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蒼と銀


「ふー……」


 吐き出した吐息が胸の内にわだかまってる昂ぶりを鎮めていく。

 解像度の低い全天モニターには、倒すべき敵の姿が微かにぼやけて映っている。 FSスカイキャットのモニターには一昔前の技術が使用されているため、他のEX‐Gの機体に比べて外の景色の映りが悪いのだ。それに加え、対衝撃システムも搭載されていないため、敵からの一撃を受けるたびに画面にノイズのようなものが走る。

 しかし他のMSGに乗ったことがないラッセにとって、そんな不備は関係ない。

 元戦闘機の操縦士だったラッセは、一発の被弾がどれだけの損害を戦闘機に与えるかを熟知している。良くて飛行障害。最悪撃墜。

 それに比べたら、MSGは一発受けてもほとんどの場合でまだ飛べる。それだけで、よっぽどありがたいと言える。


「さて、薬もしっかり染みてきたところで、そろそろこちらからも反撃させてもらおうか」


 先ほどスカイキャットに乗り込んだ時に既に携帯注射を済ませておいた。クランカイゼンの効き目は抜群で、内臓の全身が急速に冷たくなっていくのがわかる。唯花には濁して答えたが、やはり身体にいいとは思えない。


「久しぶりだな、騎士様よ。お前は俺のことなんて知らないだろうが、こっちはよーく知ってんだよ」


 右手前のレバーの一つを勢いよく引く。そして左手で各種ボタンを、右足はフットペダルをそれぞれ別操作で瞬時に動かしていく。

 操作の単純化が重要な命題であるMSGにおいて、これだけの複雑な操作を強いる機体は無いだろう。それも当然、スカイキャットはEX‐Gという特別なMSGを生み出すために、テスト機体として最初に生み出された初代EX‐Gとでも呼ぶべき機体だからだ。

 発案者は“カオス”という人物。先ほど会議室でソアラの口から語られた異世界の科学者達のリーダーと同じ名前だ。

 残念ながらラッセは名前と、スカイキャットを発案したという事実以外知らされていないが、当時の彼が残した“カオス企画書”は様々な分野で大きな力を発揮する文書としてペンタゴンの最重要機密保管庫に収容されているらしい。

 そんなカオスが没した後、彼の企画書にようやく技術が追いついて行き、生まれたのが最初のMSG“YG‐22 スモークジャイアント”。そこからわずか5年で生まれたのが、世界初のEX‐G“FS‐001”だ。

 様々な機能を搭載し、空を飛ぶことができた初のMSGだった。

 とはいえ、既に15年も昔に開発された機体だけあって、今の技術とは比較にならないほど古い技術が搭載されている。モニターしかり、電子機器関連しかり。もはやEX‐Gはおろか、現行の通常MSGにも迫られる性能となってしまったFS‐001は、アメリカ軍の最新のEX‐Gの開発と共に最前線の役目を終了。後は開発者の育成のため、国内の研究機関に預けられるはずだった。

 それに待ったをかけたのが、すでにこの世を去っていた“カオス”の遺言だった。


『今後、新たなEX‐Gの開発に成功した後、FS‐001はフィンランド政府に極秘で無償譲渡すること』


 およそ100年前に弁護士に預けられていたというその遺書の指示に当初、アメリカ政府は従うことを拒否したが、カオスの後を継いでアメリカのEX‐G計画に貢献した、特別支援技術開発局の局長“サンボールトン”が、自身の技術力の提供を盾に、その指示に従うことを政府に強制し、実現した。


 かくして現在、FS‐001はフィンランド空軍の所持するところとなったが、そこで問題が起きた。

 操縦士がいなかったのだ。

 当初は空軍内でも優れた操縦技術を持つ者にEX‐Gを、ということだったが、その操作の難解さ、モニターの粗い画面、そして何より身体を締め付けるようなGに耐えきれる者はいなかった。なんとか乗ることが出来ても、宙に浮かすことが精一杯でまともに戦闘をこなすこともできない。

