁面は村に居座っている小刀衆の内、見張りに必要な人員を残して捜索隊を結成するとこう言った。

『我等の占領下に忌まわしき星人が侵入した。見つけるまで帰ってくるな!』

 それだけ命じると魁面はとっとと集会場の奥に引っ込み、村の娘達を無理やり抱え込んで酒を煽りだした。

 そして今ではすっかり泥酔して高鼾で眠っていた。

 小刀の沈黙を察した剣帝は呆れて溜息を零すと命じた。

「直ちに発掘に向かわせた労働者達を全員村に戻せ、人質が増えれば多少の時間稼ぎにはなるはずだ。そして夜が空けた後発掘隊の半分を逃げた娘達と星人の捜索に当てさせろ」

「ぎょ、御意!」

「それと『胴凱』も連れて行け、今まで発掘を優先させていたが、探し物はあいつの得意分野だ」

「仰せのままに!」

 小刀は力強く頷くとその場から立ち去って行った。

 誰の気配もなくなると剣帝は傍らに置いてある刀を見下ろした。

「やはりあいつらだけでは心もとないか……」


 その頃。

 自分達の占領下に入り込んだ侵入者を探すように命じられた剣帝会・小刀衆は松明を片手に手分けして滝壺に落ちたアイファを探していた。

 毒を食らい滝壺に落ちた以上命は無いだろうが、万が一戦闘になる事も考えて複数で行動していた。

 しかしいくら上の者の命令とは言え、本来夜の森は歩くべきではなかった。

 何しろ障害物が多く、夜と言う事で視界も悪い…… 怪我をしたり危険な怪獣と遭遇する可能性もあった。

 

