第五十話 アピルラタ村の魔導具店
「……久しぶりだなー、この村も」
「ここがベルリナちゃんの地元かあ」
俺とベルリナちゃんはバスを降り、五センチ程度に積もった雪を大きく踏みつけながら、荷物を受け取る。
豪雪地帯であるアピルラタ村において、積雪が五センチで済んでいるのは、かなりマシな方なのなそうである。
「じゃあ、アタシは家に行くから……プラティエも、ホテルに行ってきな」
「分かった。じゃあ、後でまた合流しよう」
「ああ!デート、楽しみにしてるぜ!」
「デート……か。確かに、そうだね」
「なっ……何だよプラティエ、今日はやけに素直じゃねーか」
嫌な思い出がある実家にわざわざ足を運ぶベルリナちゃんを労ってあげたいから……なんて言えない。
「じゃあ、また後で」
「お、おう……」
それから数十分後。
俺はホテルに荷物を置き、クルピアちゃんの到着がが乱気流により遅れているという旨のメッセージを確認した後、ベルリナちゃんに指定された待ち合わせ場所の「アピルラタ駅」へ向かった。
「お待たせ、ベルリナちゃん」
「お、おう……なんか……ドキドキするな」
いつも私服がノースリーブだったベルリナちゃんとは思えない程の厚着。
ロングコートにロングスカートの、少し大人びた服装のベルリナちゃんが、そこにはいた。
……かなり可愛い。
「じゃあ、行こうか」
「お、おう……」
ベルリナちゃんは俺の手を掴み、そのまま繋ぎながら、商店街へ駆け出していく。
俺もその手に引かれながら、雪の中を走っていった。
商店街には、何軒かの店が並んでいる。
喫茶店、雑貨屋、スーパーマーケット、魔導具屋など、生活に必要なものはこの辺りで揃いそうなものであった。
俺はベルリナちゃんの表情を見ながら、関心がありそうな店を選ぶ。
「魔導具店、行こうか」
「そ、そうだな。アタシ、新しい杖が欲しかったところだったんだよ」
魔導具店。
クルピアちゃんからもらった腕輪と、特に俺が操作する必要も無いテレパシストーン以外、まともに使えた覚えが無い俺に用は無いが、ベルリナちゃんはそうではないだろう。
今まで立ち寄る事が無かった魔導具店だが、これを機に、初めて見てみるのも良いかもしれない。
「いらっしゃ~い!あら、ベルリナちゃん!久しぶりねぇ~!」
扉を開けると、レジの奥に座っていた老婆がこちらへ話しかけてきた。
どうやら、このお婆さんはベルリナちゃんの知り合いらしい。
「よう、ローリカ婆さん」
「ベルリナちゃんのお顔見ると安心するわぁ~。魔術学院はどう?」
「ああ、それなりになー!友達もできたぜ!」
「あらあら~。いつもベルリナちゃんをありがとうねぇ。てっきり彼氏さんだと思っちゃったわぁ」
「カ、カレシ!?そ、そそそ、そんなんじゃねー、けど……そう、見える、のかぁ……!?」
「あらまあ、照れちゃってぇ」
「いやあ、どうも……仲良くやらせてもらってます、プラティエ・ノルンと申します」
何故だろう、すごく申し訳ない気持ちになってくる。
棚を見てみると、カルドール先生の部屋にあったようなものから、そうではないものまで、様々な魔導具が置かれていた。
「なあ、ローリカ婆さん!これ、もらっても良いかー?」
その中からベルリナちゃんが手に取ったのは、「妖怪変化・空斬鴉」のスピネラ。
鴉のように黒い、変身魔術を得意とするベルリナちゃんにピッタリの宝石である。
「ええ、いいわよ~。普通は三〇〇〇エンだけど……ベルリナちゃんにだけ、特別価格の二二〇〇エンで売ってあげるわよ~」
「いいのか!ありがとよ、ローリカ婆さん!」
ベルリナちゃんは代金を渡し、商品を受け取って外へ出る。
俺は特に何か買う訳ではなかったが、店内にあったテレパシストーンだけが気になり、しかしその店を後にするのであった。