 操作方法をアメリカ政府に尋ねるも、提供するのは機体のみで、その後のサポートや予備装甲、機密は一切寄越さないという徹底っぷりだった。

 存在そのものがブラックボックスなため、下手に改造もできない。

 模擬戦闘をするたびにまともに動けず、不格好な傷痕がついていく。

 これはフィンランド軍だけの問題ではなく、どうやらアメリカが保有していた時も同様の課題だったようだ。

 あまりにも負荷が強すぎて操縦できた操縦士は一人のみ。

 その操縦士以外が乗ると、空中でホバリングするのが精いっぱいの空飛ぶ的と化す。

 実はその唯一の操縦士が病気で亡くなって以降は、碌に実践にも出ていなかったようなのだ。

 そんな有様から、当時のアメリカの操縦士候補達から皮肉を込めて呼ばれていたあだ名が、そのまま輸入される形でフィンランド軍内でも呼ばれることとなった。


“空飛ぶ怠け猫”スカイキャットと。

 

「さてスカイキャット、準備はいいか。今度の敵は手ごわいぞ」


 背面ブースターを勢いよく噴出させながら、蒼い機体が空を駆ける。その方角は敵とは真逆の、後方上空だ。

 銀騎士もそれに合わせるようにランスを構え、追いすがる。


「へ、島を盾にせずちゃんと俺に付き合ってくれるなんて、さすがフェアな騎士様だな!」


 軽口を叩きながらも、スカイキャットをさらに加速させる

 いくら旧式の機体といってもスカイキャットもEX‐G。十数年経てば現行のMSGにも技術で追いつかれるかもしれないが、今はまだ地球最高の機体の一つに間違いない。その速度に、島の影がみるみる離れていく。

 

「よっと、この辺でいいか」


 やがて島から二キロほど離れた上空で、ラッセは再びホバリング状態にした。合わせて銀騎士も動きを止める。

 二機は再び向かい合う。そこには殺し合いというよりも、スポーツの試合や一騎打ちのような静けさがあった。

 しかし静けさは一瞬。

 スカイキャットが両腕を背中に回すと同時に、背中のリュックが割れ、中に収納されていた機銃……いや、拳銃が二丁、蒸気と共に顔を見せた。

 そのグリップをがっしりと掴む。

 スカイキャットの機銃は腕に固定されたものではなく、直に機体の手で握りしめるものだ。

 随時持ち変える手間を省くために、最近のMSGでは銃器はあらかじめ腕部の肘や脚部に固定されている場合が多いが、旧式のスカイキャットはいまだに銃は手で握るものとしている。

 ラッセにとっても手で持ったほうが銃を扱うときのイメージも沸きやすいため、今更固定式に切り替えるつもりもない。

 スカイキャットの両腕に二丁の拳銃が握られた。MSG専用の拳銃は、機銃とカテゴライズするにはあまりに巨大で、重厚。

 ラッセが島から離れた理由の一つが、この拳銃だ。

 この拳銃の口径は100㎜。航空機にも軽々と穴を空けることが可能な化け物機銃が二丁。そんなものを守るべき島の上空で撃つことなんて危なくてできない。


「ま、相手が普通の戦闘機だったらそれでも守れる自信はあったんだけどな」


 必殺の獲物を構えても一切の反応を示さない銀色の機体。その甲冑を震え上がらせるためにはどれだけの武装をしてくればいいのか見当もつかない。

 

 ラッセはフットペダルを一段と強く蹴った。

 スカイキャットを斜めに滑らせながら下降していく。

 銀騎士を中心として周囲をぐるぐると回るような起動を描いていく。

 おそらく単純な速さでは銀騎士には敵わないので、それ以外の武器で勝負するしかない。

 EX‐Gは戦闘機と違って、上下の移動が非常に機敏だ。堅い装甲で空中を左右に移動されるだけでも厄介なのに、さらに高低差まで付ける。それが戦闘機に対して優位に立てる理由の一つだ。