 それからしばらく経って日が昇った。

 アイファの捜索に向かっていたある3人の小刀衆は不要になった松明の火を消すと舌打ちしながら言って来た。

「チッ、何で俺達がこんな事をしなきゃならないんだ?」

「仕方ないだろ、命令は命令だ。逆らう訳にもいかないだろ」

「しかし魁面様の臆病にも困ったモンだ。星人って言っても子供だろ? そんなに大げさに構える事か?」

「おい、滅多な事言うな、聞かれたらどうするんだよ?」

「大丈夫だよ、村からどんだけ離れてると思ってんだよ」

「そうそう、あの人は自分の手は汚す事ぁしねぇよ、剣帝に媚売ってるだけの小心者なんだからよ」

「違ぇねぇ」

 小刀衆は吐き捨てた。

 上司に対する不満はどこも同じだった。


 小刀達が茂みを抜けるとそこは河原だった。

 小さな白い石が並び、流れの弱い水が流れていた。

 そして川を越えた先には崖があり、小さな洞穴がぽっかりと空いていた。

「おい」

「ああ」

 戦闘を歩いていた小刀が後ろのを見ると野こりの2人も頷いて目を細めて息を殺し、腰の刀の柄を握り締めると脛まで浸かる川を渡って洞穴に向かって行った。

 そして左右に分かれて岩壁に背を当てると刀を引き抜いて中に入った。

 すると目の前に黒い物が覆いかぶさった。

「うおぅ!?」

 小刀は突然の事に取り乱して覆いかぶさった物を振り払おうとたじろいだ。

 すると瞬間、洞窟の中から飛び出した小柄な影が右足を振り上げて彼の顔面を蹴り出した。

「ほあちゃぁああーーーッ!」

 アイファの即刀蹴りが炸裂して小刀はくの字を描いて吹き飛ぶと石だらけの地面に倒れた。

「テ、テメェ!」

「このぉ!」

 背後から残り2人の小刀がアイファに向かって襲いかかった。

 2人供『生きているなら生け捕りにしろ』と言う命令を完全に忘れていた。

 仲間をやられて逆上した小刀の刃がアイファに迫る、しかしアイファはそれを読んでいた。

「アチャアアーーッ!」

 アイファは右足を一度引くと左足を捻って軽く跳躍すると右足を振り上げた。

次に下半身を捻るとバネを利用して強力な回し蹴りが炸裂し、アイファのブーツが小刀の刃をへし折った。

「なっ?」

「へっ?」

 小刀達は信じられなかった。

 折れた2つの刀身は宙で弧を描くと地面に突き刺さった。

 アイファのブーツには銀星系連合軍が開発した超合金『ネビュラ・メタル』が仕込まれていた。

 それは量産・強化型ナイトに使われているのと同じでもあり、全てと言う訳ではないがアイファや他の隊員達が使っている武器も同じ素材で作られている。

 ブーツに仕込まれているのはとても薄いが、それでもアイファの身のこなしとスピードにより鉄で出来た刀でもへし折る事が可能となった。

 小刀達は今が戦闘中だと言う事をすっかり忘れて自分の折れた刀を見て目を丸くしていた。

だが隙を狙ってすかさずアイファは向かって右側の小刀の水月に右肘を突きたてた。

「ぐほぉ!」

 途端その小刀は上半身を折り曲げると2~3歩後退する。

 するとすかさずアイファが右足を振り上げて小刀の顎に垂直蹴りをお見舞いした。

 水月同様人体の急所の1つである顎を蹴り飛ばされた小刀は大きく身を仰け反らせながら倒れた。

「こ、このガキィ!」

 残された小刀は折れた刀をアイファに振り下ろした。

 しかしアイファは横に跳んで交わした。

 仲間をやられて激昂した小刀は刀を振り回してアイファを攻撃した。

 しかしアイファは紙一重のところで交わすととっさに身を屈めると同時に足場の細かい石を掴み取り、小刀目掛けて放り投げた。

「ぐわあっ!?」

 小刀は目には入らなかっただろうが、細かい石が顔に当たる不快感に目を閉じて顔を強張らせた。

 しかしその瞬間、アイファは間合いに入って小刀の水月に即刀蹴りを放った。

「ぐおおっ!」

 小刀は目を見開くと動かなくなった。

 右手から力が抜けて刀がカランと地面に落ちるとその場に倒れた。


「ふぅ」

 敵を倒したアイファは一息吐くと洞窟の方へ向かって行き、中で待っていた御堂姉弟に言った。

「もういいよ、早く逃げよう!」

 すると洞窟の暗闇の中から沙耶に抱きかかえられた進一が現れた。

 2人は恐る恐る倒れている小刀3人組を見て顔を顰めた。

 恐らく怒っているのだろう、自分達はただその日を素朴ながらも幸せに暮らしていた。それを外から来て踏みにじり、村の人々を殺害した連中が今目の前で転がっている…… 本来なら仇を討ちたいほど憎い相手だった。

 しかし今はそんな事をしている場合ではなかった。急いでこの場を離れなければ連中の仲間がやって来て見付かってしまう。

 アイファは自分の上着を拾うと御堂姉弟と供に走り出した。


 この川を下った先にもう1つの洞窟があるらしい。

 しかしその場所は1キロ先にあると言う、こちらからは森の中が分からないが、森の中からではこちらからの様子は丸見えになる…… 相手が3人だから何とかなったものの、これ以上数が増えたら太刀うち不可能だった。

 しかし行くしかなかった。

 いずれは見付かったのだろうが、自分が来た責で追っ手が差し向けられ、その追っ手を3人も倒してしまったのだ。そうなると村にいる人質に危害を加えない保証は無かった。

 まして今の自分にはナイトはおろかライセンス・ギアも無い、いつも使っている昆を呼び出す事も出来なかった。

 まして周囲には昆の代わりになりそうな棒も見つからなかった。

 

