第四十一話 不思議の魔術師アリス 後編
「それでは用意!始めっ!」
クルピアちゃんの声に合わせて、俺とアリスちゃんはすぐに魔術を発動した。
「【強化】!」
「【光】!」
俺は眩い光をアリスちゃんに向けて放ち、目眩しを狙う。
「効かないんだからっ!それっ!」
しかし、アリスちゃんは「強化」で瞳にサングラス代わりの幕を張ることで瞬時に対策。
そのまま、強化した肉体で俺の腹部に蹴りを入れた。
「ぐほぉっ!?」
当然のように手動魔術を、慣れ切った詠唱で発動する、卓越した技量。
そして隙を生まずに繰り出す体術。
流石に最高位魔術師である。
「次は自動魔術でいくわよっ!【マリオネットコンビネーション】!」
続けて発動したるは人形魔術。
「うおおおおおおおっ!?」
手足が魔力で吊られた二体の人形が、こちらに止めどないラッシュを繰り出してきた。
「それっ!」
アリスちゃんの手で完璧にコントロールされたマリオネットから繰り出される、一瞬たりとも乱れぬコンビネーション。
俺はあっという間に掌底で吹き飛ばされ、壁に激突してしまった。
「うあっ!」
「うふふっ!まだまだ序の口よ!頑張って、プラティエちゃん!」
「うぐ……!【音】!」
俺は体勢を立て直し、「音」を唱え、出来る限りの最も大きな音量で鐘の音、その発生源をアリスちゃんの耳元へ飛ばす。
「【強化】」
しかし、アリスちゃんは「強化」で鼓膜を一時的に硬質化することで耳を防御し、これも全く通じずに終わってしまった。
「なあっ……」
「お返しよっ!【魔力光線】!」
「いでっ!」
「【硬質化】……それっ!」
「へぶぅ!」
そして、俺が驚いている隙に「魔力光線」を叩き込まれ、怯んでいるところで、硬質化した拳から繰り出されるストレートパンチを右頬に受けてしまった。
「どうかしら?降参する気になった?」
「いいえ!……でも、降参したくなるくらい強え……!強い女の子は好きですよ、流石クルピアちゃんと同じ最高位魔術師!」
「もう、褒めても何も出ないわよっ!でも嬉しいから……次は珍しい魔術の使い方を見せてあげるわ!」
「望むところです!」
「炎よ、不死鳥の姿を以て敵を葬り去れ!【火の鳥】!」
「俺と同じ……火の鳥……!」
アリスちゃんは現状俺の必殺技のようになっている「火の鳥」を発動する。
「これを……それっ!行ってちょうだい!【不思議の爆弾】!」
それに現代魔杖を用いて爆発する効果を付与。
俺よりも高いであろう干渉力から繰り出される巨大な「火の鳥」が、爆発しながらこちらへ向かってきた。
武器や身体に何かを付与するのは見たことがある。
しかし、魔術の産物そのものに何かを付与する様を見るのは初めてだ。
「撃ち落とす……!炎よ、不死鳥の姿を以て敵を葬り去れ!【火の鳥】!」」
俺も最大出力の「火の鳥」で相殺しようとするが、全く歯が立たず、かき消されてしまう。
「せんきゅ、プラティエちゃん」
「【水】!クソッ!うぁぁぁぁぁぁ!」
最後の足掻きで放った「水」もまるで意味を持たず、俺はそのまま突撃してきた「爆発する火の鳥」に吹き飛ばされ、瞬く間に、立ち上がることさえできなくなってしまった。
「勝負ありじゃ!勝者、アリス!見事じゃった」
クルピアちゃんの一声により、勝負は終わりを告げる。
「うへぇ……半端ねぇや」
「大丈夫か、プラティエ」
駆け寄ってきたクルピアちゃんは、魔法薬の瓶を開けて中身を飲ませてくれた。
みるみるうちに傷が癒えていく。
後で聞いた話だが、一部の魔術師だけに支給される、シャルラ先生の特製ドリンクらしい。
「あらら、ちょっとやりすぎちゃったかしら?」
「いや、妥当じゃろ」
「情けとか持ち合わせて無い感じですか?」
「バカモン。いくらアリスでも、舐めてかかれる程、軟弱に育てた覚えは無いわ」
「ああ、そういう意味ですか安心した」
「プラティエちゃん、一年生なのにここまで耐えるとは思わなかったわ!卒業する頃には、アリスと同じくらい強くなってるかも!」
「うむうむ、自慢の弟子じゃからな」
そう言って、クルピアちゃんは背伸びをして俺の頭を撫でた。
温かいクルピアちゃんの手の感触が、疲れた五臓六腑に染み渡る。
「じゃあ……改めて、捜査の協力、よろしくね!クルぴー、プラティエちゃん!」
「はーい、任されましたっと。何たって少女のお願いですし」
「うむ。妾の方でも動いてみよう。何かあったら報告する」
「ありがとう!じゃあ……もうちょっと喋ったら解散にしようかしら?」
「そうじゃな。プラティエもそれで良かろう」
「はい!クルピアちゃん、もっと撫でてくれませんか」
「仕方ないのう……」
あ~クルピアちゃんの手で撫でられるの最高~。
「ふふっ!ラブラブなのね、二人とも!」
「はい!少なくとも俺は大好きです!」
「そ、そうじゃな。此奴はべったりでのう」
「いやぁ~あのクルピアちゃんに彼氏が……」
「カレシッ!?」
「いやあ~照れるなぁ~」
「そ、そう見えるのか……?」
「そうにしか見えないわよ?」
「わ、妾はそんなハレンチな女に見えていた……と……?」
「彼氏がいることくらい、ハレンチでも何でもないわよ?」
「浮気がどうとか言ってたじゃないですかー、とぼけないでくださいよー」
「いやあ、アレは気の迷いというか何というかじゃな」
「裸で風呂にブチ込んだのは誰だったかなあ」
「こらっ!やめろっ、魔が差しただけじゃ、アレは寂しがり屋なババアの気まぐれであって」
「へぇ~。やるじゃないクルぴー」
「だーっ!この話はおしまいじゃあー!早く次!次の話題じゃー!」
「今夜は逃さないわよ、クルぴー?プラティエちゃんも協力してくれるわよねっ?」
「アイアイ、マム」
「な、情けを、情けをくれぇぇ!」
この晩、クルピアちゃんがアリスちゃんから解放されることは無かったという。
そして翌日、ノンアルコール飲料しか飲んでいないにもかかわらず、二日酔いのような表情でイロハちゃんが登校したことは言うまでも無いだろう。
ちなみにこの晩、俺はアリスちゃんの連絡先をゲットしていたのであった。