 ラッセの戦術は上下の差と全方向からの射撃が生命線となる。

 騎士はラッセの動きを見て、すぐさま狙いに気が付いたようだ。体を傾け、スカイキャットに対して背中を見せないよう位置取りをする。

 今度は慎重になっているのか、こちらの速度に合わせるように静かな動きだった。


「ちっ、やっぱEX‐Gの相手に慣れてやがんな……だが!」

 

 騎士が体を正面に向けようとしたところで、ラッセの右手が動いた。

 

「――!?」


 敵機の驚愕がこちらにまで伝わってくるようだった。

 あたりに獣の咆哮のような爆音が走る。

 爆発的な速度で放たれた銃弾に、騎士はわずかに遅れながらも体を流すようにのけぞる。

 これまでのように無駄のない洗練された動きではなく、目の前の脅威から全力で回避するための行動だった。

 その左肩口を閃光が翳め、夜空へと消えていく。

 それは曳光弾というには光が強すぎる。

 銃弾の発射と共に、あたりを薄ぼんやりとした光が包むほどだ。

 弾丸どころか光学兵器と言われても遜色無いほどの光が完全に消え去った時、騎士の肩口は、何かで削り取られたように消滅していた。

 これまでの緩慢な動きからは信じられない速度。銃を構えてから発射まで0.1秒あったかどうか。

 スカイキャットの構造で数少ない他に勝る箇所。バネ――という言い方には語弊があるが――の強化だ。

 スカイキャットの燃料室内の廃熱を椀部に瞬時に回し、急激に熱せられた蒸気が各関節部に取り付けられた小型タービンを激しく回転させ、そこに爆発力の高い運動が一瞬のみ行える。

 関節部に多くの機能を含ませるせいで腕が重くなり、通常の動きは緩慢になる上、シリンダー内のクールダウンに最低でも五分はかかり、なおかつ機体のパーツ損耗も激しいため連続使用はもろ刃の剣という、扱いにくさの方が目立つ――というより欠陥だらけとも言える装備だが。


 一秒にも満たないわずかな時間のみ、スカイキャットは世界最速となる。


「ヒュー、やっぱ威力高ぇな。レインのおっさんのお墨付きなだけあるぜ」


 銃弾を放った時の衝撃で軽くコクピットも揺れるほどの威力。

 ラッセ自身も初めて放った弾丸の威力に痺れていた。


「……にしても威力高すぎて気軽に撃てねえな。あまり無理な体制で撃つと機体が流れちまう」


 ラッセはこの銃を使うときのマニュアルを頭で反復する。銃弾の数に限りがあることから、実際に撃たせてもらったことは無かったが、その扱い方と威力は散々頭に叩き込まれていた。

 古い機体であるスカイキャットを他EX‐Gと戦えるレベルに押し上げる装備が、この巨大すぎる二丁拳銃だ。

 FSスカイキャットの機体改造は事実上不可能。なぜなら、機体内部に精通した技術者がおらず、中身を下手に扱うことで機体そのものがおじゃんになるかもしれないからだ。


――しかし装備の換装は別。


 フィンランドに流れ付いた天才的な兵器開発者。その中でも実銃を使用する兵器に関して、並々ならぬ情熱をもって開発に取り組む奇才。

 レイン博士の完成させたMSG専用二丁拳銃、『レヴォントゥレット』と『ペルケレ』。その威力はすさまじく、唯一スカイキャットが譲渡されてから進化した箇所といえるだろう。


 銀騎士は自身の肩への損傷を確かめると、こちらへの警戒の色を強くした。今、銀騎士の操縦士の頭には、あの一瞬の腕の加速と銃弾の威力が頭に焼き付いていることだろう。


「頼むから最後まで警戒しといてくれよ。五分間は加速が使えねえんだからよ」


 今あの騎士は、いつまた加速による早撃ちをされるかわからないという疑念にとらわれているはずだ。

 ペルケレの威力は高いが、それは加速によってさらに力を増す。

 何度も使える技ではないからこそ相手に「使うかもしれない」という警戒心を植え付けておかないと効果を発揮できない。そういう意味で先ほどの一撃は意味があった。あれで倒せれば儲けもの。倒せなくても警戒を引き上げることができる。

