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「杖持たず」の旧式魔術師 〜機械音痴は手動の魔術で時代を追い抜く〜  作者: 最上 虎々
第三章 王都の伝説と最高位魔術師

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第三十二話 作ろう!魔物カレー

 翌朝。


「おはようございまぁ~す!今日はオリエンテーションとして、魔物カレー作りをしたいと思いまぁ~す!」


 早速行われたオリエンテーションでシャルラ先生から出された課題は、「魔物カレーの材料を集めてくること」であった。


 付近の森には、弱い魔物がたくさんいるらしい。


 そして、その中から食材になりそうな魔物を倒してきて、皆でカレーを作ろうと、そういう課題なのだそうだ。


 やる事は簡単。

 事前に決められた四人組でナチュレステーションを囲う魔物除けの防壁から出て魔物や植物を狩り、具材盛り盛りのカレーを目指すだけである。


 食べられる食材か否かは、それらを持ち帰ってきた時に、魔術教授達が専用のアプリと知識に基づいて判断してくれるそうだ。


 俺はイロハ(クルピア)ちゃん、ベルリナちゃん、バルディオの三人と合流し、早速狩りへ向かう。


 俺はクルピアちゃんから贈ってもらった腕輪を右手首に嵌め直し、魔箒を背中にぶら下げておいたホルダーに入れて準備を整えた。


 イロハ(クルピア)ちゃんとベルリナちゃんは自分の杖を持っていたが、バルディオが持っていく武器は杖ではなく、例のショットガンであった。


「バルディオ、杖は?」


「今回はショットガンで行きます。慣らしもしておきたいのでね」


「……本気なんだ」


「まあ、そうですね」


 あえてぼかして言ったが、「慣らし」とは、間違いなくナルカ討伐作戦の慣らし、という意味だろう。


 俺はナルカに殺されかけた。

 あの恐怖が、まだ抜けていない。


 故に心配であり、勇気あるクラスメイトを信じるだとか応援するだとか、そのような次元のことを考えられる状態に無いのである。


「何だー?おー!ショットガンかー!懐かしいなー!アタシも北部でこっそり狩りの時に使ったっけなー!」


 ここで、俺とバルディオの間から、ベルリナちゃんがひょっこりと顔を覗かせた。


「ベルリナさん、ショットガンを使ったことがおありで?」


「ああ!魔術だけじゃあ、アタシの狩りには物足りなくてなー!」


「お願いです。オリエンテーションの最中だけで構わないので、僕がショットガンをしっかり使えているか、見ていてくれませんか」


「お?いいぜ!アタシで良けりゃあな!」


「ありがとう、ベルリナさん。感謝します」


 またもや、バルディオが頭を下げた。


 彼は本当に、ハーレムの女性を大切にしているのだろう。


 最初は女性をモノとしか考えていないのかと思ってしまったが、俺の目が節穴だっただけらしい。


「いいってことよ!さ、早く行こうぜ!」


「そうじゃな。具材が狩り尽くされる前に、急ぐとしようぞ」


 先導するベルリナちゃんを追いかけて、俺達はゲートを抜けて裏山へ飛び出していく。


「お!早速マンドラゴラがいるぜー!」


 ベルリナちゃんが指差す先には、明らかに目立つ、活き活きとした葉っぱが地面から飛び出している。


「任せて!【(ランラン)】!」


 俺は四人の耳元と、念のためマンドラゴラが生えている付近へ、事前に調べておいたマンドラゴラの叫び声を打ち消す逆位相の音を張った。


 個体によって叫び声に多少の差はあれど、これで声による耳へのダメージは防げるだろう。


「じゃあ、引っこ抜くぜ!いよっ!」


 作戦は大成功である。


 俺達は何の声も聞くこと無く、二体のマンドラゴラを引き抜くことに成功した。


「うわっ、ジタバタするなー!このっ!【氷の礫(アイスシャード)】!」


 カゴに入れようとすると短い手足を動かしてジタバタと動き回るマンドラゴラ。


 それの額に、ベルリナちゃんは一切の躊躇なく氷の(つぶて)を突き刺して締める。


「迷いが無いのう」


「叫び直しでもされたら危ねーからな!それに、獲物が逃げる前に締めるのは当たり前だろ?」


「そうじゃな、其方は良い狩人じゃ」


「えへへ、褒められると照れちまうじゃねぇかよー!」


 続いて現れたるは、人型のトカゲがアリような口を持ったような姿の魔物、「リザードアント」。


 こちらへ気付くなり、姿勢を低くして地を這うように急速接近するが、そこはショットガンの出番。


「【祓魔弾・武装強化付与エンチャント・エクソリス】!はっ!」


 銀の弾丸を込めたショットガンに、一つ目のスピネラに込められた強化付与の魔術を使って放つ一撃。


 リザードアントの素早い動きをものともせず、顔面と左腕を吹き飛ばしてしまった。


「おおー!バッチリだぜ!初心者なのにやるもんだなー!」


「そうですか?フン、まあ、僕にかかればこんなものですよ」


「でも、あんま調子乗るなよー?武器を使った戦いは、慣れてきた頃が一番怖いんだからなー?」


「そうですか。助言ありがとうございます。気をつけますよ」


「おう!あと、誰か倒したい奴がいて、それを使ってるなら、の話だけどよー」


「何ですか?」


「武器のことばっか考えてると、懐がガラ空きになるからなー!撃つだけじゃなくて、いつでも身体を使って反撃できるようにしとけよー!」


「なるほど、勉強になります。それにしてもベルリナさんは狩りに詳しいんですね。ますます、僕のハーレムに入れたくなりました」


「それは間に合ってるから大丈夫だぜ!」


「そうですか、残念ですよ」


 こうして俺達は、二時間ほど森の中を散策して、小さい人型の豚である「グラムオーク」と、ただの肉厚なトマトである「ゴリラトマト」、そして魔物避けの効能を持つ「メチヤナス」というナスを手に入れてから、ナチュレステーションへ戻った。


 出来上がったカレーは、グラムオークとマンドラゴラの出汁から旨みが良く出た、夏野菜風カレー。


 リザードアントに関しては少々クセが強く、俺は好きだったが、イロハ(クルピア)ちゃんは少し苦手そうにしていた。


 途中で「ちょっとダメじゃ、食ってくれ」と、イロハ(クルピア)ちゃんはリザードアントの肉だけ全部俺にくれた。


「うーん!美味かったなー!」


「リザードアント以外は美味かったのう」


「そんなに苦手?」


「ありゃダメじゃ」


 後から聞いた話によると、数十年前に一度食べたきり食べていなかったそうで、しばらく時間が経ったら好みも変わっているかと思って食べてみたそうだが、やはり苦手なものは苦手だったそうだ。


 それから、しばらく自由時間を過ごしいると、あっという間に夜になった。


 夕食を食べ終えた俺達は、体育館で少しサッカーのようなスポーツをした後、入浴を済ませてそれぞれの自室へ戻る。


 もう少しで消灯といったところだろうか、疲れた身体を癒すため、ベッドへ寝転がった、その時。


「プラティエ、ナチュレステーション裏まで来てくれんかの」


 イロハ(クルピア)ちゃんから、一通の通信(メール)が入った。

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