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27話 親子の光

品出しの最中、「ちょっと店員さーん!センサー」が反応した。


視界の端で、小さく、そしてどこか心細そうに揺れる黄色い光。


「……迷子か」


光の主は、お菓子売り場の前で立ち尽くしている小さな男の子だった。


「どうしたの? お母さんは?」


声をかけると、男の子は今にも泣き出しそうな顔で俺を見上げた。


「……公園で遊んでたら、ママがいなくなって……。いつもここに来るから、いるかなって……」


「そっか。一人でよく歩いてきたね。お名前は言えるかな?」


「……なおと! 4歳!」


「なおとくんか。いつもサンライズにお買い物に来てくれて、ありがとうね」


俺が少し腰を落として笑うと、なおとくんは鼻をすすりながらポツリと言った。


「……ママがね、また高くなったって、いつも言ってるよ」


「……はは。ごめんよ、おじさんたちも頑張ってるんだけどさ」


その時、自動ドアが勢いよく開き、一人の女性が飛び込んできた。


「なおと!!」


「ママ!」


「なんで公園で待ってないの! 探したんだからね! もう、いつもいつも……!」


母親はなおとくんの肩を掴み、日頃の鬱憤を吐き出すように叱りつけた。


俺の目には、彼女の「ぷんぷんゲージ」は見えない。ただ、センサーが捉える二人の光が、ひどく冷たく、悲しい色に透けて見えた。彼女は怒っているんじゃない。ただ、余裕がないほど疲れ果てているのだ。


昔の俺なら、再会の確認だけしてその場を離れていただろう。だが、気づけば言葉が口をついていた。


「お客様」


「……っ、なんですか? すみません、騒がしくして」


身構える母親に、俺は努めて穏やかに、そして深く頭を下げた。


「いえ。なおとくんから、いつも当店を利用してくださっていると聞きました。本当にありがとうございます。」


「え……」


「なおとくん。またお母さんと一緒に、お買い物に来てね。待ってるよ」


「…うん」


母親は毒気を抜かれたような顔をして、それから小さく会釈をした。二人は手を繋ぎ、夕暮れの街へと帰っていった。


数日後。センサーの光に反応して顔を上げると、そこにはなおとくんがいた。


「あっ! おじさん! ママとお買い物来たよ! 今日はハンバーグだって!」


「お、よかったね。美味しそうだ」


「うん! またね、おじさん!」


「ああ、またね。……おじさんか」


苦笑いしながら見送ると、少し離れたところにいた母親が、俺に気づいてふわりと笑顔で会釈を返してくれた。


仲良く手を繋ぎ、夕食の材料が入った袋を揺らして帰っていく二人。


その背中からは、今まで見たこともないような、柔らかくて温かい光が溢れている気がした。

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