 

「さて、驚いている時間は無いぜ!」


 先ほど放った右手のペルケレを下げ、今度は左手に握ったレヴォを向ける。体制を立て直し、今度こそ殺意をむき出しにした騎士に向けて、ためらいなく引き金を引いた。

 今度もまた閃光がほとばしる。

 銃口から放たれた閃光は、瞬時に枝分かれをし、目標に向けて迫る。

 ペルケレのような直線の弾丸を避けるために最小限の動きで銃口を逃れていた銀騎士だったが、目の前を覆いつくす数十もの光に避けることが出来ず、両腕をクロスして守るしかなかった。

 空中に花火のような明かりが灯る。


「全弾命中……といっても損壊率は3%あるかないかってところか……まともにダメージを与えるにはあと五回は当てないとダメそうだな」


 まともに弾を受けながら騎士の装甲は一部が黒くなっているのみで、まだまだダメージ貫通とはいかないようだ。

 空気中に放たれることで実弾が枝分かれし、数十もの小型ミサイルの如く目標へ向かっていく。それがレヴォの特徴だ。

 敵の動きの制限、ミサイルの撃墜、多数の敵への牽制および殲滅に優れる多芸な武器ではあるが、銀騎士の装甲は想像以上に堅く、レヴォによる大きな損壊は期待できそうにない。

 重厚な鎧にも似たその見た外見通り、速度よりも堅い防御で耐え抜くタイプなのだろう。


「ま、それでもスカイキャットよりは速いだろうがな。さて、これでお互い様だ。俺の主武装も見せたんだから負けても言い訳はやめてくれよ」


 早くも手の内をさらけ出したラッセだが、自信は揺るがない。初撃のペルケレは避けられたが直撃はできないという警戒心を与えられた。レヴォは防がれたが全く通用しないというものでもないことが分かった。

