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「杖持たず」の旧式魔術師 〜機械音痴は手動の魔術で時代を追い抜く〜  作者: 最上 虎々
第四章 鬼の仮面

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幕間 アリスの何も不思議ではないパーティー

「それじゃあ……かんぱーい!」


「乾杯じゃー!」


「か、かんぱ~い」


 マズい。

 気が乗らない。


 目の前に用意されたオレンジジュースを口に運ぶが、何の味も感じられない。


「ねえ騎士サマ。《《あのこと》》、正直に話した方が良いと思うの」


「あー……そういえば、通信では話してませんでしだっけ」


「あのこととは何じゃ?言うてみよ」


「クルピアちゃん、俺、『地獄(ヘルグド)』使えたんだ」


「はぁっ!?アレをか!?」


 クルピアちゃんは大慌てでグラスをテーブルに置き、両手をついてこちらを向いた。


「うん。アレを」


「だ、誰が教えた、そんなの!」


「教わってないよ、クルピアちゃんのを真似しただけ」


「アレはそんな理由で使えて良い魔術ではないぞ……?」


「うん。使った瞬間に分かった。全身めっちゃ痛くてさ。アレをノールックで使えてたクルピアちゃんの凄さが分かるよ」


「妾は慣れておるからのぅ。負担も大分抑えられるが……アレは危険な魔術なんじゃぞ?」


「うん。非常事態以外では使いたくないね」


「それで良い。あんなの、無闇に使うものではないからの。妾を心配させたくないなら、よっぽどの時以外は使うな」


「うん。ごめん」


「じゃが。妾が使うところを見ただけで、あの魔術を使えたことは褒めてやろうではないか」


 クルピアちゃんは俺の頭を撫でながら、そのまま抱きしめる。


「ごめんねクルぴー、アリスがやられちゃったばっかりに」


「良いんじゃ、誰にでも間違いはある。アリスが不覚を取る相手とやらが、少し気になるが……」


「殺されちゃったのよね、騎士サマに」


「ああ、カルドールじゃったのか。アリスを縛りつけたのは」


「ええ。足を引っ掛けられて、杖を落としてしまったの。痛かったわ」


「そんなことか。ドジじゃのぅ」


「俺、これからどうなるんでしょう。人を殺したの、初めてなんですけど……」


「普通なら刑務所行きじゃが、魔術師には特例があってのう」


「特例、ですか」


「うむ。魔術師同士の戦いに、法は干渉できないのじゃ。じゃから、魔術学院の法が判断を下すことになる。そして、妾とアリスは事件の当事者であり、最高位魔術師じゃ。後は分かるな?」


「ねじ伏せるってことですか?」


「せいかーい!言ったでしょ、アリスが何とかするって!」


「いや言いましたけど」


「それに、今回は事態が事態じゃ。暗殺を防ぐためという理由も、それを証明するのに十分な証拠もある。それに、アリス(最高位魔術師)が捕まっていたとなれば、わざわざ妾達の権力を使うまでもなく、普通に正当性が証明されて終わりじゃろうな」


「そう、ですか」


 何だか、不思議な気分である。


 いくら敵とはいえ、人を殺してしまった罪悪感と、それを許された解放感。


 俺は本当にこのままで良いのだろうかと、少し思い悩む時間が欲しいというものだ。


「騎士サマ!はい、あ~ん!」


「むっ、ズルいぞアリス!妾の弟子なのに!」


 俺の中でモヤモヤとした何かになっている、混ざり合った感情は、しかしアリスちゃんの手で口に運ばれたクッキーの砂糖に溶けて、咀嚼され、腹の内に落ちてしまうのであった。

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