 走り続ける事数十分、アイファならば多少息が切れるで済むだろうが民間人…… 特に若い娘と子供ならそうは行かない。

 しかも足場は無数の石が散乱しているので歩きにくい、周囲に注意を払いながら所々で休みを入れながら走らざる終えなかった。

 するとその時だ。

「うわあ!」

 突然進一がバランスを崩して転んでしまった。

 アイファと沙耶は足を止めて後ろを振り向いた。

「進一っ!」

「大丈夫?」

 2人は両膝を曲げて進一に尋ねた。

「う、うん…… 痛っ!」

 立ち上がろうとした進一だったが、突然右膝に痛みが走った。

 見ると袴の膝部分が破けてそこから覗く膝の頭が傷ついて真っ赤な血が吹き出ていた。

「大変っ!」

 沙耶は自分の巫女服の袖を破き、さらに歯で咥えて引き裂くと紐状にして進一の膝に巻きつけた。

 手慣れた物だった。

 スター・ブレイズでも週に一度、仲間達で救助訓練を行っている、人工呼吸や心臓マッサージなどは勿論、骨折や応急的な手術も心得ている。

 ただアイファやジンは不器用過ぎて包帯を巻くと必ず相手がミイラになってしまう、素人同然の沙耶と比べるとまさに天と地の差だった。

「これで良しっと、立てる?」

「う、うん……」

 進一は沙耶に手を取られて立ち上がった。

 骨は折れて無いだろうが痛みに顔を強張らせていた。

 ただの擦り傷にしても歩けば足に負担がかかる、最初の内は構わないだろうが後になると走る事はおろか歩く事自体が負担になって動けなくなる。

 そうなるとテロリスト達を追い払い村を取り戻したとしても生活に支障が出てしまう、そうなっては守っても意味は無い。

 するとアイファは背を向けると身を低くした。

「乗って!」

 アイファは言った。

 しかし進一はアイファに怯えているのか、顔を曇らせていた。

 進一はアイファの事を星人と言った。

 無論幼いので言葉の意味までは分からないが、少なくとも快くない者と思っていただろう。

 沙耶に窘められたが人の意識はそう簡単に変わる物ではない、まして出会って24時間も経ってない他人の背に乗るのには抵抗があった。

 しかし沙耶に説得されて進一はアイファの首に腕を回した。

 そしてアイファは進一の膝の裏に腕を回すと立ち上がって走り出した。

 アイファの純粋な腕力は隊員達の中でも下のほうだった。年相応なのだから当たり前だが、子供である進一を背負って走る分には問題は無かった。

 それから走り出してしばらく経った。

「おネーさん、まだ着かない?」

「もう少し…… あ、あそこです!」

 沙耶は指を差した。

 そこは川を越えた先にある岩壁だった。

 頂上から伸びている蔓草で隠れているが、良く見ると一か所だけが揺れ動いていた。

 これは内側から空気が流れている証拠だった。

 正直どこに繋がってるかも分からないが、今はこの状況から逃げ出す事が先決だった。

 アイファと沙耶は互いの顔を見て頷くと川河を渡ろうとした。

 するとその時、アイファの背筋に悪寒が走った。

「アイファさん?」

 足を止めたアイファに沙耶は振り返った。

 すると彼女達の耳に野太い声が響いた。

『フン、気づきやがったか』

 途端前方1~2メートル先の地面が爆弾でも爆ぜたかの様に吹き飛んだ。

 そしてその中から1人の大男が現れて右足で大地を踏みしめた。

 ジンの一回り大きい巨体、ガチガチの岩石のような体の上に鎖帷子、さらにその上から頭には首元まですっぽり覆う眉から顎までが露出した兜、両肩に鋭いスパイクの付いた黒い胴、腰にも肩同様スパイクの垂の付いた草摺、両手と脚には無数の鉄板の重なった小手と具足を装着していた。