 基本的にポジティブに物事を考えるタイプなので、それだけでも十分に収穫があったと言える。

 そのうえで次の戦い方を組み立てる。


「……やっぱ決めるにはペルケレをまともにぶつけるしかねえか」


 一撃で騎士の装甲に穴を空ける威力を持つペルケレをまともにぶつけることが出来れば、あの騎士を落とすことも可能だろう。

斜め下への下降を辞め、再び上昇を開始するラッセ。

 しかしそれを黙って許すほど敵もおとなしくは無い。

 完全に油断を辞めた騎士はランスを構えなおし、スカイキャットをはるかに上回る速度で接近を開始した。

 そしてその過程で“突き”の要領でランスが振るわれる。本来ならばまだランスの射程距離には無いはずの一撃が、襲い掛かる。


「見えてるんだよ! あんだけ見せつけられりゃあな!」


 そこから伸びてくる見えない槍の高速突きを、すべて紙一重で躱していく。避けるたびに、見えない何かが機体をかすめていくのを感じる。

 今頃敵はこう思っていることだろう。なぜ不可視の攻撃が避けられるのか、と。


「お前にとっては俺は初めましてかもしれねえが、こっちはお前を倒すために散々仕込んできたんだよ!」


 騎士がランスを振るう合間に左手のレヴォを放つ。そのたびに両者の距離は離れていく。

 ランスを振るった後のわずかな静止を完全に理解したその動き。踏み込もうとした瞬間に放たれる銃撃の嵐。

 完全に初見の敵に対するものではなかった。


「基地の仲間の仇、とらせてもらうぜ!」


そう、他でもないラッセの母国、フィンランドの軍事基地を襲った張本人が、目の前の銀色の騎士なのだ。

 おそらくは収納中のスカイキャットを確認しに来たであろうその機体に基地は、為す術なく破壊しつくされた。

 当時スカイキャットは正式な操縦士すら決まっていなかったため出撃できない状態にあった。

 しかしそれを敵が知っているはずもない。しばらく少し上空を滞空していた銀騎士はしびれを切らしたように、基地への攻撃を開始した。

 それでも民間区画への攻撃を避けるあたり、最低限の礼儀を尽くしたとも言えるが……その襲撃でラッセの親友が二人この世を去った。

 大規模な葬儀の後、軍の早急なテストの結果ラッセがスカイキャットの操縦士に決定し、襲ってきた銀騎士を仮想的に定め、今日まで訓練をしてきたのだ。



「あの時さんざんその“見えない突き”で基地を破壊してくれたよなあ! 忘れたとは言わせねえぜ!」


 ランスの予測起動、これまでの操縦士の癖、そして天性の感を使ってランスを次々と躱していく。その間も空中を滑るように飛行しながら決して直線の動きはしない。そんなことをすればすぐに点の攻撃で機体もろとも貫かれてしまう。

 おそらく一撃一撃がスカイキャットの装甲を簡単に食い破るであろう攻撃だが、ラッセにそれを恐れる様子は一切無い。

 密閉されたコクピット内まで風切音が聞こえてきそうなほど放たれ続ける必殺の攻撃を丁寧に、機体が触れるぎりぎりのところで躱していく。

 “突き”という点での攻撃に加え、“横なぎ”という面での攻撃が来ても焦らない。休むことなく操縦桿を前後左右に動かし、パレードのステップのようにフットペダルを踏み上げ、上下移動で躱していく。

 そして銀騎士が痺れを切らし、大振りの攻撃で仕留めにかかろうとしたところで、ラッセは再び左手のレヴォの連弾を放った。

 通常の銀騎士のラッシュ攻撃はスカイキャットの速度ではぎりぎりで避けるのが精いっぱいだが、大振りともなればそれまでに無い隙が生まれる。ラッセはその瞬間を待っていたのだ。


「んっ!」


 全身にかかる、縛り付けるようなGに息を止め、歯を食いしばって抗う。

 たとえ距離が近づこうとも、レヴォの弾丸では銀騎士の装甲を打ち抜くことはできない。むしろ発砲してから銃弾が分裂する関係上、真の威力を発揮できなくなる。

 銀騎士もそれを見越しての接近だったのだろう。

 しかしレヴォにはその手数の他に、もう一つ強力な利点がある。

 いわゆるECM(抵抗電子手段)の発展装備が仕込まれているのだ。

 レヴォを放った時、その距離が2メートル以内という極めて狭い範囲に、非常に強力な妨害電波を発生させる。これにより、ほとんどの電子機器は無効化される。

 現代の戦闘機からMSGまで、電子手段を用いないということはありえない。その電子機能を一瞬のみ無効化するのが、どれほど恐ろしいか。

 それは近ければ近いほど有効であり、近距離戦を仕掛けてきた銀騎士への効果は十分に見込まれた。


「一応効くみてえだな」


 異世界からの機体ということでこの奥の手が通じるか不安があったが、どうやら向こうも動力の一部は電気のようだ。わずかに動きが鈍くなった。

 硬直した銀騎士へ向けてラッセは急接近すると、出し惜しみなく加速をし、ゼロ距離でペルケレの銃口を胸部装甲へ押し付ける。


「これで――仕舞いだ!!」


 キュィィィィィイイイイイイイン!


「がっ――!」


 とどめの一撃をお見舞いしようとした瞬間、激しい機械音があたりに響き渡った。そして何かに弾かれるようにスカイキャットが吹き飛んだ。


「な、なんだ!?」


 回転しながら吹き飛ぶ機体を、どうにか制御しながら前方を向く。

 最悪追撃も考えて身構えたが、騎士はまだ先ほどの場所にいた。しかしその様子は只事ではなかった。


「なんだよ……そりゃあ」


 ラッセの目が驚愕で見開かれる。

 その目に映ったのは、さっきまで月光を反射するほど光沢を放っていた銀色の騎士が今、胸元を中心にドス黒い色へと変貌していくところだった。

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