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「杖持たず」の旧式魔術師 〜機械音痴は手動の魔術で時代を追い抜く〜  作者: 最上 虎々
第六章 真理の真理

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第六十五話 魔の聖人・ヴァレンティヌス

「もはや手加減は無用と見ました。喰らいなさい、我が魔術!【光銃無千(こうがんむち)】!」


 現れたのは、光で生成された何十丁もの銃。


 狭い廊下の中をビッシリと埋めるその銃は、確実にこちらを撃ち殺さんと、こちらに狙いを定めていた。


 そして、光の弾丸が連射される。


「【衝撃音波(ランラン)】!」


「【マリオネットコンビネーション】!」


 俺は爆音の「(ランラン)」で弾丸を弾き飛ばし、アリスちゃんは二体の人形を呼び出して、あろうことか、ラッシュでそれを全て捌き切った。


「アリスちゃんヤバ……」


「最高位魔術師だもの!これくらい、どうって事無いわ!」


「【魔力の聖剣】!」


「受け流して!マリオネット!」


「隙アリですッ!【スネークバインド】ッ!」


 しかしアリスちゃんは、魔力の聖剣を受け流すために人形へ注意を向けた隙を突かれ、拘束されてしまった。


「あっ!……や、やられてしまったわ……!」


「貴方もです!【スネーク……!」


「【火の鳥(モエーロ)】!」


 俺は「スネークバインド」を発動するまでの間に、早口で詠唱を済ませて「火の鳥(モエーロ)」を放った。


「フンッ!……ふぅ、防火マントを着ていて良かったです。喰らいなさい!【魔力の聖剣】!」


 しかし、一応は俺の必殺技になっている「火の鳥(モエーロ)」が通じることはなく、そのまま反撃する隙を与えてしまった。


「ぐあっ!」


 左腕と右腿に深めの傷。


 ドクドクと溢れる血は、俺の膝を突かせるには十分であった。


「さあ、終わりです。大人しく、クイナさんを返して頂きましょうか」


「くっ……!不甲斐ないわ、最高位魔術師なのに……!」


「いいや、まだ終わってませんよ。アリスちゃん」


「そんな、もう無理よ!血がこんなに出てるじゃない!」


「いや。まだ無理はしてません。だからこそ、無理をします」


 俺は残りの魔力を全て使い、自身に「強化(ググーン)」をかける。


「もう無理よ!騎士サマ……!」


「うゥゥォあァァァァぁぁぁぁ!」


 強化した脚力で、捨て身の突進を仕掛けた。


「今更、何をしようと言うのです?貴方は所詮、一年生。いてもいなくても変わらないので、逃がしてあげようとも思っていたのですがね」

 

「ここでアリスちゃんまで拐われる訳にはいかねぇんだよ……!」


「これで散りなさい。【魔力の聖剣】」


 飛んでくる六本の聖剣の内、二本は両腕で弾き飛ばす。


 しかし二本は、俺の首元と腹部を掠め、そして回避に失敗した残りの二本は、左胸部と左腿を貫いた。


「うぐあっ!」


 魔力で強化していたとはいえ、肉と神経を貫かれては、入るハズの力も入らない。


 それでも俺は一歩ずつ、前へ前へと進み続けた。


「あれをまともに受けて、まだ立っていられるとは……。残念です。余計なことに首を突っ込まなければ、貴方は魔術師として大成していたでしょうに……」


「しっしししし……効かねえ、なぁ……!」


「痩せ我慢は身体に毒ですよ。早く意識を手放して、楽になってしまいなさい」


「嫌だね……!うぉぉぁッ!」


 俺は最後の力を振り絞り、傷口から吹き出す血を無視して、前へ飛び出す。


 ヴァレンティヌスとの距離は、あと三歩まで近付いた。


「終わりです。未来ある若者の命を奪うのは、私の望むところではありませんが……。無駄に苦しませるのも、私の趣味ではありませんので。喰らいなさい。【魔力の……」


「うぉぉぉ……!」


 魔力の聖剣。


 これを至近距離で受ければ、俺の命は無いだろう。


 しかし俺は退かずに、一歩、二歩、歩みを進める。


 ヴァレンティヌスの光は聖剣の形をとり、こちらへ突っ込んでこようと、狙いを定めた。


 それでも下がらず、俺はさらに一歩、足を進める。


「さようなら。若き魔術師よ」


 そして、聖剣が発射されようとした、その瞬間。


「オラァァァァッ!」


 俺は流血が止まらない右脚に全神経を集中させて、ヴァレンティヌスの股間を思い切り蹴り上げた。


「はぐあっ!?」


 光の聖剣は暴発。


 辺りの壁を破壊し、しかしそれが俺やアリスちゃんに命中することは無かった。


「お前は……魔術に頼り過ぎなんだよ……!」


「き、貴様ァ……!」


「フンッ!」


 俺も限界を迎えたのか、重心が崩れて、前へ倒れ込む。


 しかしその勢いを利用して、右手で股間にパンチを叩き込んだ。


「ひぎゃぁぁぁぁっ!」


「タダではやられねぇぞ……!」


 そのまま金玉を掴み、強化された右腕で、思い切り引っ張る。


「や、やめ……!」


「うォォォらァァァァァァァ!」


 そして、「ブチブチッ」という音と共に、ヴァレンティヌスの股間から、ナニかが引き抜かれた。


「ギャァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」


 もう、起き上がれない。


 俺の身体は、おそらく全ての力を使い果たしたのだろう。


 しかし、その右手に握られた金玉は、確かに俺の勝利を宣言していた。


 股間から大量に血を流しているヴァレンティヌスは、そのまま白目を剥きながら倒れ込む。


「……ヘヘッ。やった……ぞ……!」


「騎士サマ!騎士サマぁぁぁ!」


 薄れゆく意識の中、アリスちゃんの声だけが、俺の耳に入ってきた。


 もう返事をする力も残っていない。


 あの可愛らしい声をもう少し聞いていたかったが、それは叶わず、俺はそのまま、意識を手放すのであった。

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