 男は少し突き出た顎を引き、野太い眉を吊り上げると眼下の3人を見回すとアイファに向かって言った。

「貴様が剣帝の仰っていた星人か、まさか生きていたとはな」

「くっ、こんな時に……」

 アイファは顔を顰めた。

 しかし良い事は長く続かないのに対して悪い事は長く続くものだ。森の方がざわめき始めると武装した小刀衆が現れた。

「胴凱様っ!」

「おお、さすが胴凱様だ! もう星人と娘達を見つけたのですか!」

 小刀衆はアイファ達の周囲を取り囲んだ。

 小刀1人1人の実力は大した事は無い、しかし数からして勝ち目は無い、むしろ目の前の巨漢はこいつ等のボスであろう、明らかに気配が違った。

 小刀衆は刀を引き抜くと切っ先をアイファ達に向けた。

 アイファの背中の進一は震えだし、沙耶も身を強張らせた。

 するとどうした事だろう、胴凱は沙耶と進一を見ると小刀衆に言った。

「止せ、お前達は下がっていろ」

「はっ? し、しかし……」

「構わん、それにずっとあの遺跡の発掘で狭い所にいた責か体が鈍ってな…… どうも調子がでなくていかんのだ」

 胴凱は顔を顰めながら後頭部に右手を回して首を左右に捻った。

 いくら剣帝が偉いとは言え今の命令権は胴凱にある、小刀衆は互いに顔を見合わせると刀を下げた。

 首をグルリと時計回りに一回転させ、ゴキゴキと首の関節を鳴らしながら胴凱は残った左手の人差し指をアイファに向けて言った。

「星人の娘、1つ賭けをしようぞ」

「賭け?」

「そうだ。お前が拙者を倒す事が出来ればお前達を逃がしてやる、どうだ。簡単だろう?」

「ど、胴凱様っ!?」

「命令は守る! それとも何か? この胴凱がこんな小娘に負けるとでも言うのか?」

「い、いえ、そう言う訳では…… ただ、勝手な行いは剣帝の命令に背く事に!」

「お前達に責任は無い、少しくらいなら剣帝もお許しになるだろう」

 胴凱に言われると小刀達は口を紡いだ。

 するど胴凱はアイファに向かって再び尋ねた。

「どうするのだ? 賭けに乗るのか? それとも大人しく縛につくのか? どっちだ?」

「良く言うよ……」

 アイファは眉間に皺を寄せながら呟いた。

 いくら子供のアイファでも分かる、テロリストが約束を守る訳が無い。

 しかも話を聞く限りでは沙耶達姉弟はかなり重要な人物のようだ。連中は絶対に逃がすはずも無い。

 だが他に手が無かった。

「本当に…… 約束は守るんでしょうね?」

「ああ、この剣帝会・四刃将が1人、『胴凱玄弥』に二言は無い」

 胴凱は目を細めながら胡散臭いうすら笑いを浮かべた。

 アイファは口を紡ぐと進一を下ろすと沙耶に渡して言った。

「2人供、少し下がってて」

「アイファさん……」

 沙耶は進一の背中から肩に手を回してアイファを心配そうに見つめる。

 進一もアイファが心配なのだろう、ジッと見つめていた。

 気休めでしか無いが、アイファはそんな2人の不安を取り除こうと笑みを浮かべて頷いた。

 そして胴凱に面向かうと腰を低くして身構えた。

「フン、良い度胸だ。言っておくが子供とは言え容赦はせぬぞ、この薄汚い星人がッ!」

「ハッ、テロリストのクセに、偉そうにほざいてんじゃないわよ!」

 アイファは大地を蹴って走り出した。 

 一直線に進んで来るアイファに向かって胴凱は渾身の力を込めた右手を振り下ろした。

 しかしアイファの姿が消えて無くなると胴凱の拳が地面にめり込んだ。細かい石が粉々に砕かれると宙に舞った。

 胴凱の拳を寸の所で左に跳んだ交わしたアイファは靴の底を小石だらけの足場に擦って足跡を残した。

 両足に力を入れて踏ん張ると爪先で大地を蹴って再び胴凱に突進すると体を捻って跳躍し、右足に力を入れて振るった。

