28話 仕事納め
12月30日。サンライズ下町店、年内最終営業日。
12月に入ってからは、クリスマス、そして正月用のお節料理の準備と、まさに息つく暇もない一ヶ月だった。
(……いや、一ヶ月どころじゃないな。今年は、人生で一番忙しい一年だった)
去年の仕事納めの俺に「お前、数日後に神様に転生させられるぞ」と言っても、鼻で笑われるだけだろう。
最初は突然授けられた能力に戸惑うばかりだったが、今では少しだけ、これらを使いこなせている気がする。
「あのお客様……」
棚の前で微かに揺れる黄色い光。「ちょっと店員さーん!センサー」が、ただ困っている人だけでなく「買おうか迷っている人の迷い」まで拾い上げる。
「お客様、こちら今日のおすすめですよ。煮物にすると絶品です」
「あら、そう? じゃあ、もらおうかしら」
そっと背中を押す。以前の俺なら「声をかける手間」を惜しんでいただろう。
「ぷんぷんゲージ」だってそうだ。
単に怒りを避けるためではなく、その裏にある相手の疲れや、切羽詰まった感情を読み取ろうとするようになった。
……まあ、「探し物はなんですか?レーダー」だけは、相変わらず「私物が見つかりにくくなる」というデメリットが厄介すぎてあまり使っていない。
能力のおかげというわけじゃない。
神子と一緒に働き、以前よりも同僚たちと関わるうちに、俺の視界は自然と自分以外に向くようになっていた。
閉店時刻。
年末の駆け込み需要でごった返した店内から客の姿が消え、シャッターが降りる。
静まり返った売場で、店長威勢のいい声が響いた。
「はい、今年もお疲れさまー! 片付けが終わった人から、事務所に集合! これから忘年会にいくわよー!」
「今回は私も参加してみます。」
神子が仕事以外で関わるのははじめてだ。
「お前、飲み会に来るなんて珍しいな」
俺が言うと、神子はニヤリといたずらっぽく笑った。
「失礼ですね。私、毎日お酒を飲んでいるので、かなり強いですよ。四波さんを介抱してあげましょうか?」
「……余計なお世話だ」
一年前、公園のベンチで虚しく第三のビールを飲んでいた俺に、教えてやりたい。
今年の終わりは、一人じゃない。
店長が俺の肩に手を置いて、
「よし、行くわよ!……今年も一年お疲れ様でした!」
大きな声で挨拶すると、事務所から「お疲れ様ー!」と仲間の声が返ってきた。
サンライズ下町店、今年の営業はおしまい。
俺たちは夜の街へと繰り出した。




