第六十七話 二度目の真理に触れた者
数日後。
俺は一度頭を冷やして、夢の中で触れた真理と、自分自身の記憶について考えてみた。
俺がこの世界にやってきたのは、前世で真理に触れて死んだからである。
今回、真理に触れても死ななかったのは、以前に一度触れていたため、脳が押し寄せる情報の波を捌に切る方法を、無意識のうちに覚えていたからだろう。
一度罹った病気には抗体がつくようなものだろうか。
クルピアちゃんやアリスちゃんのように、特に副作用のようなものを患っている訳でもないのは、そのためでもあるのかもしれない。
俺がかつて死んだ時に触れた真理が何なのかは分からないが、それは間違いなく何かしらの真理であり、そして今、おそらく完全な形で真理に触れたということになるだろう。
真理の真理。
何人かいるらしい最初の魔術師、その一人目である「ハンナ・ブルーミン」が触れたという、真理そのものについての真理。
クルピアちゃんとアリスちゃんには、他に何か触れた可能性がある真理が無いかと聞いてみたが、俺が夢の中で感じた情報量の波、そして色々な情報の数々は、「真理の真理」を除いて他に無いのだという。
故に、俺が触れたのは本当に「真理の真理」であったと思って問題ないだろう。
二度も真理に触れたせいだろうか。
干渉力は元から高かったらしいが、身体の内側から無尽蔵に魔力が湧き上がっているように感じる。
俺は魔力を集め、試しに空へ向けて「炎」を放ってみる。
「【炎】!」
すると、これまでとは一回り二回りも大きな炎の塊が、空の彼方まで飛んでいった。
これは凄いぞ。
俺は思った以上に強くなってしまったのかもしれない。
早速、自室へクルピアちゃんを呼び、報告してみることに。
「やはりか……。プラティエ。其方、思っている以上に魔術師として大きな力を手にしておるようじゃな」
「そうみたいですね。今までと同じように魔術を使ったら、本来壊すべきものじゃないものまで壊しちゃいそうです」
ウンウンと頷くクルピアちゃん。
もっちりとした頬と、華奢な肩が少し揺れている。
非常に可愛らしい。
「範囲を絞る練習はしておくべきじゃろうな」
「それで……どうなりました?最高位魔術師の方は」
「ああ、それなんじゃがのう。オーケーが出たぞ」
「マジですか!」
「うむ。じきに魔術学院の本部から通達と認定証が来るじゃろう。それが来たら、其方も晴れて最高位魔術師の仲間入りじゃ」
「はぇ~。そういえばクルピアちゃん。聞きたい事があるんですけど」
「何じゃ?」
「最高位魔術師になって、気をつけなきゃいけない事とか……あったりします?」
「いや、無いぞ?」
「無いんですか」
「うむ、無いな。特に表に出てはならんとも言われておらんし、何か研究する魔術に制限があるでもないぞ」
「そうなんですか」
「まあ、身に危険が及ぶことを避けるために、裏で引きこもっておる魔術師は多いがの」
「ああ。表に姿が出てこない魔術師が多いのって、そういう理由なんですか。特に誰かが表に出るなって言ってる訳じゃ無いんですね」
「うむ。だから其方は、これまで通りに過ごしておれば良いぞ」
「そうなんですか。それなら良かったです。学生を辞めなきゃいけないとか、皆に会えなくなるとか、そういうのがあったらどうしようかと思いました」
「特に無いのう。ま、最高権力者じゃからな。じゃが最高位魔術師というのは、その動き一つ一つが大きな影響力を持つ。その辺りは弁えねばならんぞ」
「分かりました。ところで……クルピアちゃん」
「どうした?」
「今日も可愛いですね」
「な、何じゃ、急に……」
クルピアちゃんは驚いた様子でこちらを見た。
身長差のせいか、自然と上目遣いになっている。
そんなところも可愛いものだ。
「いやあ。最近、クルピアちゃんに想いを伝えられてなかったので」
「よ、よせ。それに、可愛い要員はアリスで事足りておるじゃろうに」
「いいや?可愛い女の子はいくらいても困りませんよ。それに、俺が一番好きなのはクルピアちゃんですから」
「も、もう……その……何じゃ。そ、其方が悪いんじゃぞ」
「何がですか?」
「これからも、もっと……妾に構え」
「良いんですか!?」
「う、うむ……口にするのは癪じゃが!其方は妾の愛弟子じゃ。それに……」
「それに?」
「い、一緒に、風呂に入った仲であろう……?」
どうしようこの子。
可愛過ぎる。
「そうですねっ!よーし!じゃあ、まずは頭から撫でさせてもらいましょうかー!」
「ちょ、まっ、ひゃあ!」
この日。
俺は夜になるまで、クルピアちゃんの頭を撫でたり、抱きついてみたり、膝枕をしてみたりと、一日中、クルピアちゃんに甘えたり、クルピアちゃんを甘えせたりしていたのであった。