「アチャアァーーッ!」

 アイファの回し蹴りが炸裂した。

 しかし胴凱は右腕を引き抜くとそのまま自分の顔の横に持って来てアイファの攻撃をガードした。

 アイファのブーツの特殊合金と胴凱の鋼鉄の小手が衝突し合い鈍い音が響いた。

「くっ!」

 アイファは舌打ちをした。

 胴凱はニヤリと口の端を上げると右腕を払ってアイファを吹き飛ばした。

 アイファはこの葉の様に宙に舞うと弧を描きながら着地した。

 するとすかさず胴凱が襲いかかって来た。

「うぉおおおおーーっ!」

 胴凱は大きく咆えながら突進する。

 こう言った足場では胴凱の方が有利となる、何しろ体が大きければ体重も多い、まして鎧を着ている事から大地を細かい石ごと踏み砕いて付き進む事が出来るからだ。

 胴凱は間合いを詰めると握った両手の拳の内、右の拳を思い切り振り下ろした。

 アイファは寸の所で膝を曲げて顔面に当たるのを阻止する、だがそれを読んでいた胴凱は左手を下から振り上げた。

 強力なアッパーカットが炸裂する寸前、アイファは体を仰け反らせ、そのまま足に力を入れて飛びあがった。

 宙でクルリと回転すると両手を地面に当ててバク転して間合いを開ける。

 しかし胴凱は追撃の手を休める事無くアイファを攻撃した。

「うおおおぉぉーーーっ!」

 アイファが逃げる度に激しい拳の連打が地面に炸裂して鈍い音を立てながら穴を開けた。

 胴凱の腕力はジンと同格かそれ以上だ。もし自分で無くジンならば何とかなっただろう。

 せめてアイファがジンと同じくらいの身体能力を持っていたらと思ったのだが、やがて首から上は自分だが下がジンと言う姿でボディビルのサイド・チェストを取っている姿を思い浮かべて気持ち悪くなった。

 そんな姿、アレンだって引くに違いない…… 贅沢を言うならばリリーナが土下座して謝る位になりたいと思った。

 だがそんな事を考えて言うる場合じゃ無かった。

「はあああっ!」

 胴凱の渾身の力の一撃が放たれた。

 それと同時にアイファは膝のバネを使って大ジャンプ、胴凱の拳を交わした。

 胴凱の拳は先ほどまでの連打と違い右手に力を入れていた。その為に手首までしか地面にめり込んでいなかったのだが、今回は腕の半分くらいまで地面にめり込んだ。

 体制が低くなった事でアイファは右足を伸ばして胴凱の肩を蹴って二段ジャンプ、宙で弧を描きながら地面に降り立った。

「チッ、ちょこまかちょこまか…… 星人は勝て無い相手には逃げだす事しかできないのか?」

 明らかに挑発だった。

 それはアイファにも分かっている、しかしこの状況はアイファには不向きだった。 

 砂場程ではないが踏ん張りが効かずに細かい石で足元がグラついて上手く走る事が出来なかった。

 アイファには他の仲間達ほどの身体能力は無い。

 その為に人間の腕力の3倍はある脚力を利用した足技を中心に戦って来た。

 普通の人間程度ならば問題は無い、だが足場では十分な脚力を生かせず、まして胴凱の鎧は普通の鉄より丈夫な金属で作られているのだろう、傷一つ付ける事が出来なかった。

(ナイトでもあればな……)

 アイファは思った。

 しかし仮にナイトがあったとしても普通の人間に使う訳には行かなかった。

 ナイトは最新鋭の科学技術で作られたパワード・スーツ、かたや胴凱の鎧は幾ら頑丈とは言えただの鉄の塊、殴れば頭が吹き飛んでしまうだろう。

 しかもいくらテロリストとは言え抹殺許可の下りていない人間に使う事は許され無い、仮に使わなければならない状態だったとしても、それは部隊の司令官、もしくは隊長クラスの許可が必要になる、一般隊員のアイファにそんな権限は無かった。

