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「杖持たず」の旧式魔術師 〜機械音痴は手動の魔術で時代を追い抜く〜  作者: 最上 虎々
第六章 真理の真理

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第六十二話 王都中央教会 前編

「ここがクルぴーが言ってた喫茶店ね!」


「ええ。良い店ですよ」


 喫茶イボルテ、最近は顔を出していなかったが、愉快なマスターがコーヒーを淹れてくれる店である。


 二人は入店し、やはりガランとしている店内の、一番奥にある席へ腰を下ろした。


「やあやあ、久しぶりだねー!おや?こちらの女の子は見ない顔だね、パルグレフ魔術学院の学生さんかい?」


「ええ!そんなところよ!」


「そうなのかー!ヘイヘイ、プラティエ君……君も隅に置けないねえ」


「どういう意味すかそれ」


「モテるんだなーと思って」


「モテ……まあ……そうかもですね」


 少なくとも前世よりはモテているためか、どうにも否定しにくい。


 俺はコーヒーとクッキーを注文し、アリスちゃんは紅茶とスコーンを注文する。


 すると少しして、マスターが奥から焼き上がったスコーンと、事前に作っておいたのであろうクッキー、そしてコーヒーと紅茶をテーブルに運んできた。


「騎士サマ、端末使うの苦手でしょ?だから、こうして直接、お話しをしに来たの!」


「そうだったんだ……すいません、ご迷惑かけて」


「いいのよ!それに、騎士サマとこうして会う理由になったから!」


「それは何よりです」


「ところで騎士サマ。愛理教会あいのことわりきょうかいって、知ってるかしら?」


「ああ、街のところどころにある教会ですか。結構有名というか、マジョリティな宗教ですよね」


「ええ、そうよ!ここでもう少しくつろいだら、一緒に王都中央教会に行ってみない?」


 これは新たな宗教勧誘の手口だろうか。


「あれ、アリスちゃんって信者でしたっけ?」


「違うわよ?」


 違ったみたい。


「何か用でもあるんですか?」


「うーん。……観光地化してるし、信者以外の人でも自由に出入りできるから、久しぶりに行ってみようかなって思ったの!」


 ちょっと発言までの間に溜め時間があったことは気になるが、あえてここは無視して話を進めることにした。


「藪から棒に、ですね」


「そういう気分の時もあるのよ!それに、拐われた時以外で騎士サマと二人で歩くの、今日が初めてじゃない?」


「そうですね。せっかくですし、行きましょうか」


「やったー!アリス、嬉しい!」


 それから俺達は、焼き菓子を食べつつ飲み物を飲み干し、二人で街の中央広場の方へと向かうのであった。


 王都中央教会。


 旧市街と中央広場の間に位置する、愛理教会の本部を兼ねた礼拝堂である。


 ゴシック風の刺々しい建築が特徴的な礼拝堂の中には、木製の椅子と備え付けの教典が並べられており、外も中も西洋らしい礼拝堂といった様であった。


「はぇ~。俺、教会って初めて来るんですけど、いかにもって感じですね~」


「素敵でしょ!アリス、こういう建物大好きなの!」


「魔術師が教会に来て良いものなんですか?」


「教会の《《加護》》と魔術を両方使う人もいるし、全然アリよ!」


「オープンなんですね」


 俺はアリスちゃんと、協会の中を見て回る。


 こうして可愛らしい少女とデートをしていると、つい気分が浮かれてしまいがちだが……アリスちゃんの動向には注意しなければならないだろう。


 俺を教会に誘う時に、彼女は少し目を逸らして言葉を詰まらせた。


 きっと何か、他に狙いがあるのだろう。


 俺はアリスちゃんを抱き寄せる。


「ひゃっ!……騎士、サマ……?」


「アリスちゃん。くれぐれも、自分だけが頑張れば何とかなる、なんて思わないようにしてください。俺はアリスちゃんの騎士サマなんですから、何かするなら、すぐ言ってくださいね」


「そ、そうね……!ちょ、ちょっと、ドキドキしちゃうから、一旦離れてくださる……?」


「はい、すいません」


「ふぅ……突然のアタックはハートが持たないから、ほどほどにしてちょうだいね……?」


「肝に銘じます」


 アリスちゃんが顔を真っ赤にしている。


 可愛い。


「……じゃあ、騎士サマ。早速、ここに来た本当の理由をお話ししようかしら。……本当は、アリスがトイレに行くフリをして片付けようと思ったんだけど……あんな風に言われたら、仕方ないわね」


「やっぱ何かあったんですね」


「ええ。……アリス、まだクルぴーにも話してないんだけど……クイナ・トドメキ誘拐事件の真犯人は、この教会にいるんじゃないかなって思ってるの」


「はぁ、聖職者が誘拐ですか」


「うん。教会の中には、少し過激な人達もいて」


「まーた過激派ですか」


「ええ。困っちゃうわよね。それで、その親玉かもしれない人が教会にいる可能性が高いから、ちょっと忍び込もうかと思ったの」


「忍び込むのはともかくとして、誰なんですか?その親玉ってのは」


 アリスちゃんの口から出てきたのは、かつてコレディッカ先生に見せてもらった資料に載っていた名前。


「『ヴァレンティヌス・アウクスレプス』。しばらくの間、公の場からは姿を消している最高位魔術師よ」


 ヴァレンティヌス・アウクスレプス。


 聖職者にして最高位魔術師である、生死不明の男であった。

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