第四十六話 闇の魔術師
訪れた夜。
俺は二人の魔術師を尾行すべく、コレディッカ先生がら受け取った魔術師フォーレンと魔術師マキアコートの顔写真を手に、そして《《とある人物》》に連絡をした後、研究室棟の近くで待ち伏せをしていた。
最初に見つけたのは、魔術師フォーレン。
特に何か手荷物を持つでもなく、そのまま研究室棟から出てきたところを目視で確認した。
俺はコソコソと後を追い、そのまま自宅であろう家の前まで尾行したが、特に怪しい動きは無く、大きな音を立てるでもなかった。
それから数時間後、再び研究棟の近くへ戻ったタイミングで、魔術師マキアコートは姿を現した。
段ボールの中に何かを詰めて、研究室へ持っていこうとしているようだ。
俺は静かに後を追う。
玄関口を抜け、階段を上る魔術師マキアコート。
音と影でバレてしまわないように、自分の身体を置く場所に気をつけながら、コッソリと後をつけていった。
そして、マキアコート研究室の前。
俺は背後から、強い気配を感じた。
「うおっ!?」
「そこです」
後頭部に衝撃を受ける。
「ぐはっ……」
倒れ込む俺を、魔術師マキアコートは見下しながら話を始めた。
「今のは【静かなる殴打】と言いましてね。私が得意とする闇の魔術です。少し外れましたが……まあ、当たり方としては及第点でしょう」
「甘いぜ、マキアコート先生」
「んー?どこが甘いのですか?貴方はもう、立てなくなってしまっているというのに……?」
「助けてー!《《クルピアちゃーん》》!!!」
俺の声を封じておけば、こんな目には遭わなかっただろうに。
俺があたふたしながら連絡をしたとは、何かあった時にクルピアちゃんを呼べるよう、研究室棟付近に待機していてもらうためだったのだ。
「許すまじ、マキアコートとやら!」
「なっ……!貴様は……クルピア・イロ……!」
「【森地獄】!」
「はぐぁ」
箒に乗って窓を割り、入ってきたクルピアちゃんは、壁や床から生やした木の根っこで魔術師マキアコートの急所を外して串刺しにした。
「答えろ。其方はここで何を企んでいた!?」
「い、言いませんようぁぁぁぁぁぁ」
……拷問の始まりである。
「もう一度聞く。其方は何をしようとしておった?答えによっては、其方の養分を全て吸い尽くすぞ」
「な、何回聞かれても、言いませんよ……!何も、知らなぐはぁぁぁぁぁぁ」
「けっ。此奴は使えんか」
クルピアちゃんは根っこを外して、魔術師マキアコートを放り出す。
「はぁ、はぁ……詰めが甘いんですよぉ、クル……!」
「【強化】」
魔術師マキアコートが杖を構えたところで、クルピアちゃんは距離を取るどころか急接近し、杖で頭を一叩き。
「ぐえっ」
後頭部に強い衝撃を受けた魔術師マキアコートは、そのままノビてしまった。
「やれやれ。弱いクセに生意気じゃ」
「クルピアちゃんが強すぎるだけだと思いますけど」
「それは言えておる」
「……で、どうするんですか?コレ」
「拘束室にブチ込んでおくで良かろう。それよりも。此奴の部屋を調べ尽くしてやろうではないか。段ボールの中身も、のう」
「そうですね」
こうして、俺とクルピアちゃんは、魔術師マキアコートの研究室と段ボールの中身を全て調べた。
段ボールの中からは鬼の仮面が大量に見つかり、鍵をこじ開けて調べた研究室の中からは、大量のテレパシストーンが発見された。
「……これはクロじゃな」
「ですね」
俺とクルピアちゃんは、すぐさまこの結果をアリスちゃんに伝え、アリスちゃんの研究室で作戦会議を行うこととなった。
「魔術師マキアコートちゃん……高位魔術師の一人ね。これで事態が収束すれば良いんだけれど……」
「そうはいかんじゃろうな」
「何でそう思うんですか?」
「仮に魔術師マキアコートが親玉だったとしても、最高位魔術師を殺そうとしている連中が、その程度で黙っているとは思えん。それに」
「それに?」
「あんなモンを研究室に持ち込んでいる者が、親玉な訳無かろう」
「確かに、最高位魔術師を殺そうとしている人が、コソコソ動かないのはおかしいわね。コレディッカちゃんに騒音がバレていたって……親玉にしては、動きが露骨すぎるわ」
「あー……言われてみればそうですね」
最高位魔術師を殺すとなれば、それは立派な魔術テロである。
場合によっては魔術界を大きく揺るがしかねない事態を招こうとしているというのに、ここまで露骨だと余計に主犯格としては怪し過ぎるというものだ。
「それで、これからどうするつもりじゃ」
「ねぇ、クルぴー、プラティエちゃん。ちょっと、お願いがあるんだけれど」
「何じゃ?」
アリスちゃんは、魔術師クイナ暗殺を企てている主犯格を呼び出す作戦を話す。
俺とクルピアちゃんは、その作戦に賛成ことはできなかったが、アリスちゃんから頼まれて、渋々乗ることにした。
この作戦には、最高位魔術師二人。
クイナ・トドメキに加え、アリスちゃんの命もかかっている。
俺は魔術界を守るために……と言いたいところだが、そんなものには興味が無く。
ただ一人の少女、自ら進んで囮になろうというアリスちゃんをを守るために、気合を入れ直すのであった。