 今の自分に出来る事はアレン達が駆け付けて来る事を信じて逃げ回る事だった。

 しかしそれもいつ間でも続かなかった。胴凱は手下の小刀達に尋ねた。

「おい、どのくらい経った?」

「ハッ、およそ20分ほどです」

「そのくらいか…… まぁ良い、十分体もほぐれたわ」

 懐中時計を取り出して時間を確認した小刀に胴凱は鼻で笑うとアイファを睨みつけた。

「遊びは終わりだ。離れていれば安全だと思うな!」

 胴凱は身を低くすると右手を腰の後ろに回した。

 右腰の部分に指が通る小さな輪が付いており、右指を通すと思い切り引っ張った。

 そこから小さな鎖が音を立てながら飛び出すと両肩のパーツが上下に開口すると左右に3本づつ、黒い筒が取り付けられ、さらにその筒の中には矢が装填されていた。

「くらえっ!」

 胴凱が目を見開くとさらに右手の鎖を引っ張っぱると肩の鎧の矢が一斉に放たれた。

 矢を飛ばすのに弓は必要ない、筒の中に仕込まれたバネの力で飛ばしたのだった。

 矢は風を切って飛んでアイファ目がけて飛んで行くが、レーザー光線を交わす事が出来るアイファに取ってはどうと言う事は無かった。

 アイファはその矢を横に跳んで交わそうとした。しかし!

「あっ!」

 交わす事が出来なかった。

 何しろアイファの後ろには沙耶と進一がいたからだ。

 狙われた。アイファはとっさに沙耶達に叫んだ。

「伏せて!」

 アイファに言われて沙耶は進一を抱きかかえて膝を落とした。

 一方、このアイファはこの一瞬が仇となった。

 銀星系連合軍の服は特殊合成繊維で出来ている為に下手な防弾チョッキよりも丈夫に作られているのでハンドガンくらいなら弾き返す事が出来る。

 アイファはとっさに両手でガードして矢を防ぐが、それでも痛みはある、両手と腕と腹に鈍い痛みが走るが、それよりも激しい痛みが右腿に走った。

「うああっ!」

その激痛にアイファは悲鳴を上げた。

見ると右腿に鉄の矢の半分くらいが突き刺さって真っ赤な鮮血が滴り落ちた。

 いくら制服を着こんだ部分は無事でもスカートの下のスパッツ部分はそうでは無かった。

 それを見た胴凱は顔を歪めて笑った。

「フハハハッ! ざまをみろ! その足では貴様は逃げ回る事はできまい!」

「くっ!」

 アイファは歯を食いしばりながら右腿の鉄の矢を引き抜いて放り投げるとカランと言う音を立てながら石の上に落ちた。

 ただ当然の事ながら流血は止まらず、膝が震えていた。

 それ見た胴凱は目を細めるとアイファを指差しながら言って来た。

「さぁ、大人しく頭を下げて許しを越え、そうすれば命だけは助けてやっても良いぞ」

 するとアイファは吐き捨てながら言い返した。

「ハッ、誰が言うもんか! アタシは絶対に負けない!」

「そうか、ならば死ねぇえーーーっ!」

 胴凱はアイファに向かって突進した。

 無論アイファも再び避けようとするが、右足に痛みが走って跳ぶ事が出来なかった。

 今やアイファは動かない人形と同じ、胴凱は右肩を突き出して体当たりをした。

「がはぁあ!」

 まるで生きた砲弾の様な胴凱のタックルが炸裂した。

 まるでゴム毬の様に飛ばされたアイファの全身にゴキゴキと言う音が響くと供に激痛が走るとほんの一瞬だが意識が無くなった。

 肋骨は折れていないだろうが衝撃まで防ぐ事は出来なかったからだ。

地面に転るアイファの全身に痛みが走ると全身が痺れて指1本動かせなくなった。

 すると勝ちを予測した胴凱はゆっくり近付いて来た。

「フン、他愛の無い…… それが我等より埃を奪った星人の姿か」

 胴凱は右足を上げるとアイファの頭を踏みつけた。

 勿論手加減はしている、全体重をかければアイファの頭など生卵も同然、止めを刺さないのはあえてアイファを痛ぶり楽しんでいるからだ。

 爪先を左右に振って地面に擦りつけた。

「ぐっ、がぁあ……」

 まるで万力で絞めつけられている様な激痛が頭部に走る。

 アイファには最早抵抗するだけの力は残ってはいなかった。それでもなお痛めつけられて苦しむその姿に進一は顔を反らした。

 子供には辛い光景だった。しかし辛いのは進一だけでは無かった。沙耶も身を震わせると首をすぼめた。

 自分より年下の子供が自分達を守る為に戦っているのだけでも苦痛なのに、それを任務とは言え自分達の代わりに痛ぶられている姿を見るのは何よりも苦痛だった。

 これ以上見ていられ無くなった沙耶は胸倉をつかむと胴凱に叫んだ。

「もう止めてください! 目的は『龍神様の秘宝』なんでしょう? 鍵なら私が持ってます! だからもう終わりにしてください!」

「姉ちゃん!」

「……進一、分かってくれるわね?」

 沙耶は顔を顰めながら進一を見た。

 進一も本当は諦めたくないのだろう、だが苦しむアイファを見ると大きな目に悔し涙を浮かべながら頷いた。

 すると胴凱は鼻で笑いながら言って来た。

「フン、中々殊勝な心がけだな、しかしこの小娘は自分の意志で戦っているのだ。こうなったのは言わば自業自得…… だが泣いて今までの無礼を詫びると言うのならば止めてやらなくもないがな」

 胴凱は足に力を入れてさらにアイファの頭に体重をかけた。

 すると本来喋る余裕の無いはずのアイファは歯を噛みしめると口を開いた。

「ふっ……ざけん……なっ!」

「むっ?」 

 胴凱は足元を見た。

 足のサイズが大きすぎて顔を見る事は出来ないが、今のアイファの顔は怒りに満ちていた。

 自分の事等どうでも良い、しかし何の罪も無い村人を襲い、さらに沙耶達に辛い生活をさせていたこいつ等を許す事は出来なかった。

「絶対……許さない……アンタ……なんかにッ!!」

「アイファさん、もう止めて! 本当に殺されてしまうわ!」

「だ、大丈夫……必ず……守……る」

「ブッ! ハハハハァ! 守るだと? 一体どうやってだ? その様で良くほざけるな」

「うっ……さい! ざけんじゃ……ない……デカ……ブツッ!」

 アイファは一向に退かなかった。

 一向に折れる気配の無いアイファに業を煮やした胴凱は忌々しく口を歪めると右手を強く握りしめると手の甲から黒い両刃の刃が飛び出した。

 その右腕を振り上げると刀身が陽光を跳ね返して鈍く輝いた。

「剣帝は貴様を生かしたまま連れて来いと言われた。つまり殺さなければ構わないと言う事だ。ならば腕の1本くらいは許されるだろうな!」

「くっ!」 

 胴凱が言うとアイファは目を閉じた。

 胴凱は右手を振り上げるとその凶刃をアイファに向けて振り下ろした。

 最早これまで…… アイファは身を竦めて目を閉じた。

 するとその時だ。胴凱の背後で爆発が起こった。

 その場にいた者達が一斉に振り向くとアイファ達が向かっていた洞穴の岩壁が爆発して噴煙が宙に舞っていた。

「な、何だ? 何事だ?」

 胴凱は目を丸くしてアイファから足を退けた。

 まだ頭に痛みが残る中、アイファは両手に力を入れて上半身を持ち上げると噴煙の中から一台のオートバイに乗った1人の男が飛び出した。

 アイファの瞳は霞み意識がはっきりしないが、その耳には自分を呼ぶ声がシッカリ届いた。

「アイファーーーッ!」

「た、隊ちょ~っ!」

 その聞き覚えのある声を聞いた瞬間、アイファの意識は覚醒すると掠れた声で叫んだ。

 アレンはハンドルを切りながらブレーキをかけると河原の石を薙ぎ払いながらバイクを停止させた。

 突然現れた者に数人の小刀衆が胴凱の前に立つと槍や刀を構えるとアレンに向かって尋ねた。

「何者だッ?」

 アレンは無言のまま静かにバイクから降りた。

 そして男達の後ろで倒れながら自分を見ているアイファと、明らかに他の者達と違う服装で抱き合っている御堂姉弟を見た。

 詳しい状況は分からないが1つだけ理解できた。それはアイファがあの姉弟を守ろうとした事をだった。

 それを察したアレンは腰のホルダーからレーザー銃を引き抜くと自分の部下で仲間を傷つけた者達に銃口を向けて言った。

「その子の、仲間だ!」

キーボードが壊れてしまい、連載が止まって申し訳ありませんでした。

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